瀬川一樹の旅立ち

第2話 始まり

世界はどうして狂っているのだろう?


俺、瀬川一樹は、真剣に思う。


異界化なんて聞くが、そんなのは関係ない。


俺は日々を生きていくだけで精いっぱいだ。


父親が作ってしまった借金を返すために、日々バイトをしている。


その父は女を作り、どこかに消えてしまったらしい。


俺とおふくろに、借金を押し付けて。


以来、俺たち2人は貧乏生活。


ああ。


「どこかにいいバイトがないか?」


このままだと、高校生を続けられなくなりそう。


おふくろは何とかして、俺を学校に行かせようとしてくれている。


その苦労を、俺は肩代わりしたい。


「新薬の被験者。もらえる額は多いだろうが、体を壊すかもしれないからなあ」


そうなったら、バイトどころではなくなる。


「どこかにたくさんお金がもらえて、安全なバイトはないのだろうか?」


そう思って調べていたら、偶然発見してしまった。


「なになに? 簡単なテストに付き合うだけで高給? 誰でもできる、簡単な仕事です。本当か?」


恐ろしいほど、嘘くさいな。


「とは言え、ほかにいい仕事が見つかるわけではないし」


胡散臭いが、ほかにないんじゃないのか?


「話を聞くだけなら……」 


俺は“高給”の響きが生む誘惑には耐えられなかった。


いきなりどこかに連れて行かれたりはしないだろう。


俺は、この判断を悔やむことになる。


少しの判断で、人生は大きく変わってしまう。


まさか、あんなことに巻き込まれるなんて。

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