第34話涙

「あの娘と仲良くなりたいですって?」


「いや、仲良くなんて。ただ、事情が知りたいだけですよ」


俺は佐伯さんに相談中。 


 サーシャは絶対に何かを背負っている。


 試合のあとを見てそう感じた。


 簡単に他人に教えることができない、つらい何かを。


「だから、あなた.が相談に乗るというの? 借金返済にいそしむあなたが」


「ええ、そうです。そんな俺が」


俺にだって、やらないといけないことがある。


「でも、あの娘をほっておけないんですよ」


 あの悲しそうな目。


 ハーレムとか関係なく、あの子のためになりたい。


 俺はそう思っている。


「では、デートしてみたらいいと思うわ」


「え?」


 デート?


「そう。次の休み、あの子と出かけてみればいい。時間こそかかるが、ここからでも近くの町に行けるのよ」


「いきなり言われても」


 俺はデートなんてしたことがないし。


「みんな最初はそんなものよ。あの子には私の方から何とかしておくから。楽しんできてね」


 そして、当日。


 俺は基地から近い町で、彼女を待っている。


「この格好、おかしくないか?」


 俺は渡された服を鏡で見ていた。


 佐伯さんは、気合を入れて服を選んだらしい。


 待つことしばらく


「もしかしてあれが」


 彼女らしい人影が見えた。


 もちろん、こちらに近づいてくる。


 格好は軍服ではない。


 私服のようだ


 白っぽいワンピース。


 髪をリボンで結んでいるのか?


 いつももとイメージが違うな。


だが、それがいい。

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