第195話勝負
「ちょっと待ちなさい」
このまま終わらせようとしたサラさんに耐えられず、先輩が文句を叫んだ。
「なんや? そんなに大きな声を出して」
「結局、あなたと父親の話し合いは、どういう結末になったんですか?」
「心配することはないと言ったのにな。それなら説明してやるわ」
サラさんの説明によれば、俺たちの予想通り父はただのメッセンジャーでしかなった。
それを逆手に取り、彼女は母へのメッセージを運ばせたらしい。
「次のイベントでウチの本が完売しなければ帰ってやる。もしできたら、縁談はなかったことにしてや、ってな。はははは」
金髪の錬金術師は笑い出したが、事態はさらに悪化しているんじゃないのか?
「あのー、サラさんはその業界で有名なんですか?」
純粋な疑問をぶつけてみる。
「そんなわけないやろ? 今まで日本語さえ身に着けてなかったんやで」
「やっぱりか」
こういうのって、知名度がかなり影響するだろうし。
「サラ、アラブの御曹司に嫁いでも、私たちは友達ですよ」
「よしか、勝手にかけで負けることにするな」
友人を送り出す決意をした先輩に、本人が抗議した。
「まだ負けたわけじゃないよ。この縁談を壊せれば、遠回しだけどアイツらの力をそげるわけだしさ」
「言われてみたらそうですね。ホーエンハイム一族は、アイツらの手下みたいなものですから」
御三家の令嬢が交互に言った。
最後の一角は、それだけ嫌われているんだな。
「では、勝てるかどうかは置いといて、勝利を目指すということで」
こうして、横暴な当主との闘いが始まった。
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