第234話邪念

屋外へと続く扉を開き、俺は室内風呂を後にした。


暖かい場所からいきなり外に出たため、夜風のせいで体が冷える。


目の前には岩づくりの露天風呂があるため、俺はそれに飛び込んだ。


「こっちもいい湯だ」


幸運にも曇っていないようで、満点の星が見える。


いい婚約者を持ったおかげで、身の丈に合わない贅沢ができるな。


「この壁の向こうが女湯ね」


幸か不幸か、男湯と女湯は隣り合っていた。


薄っぺらい木の板により、2つの空間が隔てられている。


眺めているうちに、俺の頭にある疑念が浮かぶ。


「もしかしたら、どこかに穴が開いているんじゃないの?」


俺が性欲の塊であるからだろうか?


寒空で頭が冷やされているのにもかかわらず、俺はそんなことを考えてしまう。


「もしそうなら……」


のぞきができてしまうのではないのか?


俺の脳に邪念が浮かんだ。


「これが露天風呂ってやつか。イギリスにはないね」


「オーストリアにもないな」


俺が邪念に悩んでいる時、壁の向こうから、声が聞こえてくる。


「この声は……」


どうやら、我が同行者である美少女が、向こう側にいるらしい。


脳内に、彼女らの裸姿が浮かぶ。


もしかしたら、本当に見ることができるのかもしれない。


「だがそんなことをしたら嫌われる」


星空の下、俺は悩み続けた。


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