第51話秘密兵器

「おい、あれは使えるのか?」


「いつでも問題ない」

 

俺が背中に装着している鉄棒。


 それはただの棒などではない。


「ならいい。それが頼りだ」


「できれば、倒すのはお前にしてもらいたいんだがな」


 俺は自信がない。


 それでも、この戦いで実戦データーはとれるだろう。


 借金返済のためには、俺がボスに向かっていった方がいいのだ。


「瀬川。私が隙を作る。その間に。お前が突っ込め」


「ああ、そうさせてもらう」


 俺は戦闘訓練など受けてはいない。


 実戦的な体術なんて、できるわけがなかった。


 しかし、この秘密兵器は、相手に突き刺すだけでいい。


 あとはシステムが作動し、そのまま倒してくれる。


 絶対に外せない兵器だ。


「間違っても、戦闘中に壊したりするなよ」


「気を付けるさ」


 そうなったら、俺たちは終わりだろうな。


「見えたぞ」 


 地平線の彼方にあるでっかい影。


 太くて長いその姿は、巨大な蛇のようだ。


「あれが……」


「この空間の核であるクリーチャ―だ」


 やはりそうか。


「どうして今まで発見されなかったんだろう?」


 あんなに大きいのに。


「地中に埋まっていたんじゃないのか?」


「そうかな?」

 

でも、それならあり得る。


「どうして出てきたんだろう?」


 ずっと隠れてればいいのに。


「そうだな……」

 

彼女は首をひねって考え出す。


「この空間を広げるためじゃないか?」


 今起きている、この空間の膨張。


「それのためか」


 今まで隠れていたのに、熱心なことだ。


 ずっと隠れていてくれてよかった。


「でも、そのせいで発見できたんだな」


「そうなるな」


「あれさえ倒せば……」


 巨大ではあるが、無敵ではないはず。


「ああ、ここで起きている異世界浸食は止まるさ」


 そうなれば、私のような孤児は生まれない。

 

言いはしなったが、鈍い俺にもそう伝わってきた。


「報奨金のためだ。俺が頂くぞ」


 あえて、こういうキャラをする。


 張りつめたサーシャの緊張が、緩めばいいが。


「そうしろ。親孝行してやれ」


 こういってくれるのはうれしい。


 俺にとって一番大事な人物はおふくろだ。


 小さな背中で、俺を支えてくれていた。


 でも、俺にとってはお前も、おふくろぐらい大事になったんだよ。


「さっき別の女の子と違う約束をしちゃったけど、生きて帰ってお前との約束も絶対に果たすよ」


「バカ。恥ずかしいことを言うな」


いつもはクールな彼女が、顔を赤らめていう。


 やっぱりかわいいな。


 そんなやり取りをしていたら、核クリーチャが迫っていた。

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