第74話相部屋

「もう、夜遅いから、この話は明日にしない?」


俺、全然休めていないのだけど。


「2人だって疲れているでしょ? 俺の使っていた部屋で休んでくれよ」


道の駅まで歩いて、変な男の相手までしたのだから。


「うん。だからこそ、すぐにでも休みたいんだよ。もちろん、ここでね」


「お前とこいつを2人にはさせられないからな」


あれ?


2人とも俺の妹ぐらい、話が通用しなくない?


ひょっとして、俺は変な女に好かれるのか?


見目麗しいのはうれしいが、中身もしっかりしてるといいな。


そんな時、乱入者が。


「探したぞ。ここにいたのか?」


「一樹君のお部屋に行ったけど、誰もいなくて驚いちゃったわ」


「教官と佐伯さん」


「お前たちは、ここで何をやっているのだ?」


「実はですね、お姉さまをお部屋に案内していたのです。ほかに空いてる場所がなかったのですから、心苦しいのですがこんな場所になってしまいましたわ」


桜子が何とかごまかす。


あの笑顔は、絶対に取り繕っている。


俺の妹は、複芸もできるのだな。


「しかし、私とコイツの部屋は、普通の小部屋であったぞ」


「ですから、3人に小部屋を使ってもらったせいで、ほかのお部屋が足りなくなってしまったのです。しかたなくここを」


「じゃあ、私とこの人が相部屋をして、オリヴィアちゃんとサーシャちゃんも同じ部屋にすればいいのではないかしら?」


「そうしてしまうと、窮屈になってしまうかと」


「問題ない。私の私物は少ないし、変人の相手もなれてるからな」


「失礼ね。でも、2人もいいでしょう?」


「うん。ボクと一樹が相部屋だね」


「ふざけているなら、ここからたたき出すぞ」


教官がオリヴィアを睨む。


「はい。サーシャと相部屋します」


恐れたオリヴィアがそういう。


「では、もうここには用はないな? 私が荷物をまとめて出ていくので、

お前らは空いた部屋を使え」


「はい、わかりました」


サーシャが答える。


「なら、部屋に戻るぞ。お前たちは仲良く生活しろ。それで文句ないな、桜子?」


「は、はい、お兄様がそういうのでしたら」


マイシスターはひきつった笑みを浮かべる


教官が現れたせいで、この場は桜子の負けになってしまった。


俺が2人に加勢したので、完全に不利。


俺たちは来たとき通った廊下を逆に歩いた。


うしろから小声で


「あのビッチども。お兄様に少しやさしくしてもらったぐらいで、調子に乗るなよ」


と聞こえてきた気がしたが、きっと幻聴かなにかであろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る