第52話 8本もの串焼き
スカルベル女王がご乱心なされたぞ!
殿中……ではござらんな。
吹雪魔法の使用は、カラーの違う術者である女王の体に大きな負担を与える。
にも関わらず連発しようとするので、俺は彼女を押し倒してでも口を塞いだ。
手や噛み付きで抵抗する彼女に、止むを得ず俺はマウストゥマウスを敢行。
その瞬間、不幸にもメツェンさんが部屋を訪れた。
これ、絶対に浮気と誤解されちゃうでござるって。
「シツちゃん……スカルベルちゃん?」
「メツェンさんっ!訳をぶぉっ!?」
即座に反転してメツェンさんに弁解しようとするも、
女王に引っ張られてベッドの後ろへと落とされた。
もうそんなに動けんのかよ。
「メツェンよ。
シツがわらわをベッドの上に押し倒したのじゃ。
これの意味する所、そなたにも理解出来よう。
シツはそなただけの物ではなくなったのじゃ」
「そもそも物じゃないです!」
いかん、ツッコミより弁解をしなきゃ!
それ以前にまず起き上がらなきゃ!
「スカルベルちゃん……」
「ふふふ……」
「見直したわぁ!」
「何っ!?」
「メツェンさん!?」
何言ってんの!?
「がう?」
ピトセ!?……はメツェンさんベッタリだから居てもおかしくないか。
あ、なんか緑色の新しい服着てる。
「生涯処女独身を貫く女王であるスカルベルちゃんがその誓いを破り、
自ら男性AAと子作りに踏み切っただなんて……!」
女王は『シツがわらわをベッドの上に押し倒した』と言って曲解を誘ったのに、
メツェンさんの中では何故だか『合意の上』になってるみたいだ。
実際は不可抗力……主に女王が乱心したせいなんだけど、
浮気認定されるよりかはよっぽどマシだ。
俺の子専用保育園が大真面目に計画されるくらいだから、
そもそも一夫多妻制みたいに扱われてるのかもね、俺。
あるいはこの世界自体が元々一夫多妻制だったり?
「なっ、生涯処女独身じゃと!?」
「こうしちゃ居られないわぁ!
イキリダケの料理だけ持って来るから、どうぞ続けて!」
「がうー!」
メツェンさんは何かをテーブルの上へと投げ捨てつつ、どこかへ走って行った。
おニューの服を着ているピトセも、二足歩行でテクテクと彼女の後を追う。
いつの間に二足歩行へ進化したんだろう。
まあそれは良いとして。
「……女王?」
女王はベットの上で真っ白に凍り付いている。
飽くまで比喩表現です念の為。
「わらわらわら……生涯……処女?独身?」
「放心する余り草生えてますよ」
インターネットは愚か電気の普及さえ怪しいこの世界で、
このスラングはまず通用しないだろうけどね。
「メツェン、そのような目でわらわらわら……」
駄目だ。
幼馴染みのオトコを寝取ってやったと鼻を高くしていた所に、
その幼馴染みからこれまで独身処女貴族扱いされていたと知らされ、
高みから一気に叩き落とされたショックがデカ過ぎたらしい。
いっそそのまま、草まみれになって自然に還ると良い。
「ふふふ、冬のカミカミカミ……」
文字通り噛みまくっている。
これなら無理して止める必要も無さそうだ。
ま、どの道そんな精神状態じゃ魔法自体使えないでしょう。
「……わらわら、わらわらわらを、凍て付かせたまたまたまたま」
「自害!?」
「たまたまたまたまたま……」
草を生やしたり玉を転がすのをプッツリと中断し、
女王は操り人形の糸が切れたように、パタリとベッドの上へ倒れた。
ご乱心が収まって一安心した所で、
止むを得なかったとは言え自分の意思で女王とキスしてしまった事を思い出し、
俺は今更ながら自分の唇を手の甲で拭った。
「メツェンさん……気にしてないのかな。
俺の浮気」
俺1女性3の4P状態になった時、メツェンさんは俺を独占、一番乗りしたがっていた。
実際に一番乗りしたのもメツェンさんだったし、
全く気にしてないとは思えないんだけどね。
……俺、ついこないだまで引きこもりだった癖に、
大真面目に異性関係なんか考えちゃってるよ。
「シツちゃん!イキリダケの串焼きよ!」
「ぶっ!」
突然、汗を散らして登場したメツェンさん。
どんだけ急いで来たんですか。
彼女の両手には指の間にそれぞれ1本ずつ、計8本の串が握られている。
マジックアローの強化メニューを思い出させる絵面だ。
各串には屋台のフランクフルト宜しく、
良い感じに焼き目の付いたイキリダケが真っ直ぐ刺さっている。
豊満な美女の両手に4本ずつの男根、中々強烈だ。
……それらを全部食えとでも?
「あれっ、スカルベルちゃん?
もうイッちゃったの?」
「ああー、これは……」
有る意味ではメツェンさんが逝かせたんだけど。
「シツちゃん、その割に元気そうね。
もしかしてこれ……要らなかったかしら?」
「うーん……」
勘違いとか早とちりとか、色々絡み合ってて何とも言えない。
そもそも俺は口下手だ。
「そうだ!この際だからみんなにも食べてもらって、
シツちゃんの子供を一遍に作っちゃいましようか!」
「ええっ!?」
「とりあえずシツちゃん、一本食べて!」
メツェンさんは「はい」と、俺にイキリダケの串焼きを差し出す。
形どころか香りまでそのまんまかよ……。
冗談だろ。
「がう!」
メツェンさんに大分遅れてピトセが現れた。
ピトセはメツェンさんが持つイキリダケの串焼きに目を奪われている。
「ピトセは駄目。
5年は先よ」
「がうー……」
メツェンさんが諌めると、ピトセは指を咥えて肩をガクッと落とした。
多分だけどピトセは、これを純粋に料理としてしか見てないと思うの。
「シツちゃん、ほら」
「ほらって言われても……」
メツェンさんが前進して来る分だけ俺も後退した。
が、左右それぞれの肩甲骨辺りに一対の柔らかい塊が接触し、反動で前進。
「おわっ」
「シツ、わらわは生涯処女独身ゆえ他の町娘と思う存分交わりたまたま」
「女王!?」
振り向くとそこには、未だ真っ白いままの女王がダランと腕を垂らして立っていた。
蚊が鳴くような小声で棒読みだし、前を見ているようで見ていない。
「スカルベルちゃん、何だか壊れちゃったみたい……。
一体どんなプレイをしたの?シツちゃん」
「女王とは何もしてません!」
「え?そうなの?」
「女王!」
「あーあ、ゾデまで来ちゃったよ……」
しかも呼び捨てで声に出しちゃったよ……。
「女王!遂に!遂に!」
ゾデの語彙が怪しい。
言いたい事は大体分かるけど、それはメツェンさんが早とちりを勝手に広めただけだぞ。
「シツさん、女王としちゃったんですかぁ!?」
「あたしともしようぜ!」
「あんたら、邪魔だから!」
いつぞやの赤青紫3色トリオまで!?
「女王!
イキリダケの本数に合わせ、後4人かき集めて来ます!」
俺が一本食う計算かよ!
「ゾデストップ!ヘイタクシー!」
「わらわらわらわら……わら」
「イキリダケの人口栽培とか、出来ないかしら?」
「出来ないに一票!
皆さんもご協力を!」
……結局この後俺は数の暴力に押され、イキリダケも食べされられてしまい、
同じくイキリダケを食べた7人の女性に昼間っから搾取された。
せめて着替えてからにして下さい、
と訴えてアンアンコスを汚さずに済んだのだけが救いだ。
超ハーレムプレイは夜中まで続き、精根尽き果てた俺はいつしか眠りに就く。
そして よが あけた。
てれてれてってってーん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます