第61話くしゃみ

「はくしょん」


「どうした? 疲れたのか?」


「ごめんね。何故か、いきなりくしゃみが出た」


「そうか。体には気をつけろよ」


「ありがとう。まだまだ大丈夫だって」


そう言いながら、オリヴィアは再度ライフルを構えた。


「本当に危険になったらやめるべきだ。お前はイギリスの宝なんだからな」


実験動物にすぎない私と違って。


そうサーシャこと、私アナスタシアは心の中で付け加えた。


「分かっているって」


「それならいいがな」


彼女は私に渡されたライフル型WANDで、自分の光魔法を発動させている。


当然、触媒も私用のもの。


最初に試射しようと引き金を引いた時だ。


「少し、ざらっぽい感じの触媒だね」


ヤツはそう言って魔法を発動させた。


励起用物体と収束用の結晶体がないため、魔女は自分で交じりっけのない光を一点に集めないといけない。


撃鉄が落ちてから数コンマ。


発射されたレーザーが、ビンに風穴をあけた。


「ちょっと使いにくいけど、悪くない性能だと思うよ」


笑顔でオリヴィアは言う。


いつものことだが、魔女らしくないな、こいつは。


門外漢である私にはよくわからないが、イギリスの魔女が使っている触媒は、かなり特赦なものであるらしい。


何でも、森の中の木などを使うとか。


それに対し、私が使っているものは、人工的に合成した化合物。


慣れない物を使っているはずなのに、金髪の少女は涼しそうな顔で射撃をしている。


「やはり、疲労してきているのではないのか?」


くしゃみも出ていたし。


「いや、全然だよ。単に、ボクの旦那がさびしがって、ボクのウワサをしているだけだよ」


「ウワサ?」


どういう意味だ?


「日本では、他人のウワサをすると、その人がくしゃみをするんだって」


「なるほど、だからあいつがお前を」


でも


「迷信だろ?」

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