第54話驚愕

「報奨金なし?」


 核のクリーチャ―を倒し、基地になっていた場所へ向かった俺たち。


 そこで待ち受けていたの、残酷な報告であった。


「何かの間違えではないのでしょうか?」


 教官に問い詰める。


 あってはならない間違いだぞ。


「間違いではない。お前たちは、脱走兵になっていたんだからな」


 そうだった。


 AAを奪って、無理やり出たんだ。


「せっかく親孝行できると思ったのに」


 借金が全然減らないよ。


「ただ働きか」

 

脱力感が半端ない。


「親孝行はこれからぞんぶんにやれ。功績をたたえ、お前たちの部隊への復帰を認める。感謝しろ」


 戻れはするのか。


 ありがたくはあるがな。


「今回限りの特例だ。次に似たようなことをやったら、お前たち全員を部隊から追放するぞ」


「はい、わかりました」


 マジで怖いな。


「でも、私は感謝しているわ」


「佐伯さん」


「おかげでいいデーターが集まったから」


「またそれですか」


 いつものことだけど。


「それより私たちはこの基地から離れる。お前たちもついてこい」


 俺たちは無事に異世界化した空間を開放した。


 そのせいで、この部隊がここにとどまる必要がなくなってのだ。


 最低限の監視要員だけ残し、ここから去るらしい。


「二人とも、復帰おめでとう」


「オリヴィア」


 こいつは何のペナルティも受けていない。


 それどころか、手当までもらえているとか。


 専用機を持ち出し、ガトリングを放っていたのに。


「おかしくないか?」と主張した俺に、魔女はこう言った。


「ボクはね、AAを持ち出して脱走した君たち2人を監視に行っただけさ。教官にも許可をとってある」


「俺たちを手伝ったのにか?」


「いやだな。あれは君たちが襲われていたから、単に助けただけだよ」


「そうだったのか。わざわざ、ありがとな」


「うん、君たち2人を助けたら、ボクが敵から群がられちゃったんだ」


「それはすまなかった」


「いいって。包囲を抜け出すのに苦労したけど」


「新兵器まで使ってな」


 ガトリングレーザーをガンガン撃っていた。


「たまたま持ってきていただけだよ」

 

やっぱり笑顔のオリヴィア。


「そのたまたまに、俺たちは救われたんだな」


「感謝してね」


「そうさせてもらう」


 よく考えれば、無謀なことをしたものだ。


 ここは反省しないとな。


オリヴィアが近づいてくる。


「なんだよ?」

 

俺の耳元に顔を近づけた。


「1つ目の約束を守ってくれてありがと。2つ目も期待しているよ♡」


 それを言ったオリヴィアの顔


 とってもかわいくて、ホレてしまいそうだった。


 ここは、いい場所だよ。


「さっきから楽しそうだな」


 不機嫌そうな声。


「お前、いたのか?」


 もちろんサーシャだ。


 存在を忘れていたよ。


「いたぞ。悪いのか」


 俺を睨む。


「ボクたちは今度のデートのことを話していたんだ。一樹、どこに行こう?」

 

そういって俺の肩に手を回す。


「やめろって」


 くっつくな。


「そうか。楽しめるといいな」


 氷のような冷たい笑み。

 

俺には気温が下がったように感じた。


 マナが漏れているのか?


「ありがとね。楽しんでくるよ」


 よくわからないが、俺の近くでバトルが起きているらしい。


 恐ろしいことだ。


「私は去るぞ」


 サーシャは踵を返す。


「おい、待てって」


 俺はその背中を追いかけた。


「あっちなんかより、ボクをとってくれればいいのに」


 そういうオリヴィアに背を向ける。


「すぐに戻ってくるさ」


 部屋の出入り口で言う。


「できれば、ボクの方を1番してね」

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