第16話 企み

ぼーっと歩き竹内の部屋に戻る桃華。

ギョッ!!

タコ殴りにされた竹内が泣いていた。


「殴られるなんて聞いてねーよー。成功したんだ。やらせてくれるだろぅ?」

「あんたは好きな人いないの?好きな人としたくないの?」切ない顔をしている桃華。


そんな桃華を初めて見る竹内。

「…どーせ、オレが好きな相手は手の届かない人だから。

無理だし。好きでもない女のが楽だろ。そんな顔されたらやる気なくす。寝るわ」




圭人の部屋

「消毒液と絆創膏持ってきた。バレるかハラハラしたけど」

自分の部屋から戻ってきた真美。


「僕の部屋の子は事情を説明して、真美さんのキーを持って平くんの部屋にいってもらいました。なんか、すごく喜んでましたけど…」

「そ、そうなんだ…」落ち着かない様子の真美。手当てを始める。


「痛い?ごめんね。私のために」

キズを消毒しながら話す。

「いえ、僕は1発殴ることしか出来ませんでした。あとは真美さんがほとんど…」

真美がタコ殴りにしたことを思い出す。

「だ、だって圭くんが殴られてるから、

つい…手が…」赤くなる。


「さっきは平くんに偉そうなこと言ったくせに、実際は守りきれてなくてすみません。もっと強くならなくちゃダメですね…」申し訳なさそうに言う。

「じゅうぶんたくましかったよ!でも、なんであの部屋に?」

「竹内くんが誰かと話してるの聞いたんです。だから心配になって来てみたら真美さんが部屋に入れられそうになっていたので隙を見て部屋に入りました。その場で助けることもできたのですが、僕は弱いので…」


「無理しないでよ」優しく微笑む真美。

その笑顔にドキッとした圭人。

「真美さん…僕と…つ、付き合って…く、くれませんか?もう他の人の所へ行かせたくありません」


ドキン。

「え?ホントに?わたしも付き合いたい!

でもね…」

佑介の事を考える。

「誰のことを考えてるんですか?

…平くんですね…」


慌てて下を向く真美。

「ち、違っ…くないか。圭くんには嘘つきたくないから話すね…。昨日、佑介に…好きって言われたの。キ、キスもされて…。でも、返事もなにもしてなくて…。だからちゃんと佑介に返事してから、ちゃんとした気持ちで圭くんとは付き合いたいの!だから…」

カチャっとメガネを外し、真美のアゴを引き寄せキスをする圭人。


——!? …圭くん…。身をゆだねる真美。

そのまま床に倒れこみ長いキスをした。


バッと急に起き上がる圭人。

「このままだと止められなくなるので…」

顔を赤くしてうつむく。


真美も急に恥ずかしくなる。

チラッと圭人を見るが前髪でよく見えない。


「真美さん。次は僕の部屋に来てください。その時、返事聞かせてください」

「う、うん。」

ふと、圭人のメガネを見る。

「あれ?メガネ少し割れてるじゃん汗」焦る真美。

「大丈夫ですよ。替えはあるので」

笑顔を向ける圭人。前髪で顔がよくわからない。圭人が立った瞬間髪が揺れキレイな瞳が見えた気がした。


「け、圭くん。私、圭くんの顔…よく見た事ない…。よく…見せて…」

ドキンドキン。緊張した様子で圭人の前髪をあげる真美。2人とも真っ赤な顔。

ドキッ!?

圭人はキレイ顔をしていた。

すごくキレイな瞳。でも…誰かに…似てる…?


そして、寄り添いながら寝た2人。 幸せを感じる真美だった。


翌日

学校が騒がしい。


「今日も朝ご飯ぬいたなー!LINEも既読にぬらないし。めぐと待ってたのに!この寝坊がぁ」

みどりがプンプンしながらめぐと歩いてくる。

「ごめん、ごめん。昨日いろいろあって疲れちゃって…」昨日のことを思い出し、赤くなる真美。


め「それよか、聞いた?平佑介の事!もう学校中この話題でもちきりだよ!」


——え!?もしかして、わたしのことかな…。

緊張した様子の真美。


め「平佑介、婚約したみたいだよ!特進クラスの斎藤桃華と!!」

み「えーー!あのお嬢と?意外過ぎるわー。

でも、平くんも御曹司だからお似合いか」


——え…。なんで?婚約?御曹司?

…意味わかんない。



バッ!走り出す真美。

み「ちょっと、真美ー?どこ行くの?」



特進クラス


「佑介!!」廊下から佑介に向けて叫ぶ。


佑介は驚いた顔をして真美のもとへ歩いてくる。



ちょっと何あれ!平くんの事呼び捨てにしてるけど。

誰?なんなの!

桃華ちゃんいーの?

佑介のとりまきが騒ぐ。


佑介を見てる桃華。

「あの子は仲のいいただの友達よ。全然気にしてないわ。私達婚約したんですもの」

余裕ぶってるが、内心は嫉妬していた。



「ちょっと来て!」佑介の手を引き誰もいない所へ連れて行く真美。

黙ってついて行く佑介。



〜屋上〜

バシッ!泣きそうな顔で佑介にビンタをし、下を向く。

自分が佑介に手をあげるなんて最低だってわかってた。でも、信じてた相手に裏切られた気がして抑えきれなかった。


佑介は受け止めた。何も言わない。自分が裏切ったと真美は思ってると…そう感じてたから。


「婚約したってホントなの?私の事からかった?焦る姿みて面白かった?」

涙をこらえ話す。声が震える。


「ホントだよ。でも、からかった訳じゃない。本気で…。

でも、お前もオレを振るつもりだったんだろ?

なら、いいじゃん。オレに婚約者がいたって…。昨日、あいつを選んだ。それがお前の答えだろ」悔しそうな顔をする佑介。

好きだと言えないもどかしさと、真美を失う辛さが滲み出ていた…。


「そ、そうだよね。こんな事言える立場じゃないね。私も…圭くんと付き合う…ことにするね。

佑介…。もうあんたの愚痴聞けないね…。

じゃあ…サヨナラ…」涙が流れた。

下を向いたまま走り去って行く真美。


心が痛い。追いかけることも出来ない。真美の涙が脳裏に焼きつく。

…立ち尽くす佑介にも涙が流れた。



真美は友達を1人失った…。ずっと近くに行きたかった…。ずっと憧れていた人を…。



——友達を失うのはもうイヤだった…でも…なんでこんなに辛いの…。なんでこんなに涙が出てくるの…。


その日真美は学校を休んだ。




中学の時にみどりとケンカしたときとは明らかに違う感情に気付いてる真美。でもそれが何なのかわからないのでした。






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