第38話デート③

「やはり、壊れているのだな」


 非難のまなざしで俺を見ている。


「そうかもな。でも、すごいだろ?」


 景品を見せびらかす。


「腕前ではないのに」


「ああ。機械のエラーだ」


 そういうことにしてこう。


「だから、俺よりお前の方がうまいんだよ」


「当たり前だ」


「これは俺が持つのに不相応」


「そうだな」


「なら、お前に渡すよ」


「何?」


「だって、俺よりお前の方がふさわしいだろ?」


「そうだろうな」


「だったら受け取ってくれよ」


「そこまで言うなら、してやらないこともない」


 サーシャが景品を手にする。


「お前が言うからしかたなくだ。この景品も私の手元にある方が嬉しいだろうしな」


 彼女は景品を抱きしめる。


「好きなのか?」


「違うぞ。こいつが私に抱きしめられたいと思っただけだ」


「わかったよ」


「それならいい」


「次はどうする? 少し休む?」


 ずっとはしゃいでいたのだから。


 疲れただろうな。


「そうだな。そこに座ろう」


 近くにあったベンチをサーシャは指差す。


「2人でか?」


 ちなみに、ほかのベンチはカップルで座っていたりする。


「バカ。そんなことは気にするな」


 結局、2人一緒で座ることになる。


 女子と密着しているのか。


 心臓が高鳴って、このまま死にそう。


 労災下りないから、俺の心臓は静かになって。


「楽しかったか?」


 今まで、こんな場所に縁はなかっただろう。


「ああ、狂った機械ではあったがな」


「俺も楽しかった。お前とデートできてよかったよ」

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