第55話彼女

「私なんかにかまっていていいのか?」


 こちらを振り返えってくれない。


 俺に背中を向けている。


「俺、お前との約束を守ったよ」


 あの時のサーシャは、俺を信じてくれた。


 自分の身を危険にさらしてまでな。


 正直、うれしいと思った。


「当たり前だ。それをしてくれなかったら、私も無事では済まなかったからな」


 ツンツンした感じで言う。


 もうじきデレるのか?


「こんな俺を信じてくれてありがとう」


 頭を下げた。


 個人的理由で動いている俺だ。


 信じるに値しないだろう。


「信じたわけではない。一番成功する確率が高い作戦だっただけだ」


 やっぱりツンツン。


 でも、かわいいな。


「町が守れてよかったな」


 俺は報奨金なしのただ働き。


 だが、この地に住む人を守れて、よかったと思えた。


「それが私の仕事だからな」


「俺たちは子供を守ったんだよ」


「そうだな」


 デートしたあの町。


 そこの平和を守れたのだから。


 胸を張っていこう。


「また、デートしようか?」


「何を言うのだ?」


 彼女は顔を赤らめる。


「オリヴィアだけじゃなく、またお前ともしたくなったんだよ」


 あの町以外でもしてみたいね。


「前回は教官の命令だったから、仕方なくやっただけだ」


 お約束のツンツン。


「なら、オリヴィアだけとデートしているよ」


「いや、やらないとは言っていないぞ」


「前は仕方なくだったのだろ?」


「おまえがどうしてもというなら、デートをしてやってもいいぞ」


 ツンツンだが、やっとデレたな。


 思った以上にかわいいぞ。


「デートしてくれるのか?」


「お前がしたいというから仕方なくだ」


 仕方なくねえ。


「前もそういっていたような」


「次も仕方なくやるだけだ」


「2回連続でね」


「そうだ。両方しかたなく」 


 それが多いな。


「今度はどこに行くか?」


 遊園地?


 それとも、動物園?


「候補があって悩むな」


「今度はどこに連れて行ってくれるのだ?」

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