第39話告白


「デートの最後だ」

 

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。


 夕暮れを背に言う。


 サーシャに伝えないといけない俺の事情を。


「俺がテスターを受けたのは、カネのためだよ」


「カネのためだと? 下らん理由だな」


 不機嫌そうに言う。


 俺の渡した景品を握る力が増したようだ。


「いや違う。俺にはたくさんの借金があるんだ」


「借金?」


「俺の親父が何かの事業の失敗か何かをしてさ。それを俺とおふくろに押し付けたんだよ。当の本人はどこかに消えたけどさ」


「お前も苦労しているのだな」


「だから、俺はおふくろに楽をしてもらいたいんだ。女手一つで、俺を育ててくれた。俺を高校に通わせるため、何個も仕事を掛け持ちしていてさ。あんな小さな背中に、俺の人生背負っているんだ。感謝しても、感謝しきれない」


「それで、お前はこれを私に聞かせてどうする気だ?」


 その眼は俺を睨んでいた。


「どうもしないよ。ただ、お前に知ってもらいたかっただけだ」

 

隠していたくないからな。


「そうか。てっきり、テスターを続けさせろというのかと思った」


「いや、言わない。お前にその座を正式に奪われるなら、別の仕事で借金を返済するだけさ」


「教えてもらったお返しではないが、私もお前に事情を聴かせるぞ」


 長くなるがな。


 彼女はそう付け加えた。


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