第222話弱者

『やっぱり、ダメだったんですね』


あのお披露目会であったことを先輩に報告し、言われた最初の言葉がこれであった。


『仕方がないことですよ。あの子には弱者に対する配慮ってものがないですから』


俺を思って慰めてくれるロリ先輩。


それとは裏腹に、困っている2人に何もできない自分が、悔しくてたまらなかった。


『生まれたときからエリート教育を受け、名家の跡取り候補として周りの大人から持ち上げられる。これがあの子の生きてきた環境です』


「でも、先輩も名家に生まれなのに、俺のような庶民と付き合ってくれますよね?」


いくら魔法の資質が高いとはいえ、高貴でもなんでもない家に生まれた俺である。


この陰陽師に特権意識があるのなら、仲良くしてくれないではないだろうか?


『知っての通り、私は一族でも差別されていた存在ですから』


先輩は病弱な母から生まれた、出来損ないの魔女扱いをされていたんだっけ。


「弱者の立場も、理解できるってことですか?」


『そうです。一樹君はなんだか弟のように思えるので、それも付き合ってる理由なんですけど』


年上とは言え、そんな風に思われていたのか。


『あの子のほうが、名家の跡取りとしては、正しいのあり方ではないですか?』


先輩が自虐的に言う。


「俺はそうは思っていませんよ。むしろ、弱者を思いやれる先輩こそ、立派な後継者になれるのだと信じています」


『そう言ってくれるのは嬉しいんですけどね』


照れてるみたいで、このロリ可愛い。


「脱線したけど、話を戻しましょう」


いくらののはに訴えたところで、配慮などしてくれないということだ。


『でしたら、何らかの取引をするとかですかね?』


「俺に払えるものなんてないけど」


俺はカネももってないし、そもそも欲しがっているような相手ではない。


『そこらへんは一樹君がよく考えてください。私もできるだけ協力しますよ。何せ、”婚約者”ですからね」

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