第161話暗雲

「どうして私に相談してくれなかったの?」


お母さんは怒りを抑えてそういいました。


今思えば、お母さんは私に裏切られた気持ちだったのでしょう。


「私だってもう子供じゃないんです。自分で判断できます」


目つきが悪いとよく言われる私ですが、おそらくお母さんをにらみつけていたのだと思います。


お母さんは、悲しそうな顔で私を見つめていました。


「それなら私はあなたの決断を尊重するわ。でも、絶対に無事で帰って来てね」


それが日本を出る前、お母さんに言われた最後の言葉です。



初めての海外派遣、マナ適性が高い自衛官による特殊部隊に、私も専用機を着て加わります。


当然と言えるのかもしれませんが、自衛隊員の中にも加茂家の名は広まっていました。


私の扱われかたは特殊で、後方支援に近い役割を任されます。


兵器の実験という意味もあったのでしょうし、ネームバリューのせいで持て余しているという側面もあったと思います。


開発されたばかりのミサイルを、大量に持たせてくれたのが嬉しい記憶でした。


向かったのは確か、アフリカの小国だったと思います。


そこで現地の部隊と顔合わせをしました。


彼女たちが使っているのは、大国で使われていたと思う世代落ちのAAです。


中には、AAどころかただの防護服を着てる女性もいましたね。


そんな中、日本から最新式のAAを持って現れる私たちは、羨望と侮蔑が混ざったまなざしで見られます。


あちらにも御三家の一角が来てるという情報が行っているためか、私への視線はさらに強かったですね。


日本以外では陰陽師などたいして知られていないこともあり、私の評価が下がっていました。


部隊のエースらしい女性に


「随分と高性能そうなものを着ているな。さぞ頼りになる身分のお方なのだろう」


とさえ言わたこともあります。


あまり歓迎されているようには見えませんでした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る