第6章【太陽の少年と魔を持つ鬼の少女】
第125話「堕ちる戦姫」
その一冊の本を読んだ時、僕は一つの可能性を導き出した。
これは多分、誰かの日記であること……。
綺麗な文字の中には、少し揺れている文字がある。
恐らく、所々慣れない文字があったのだろう。
「……それで、僕の言いたい事、分かりますか?」
「いんにゃ、妾には分からん」
「そうですか。じゃあ言いますけど、僕の膝から今すぐ退いてくれます?」
重たいのですよ、と思うしかない僕であった。
「まさかお主、妾が重たいとか言うのではあるまいな」
「あ、いや、それは……」
女の子に重たいとか言うのは禁句という話を聞いた事があるが、あれは本当だろうか。
感情的に重たい人間と体感的に重たい人間、僕はどちらかというと前者の方が楽だ。
「……何じゃ、その物言いのある顔は。良いぞ?怒らんから言うてみい?ほれ」
「本当に怒らない?」
「うむ。妾を信用せい。これでも口は堅いし、心は寛容じゃ」
――自分で言うんですね、さいですか。
「本当に心が寛容な人は、自分でそんな事を言わないと思うけどなぁ……」
「んあ?何か言ったか、お主」
「いえ、何も」
一体彼女のどの部分が寛容なのか、誰か僕に説明して欲しい。
そんなやり取りをしているうちに、彼女は僕の膝の上から移動していく。
温もりが消えて少々涼しい風が通り、僕の膝の力が抜ける。
「まぁそんな事よりじゃ。お主、それの感想はどうじゃ?思う事があるのなら、言うても構わんぞ」
「――いや、もう少し読ませて欲しい。僕は僕の中で、ちゃんと整理してから言葉にしたい」
「そうか。律儀じゃのう、お主は。では妾は多少なりとも出掛けてくるとしよう。数時間すれば戻るようにするし、お主もお主でここまで来て勝手に居なくなる事はせんじゃろう。ではのう」
勝手に連れて来ておいて、よくもまぁそんな事が言えたものだ。
でも彼女の言うとおり、僕はこの場所から動くつもりがなかった。
いや、正確には――動くにしても、動く気さえ起きなかったのである。
僕は軽く息を吐いてから、また手元の本へ視線を落とすのだった。
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いつから、私はここまで弱くなったのだろうか。
いつから私は、ここまで力の使い方を間違えたのだろうか。
この力は守る為に欲しかった力なのに、何故私は破壊しているのだろうか。
それが分からないまま、私はこの戦場で武器を振り回す。
口の中が鉄の味しかしなくて、もう何かを考えるのは嫌になってくる。
「……くっ!」
ここで折れたら、私は私で無くなる。
そんな事を思うのに、私にはその理由が分からない。
どうして今、ここで力を使っているのか。
何の為にここで戦っているのか、それが分からないまま……。
私はこの戦場で、闇へと足を踏み入れていったのだった。
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