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「ドウカ、シタンデスカ」
いつもと違い過ぎて、カタコトで訊いてしまった。
「あ」
俺の表情に気付いたのか、深雪さんはハッとすると、恥ずかしそうに勢いよく下を向いた。
「あの」
「はい」
「実は・・・」
笑わないでくださいねと続けて、顔を上げると耳元でぼそりと言った。
「今ダイエットしているんです」
深雪さんの顔を見ると、頬を少し赤くして眉尻を下げていた。
「だから今、甘いもの断ちしていて」
確か年齢は俺よりも上だったと思うが、そのどことなく少女らしさの感じるはにかみに、不意にドキマギしてしまう。鼻をかすめた香水はとても色っぽいのに。
「でも、つい食べたくなって、じっとショーケースを見てしまっていたのです」
店の外からも見えるショーケースには、自慢のシュークリームとおなじみのショートケーキたち、それからイチゴと生クリームの素朴なデコレーションケーキ。窓に貼ってあるポスターにはクリスマスケーキのブッシュドノエル。それからふんわりと、あのケーキ屋独特の甘い香り。ここに立っているだけで甘いものを食べたくなる。
「でも、ぐっと堪えないと」
ぎゅっと握りしめた両手、深雪さんの瞳にはちらりと燃える炎が見えた気がした。
そのままでも十分魅力的なのに、と喉まで出かけて甘い空気と一緒に飲み込む。
きっと今まで沢山そう言われて来たのだろう。もちろんそれは嘘じゃないだろうけど、本人が変わろうと思っているのなら、応援するのもその人を想うことの一つだから。
「実はここ、糖質制限のプリンとかも販売されているらしいですよ」
「えっ!」
例え困難だとしても、どこかで楽しみがあった方が頑張れるからね。
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