03

 マンションの内階段のような踊り場のあるコンクリートのそれを下ると目の前には通路が伸びていた。

 通路の向こうからは空間を埋め尽くすようなゾンビの群れ。

 見える限りでゆうに二十体はいるだろう。

 特にギミックのない手を前に突き出しているだけのそれがゆっくり近づいて来る。


「むしろハリウッド映画だな」


 ファンタジー世界でもアンデッドは敵キャラクターとしてメジャーな怪物モンスターであり、スケルトンと並びRPGの前半に登場する場合が多いゾンビは、それらの世界では死者を魔術的呪術的に操るといった描写がよくなされている。

 しかし、今目の前に迫り来るゾンビはそういった不気味さよりむしろウイルス感染などにより死してなお行動出来、生きているものを襲うという映画やゲームで採用されるSFの流れを汲む描写に見える。

 おそらくダンジョンの設計者はこちらのシナリオを採用しているのだろう。


「ならさっきの階にはショットガンでも置いといてもらいたかったね」


 剣を構えて気合いをいれるジュリーの隣でまだ気の抜けたままの蒼龍騎が軽口を叩く。


「その手のゲームでもナイフは基本装備だろ。二人で倒すぞ」


「二人!?」


「三人並んで戦えるほど通路幅は広くないだろ」


「まぁ、数多いだけで一体一体は強くなさそうだからいいか」


 二人は後ろの二人を残してゾンビの群れの前に歩を進める。

 実際、ゾンビは苦もなく倒すことができた。

 よほどダメージ設定が低くできているのだろう、剣を振るえばほぼ一撃必殺。

 前に突き出していた腕を下ろして道を開けるように壁際による。

 が、数が多い。

 当初見込みでは三十体ほどかと思われていたゾンビはゼンが数えてみたところ全部で五十四体あった。

 手数が足りずあっさり群れに飲み込まれた二人は剣を振るスペースを確保できず、もみくちゃにされながら直接拳や肘で殴りつける乱戦で肉体的損傷こそほとんどなかったが体力的精神的に多大なダメージを受けた。

 全てを倒し終わり荒い息の下、蒼龍騎が心底慨嘆がいたんする。


「こんな中でどうやったら無双できんだよ、主人公補正ってやっぱすげぇな」


「まぁ、それが映画ですから。しかし…ジュリー、もう少しなんとかできなかったのですか?」


 ゼンが苦虫を噛み潰しているような表情で通路の両側にずらりと並んでいるゾンビを見つめているジュリーに声をかけた。

 ジュリーからの答えはない。


 わかっている。


 彼は自分自身その不手際を痛感していた。

 数が多い敵を少しでも早く倒そうと意識するあまり前のめりに攻撃することを優先してしまった。

 敵の設定が弱かったのも影響しただろう。

 ロムがいないことも焦りにつながったのかもしれない。


(これがもし本当に映画に出て来るようなゾンビだったら…)


 まず間違いなく群れに飲み込まれた時点でゲームオーバー、自分もゾンビの仲間入りだ。


(じゃあどうすればよかったのか?)


 ジュリーが自問自答する。

 そもそも不利な接近戦武器での戦いを強いられていたとはいえ、いやだからこそもっと防御に意識を割かなければいけなかった。

 しかし、防御していたからといって群れに取り込まれなかったかといえばそれも遅かれ早かれでいずれ同じ状況になったに違いない。

 彼はまだまだ未熟である。

 自分でそれは認識している。

 剣の振り方を一通り覚えただけでスピードも威力も、ましてや応用力などないにも等しい。

 だから今は一つ一つの攻撃を丁寧にこなしている。

 そのため敵の数が多くなるとどうしても手数が追いつかない。

 取り込まれそうになった際、焦って振った剣は威力がのらず三度に一度は一撃で倒せなかった。

 この程度のゾンビでさえしっかり撃ち込まなければ倒せない自分の非力が恨めしい。


「先へ進むでござる」


 サスケに肩を叩かれて思考の世界から現実世界に呼び戻されたジュリーは力ない返事を返してから、強く首を振った。

 気を抜いたのかと聞かれたら違うと答えたいが、周囲の情報を遮断していたには違いない。

 仲間がいるとはいえこれは油断に他ならない。

 彼は反省も悩みも元に戻ってからと割り切ると気合を入れなおすためにゆっくり大きく深呼吸をしてから歩き出した。

 歩きながらジュリーはゼンに投げかける。


「ゼン、また同じ状況になったらどうすればいいと思う?」


「そうですね…二人では支えきれない。かといって三人並んで戦うにはこの通路は狭すぎる。あいであり側面や後方から責められるおそれもありませんしじんなんてどうでしょうか」


「ほうし?」


「鋒矢陣です。矢印の形になって相手に向かっていく陣形の一つです。防御には向かないと言われているんですがね。我々は四人ですから矢印というか菱形ひしがたになってしまうでしょうか」


魚鱗ぎょりんとどう違うんだ?」


 ジュリーが重ねて問いかけるとそれにはサスケが答えてきた。


「魚鱗は三角形でござる。鋒矢は魚鱗の三角形に尻尾がついていると考えておけば良い」


「雑ですね」


 陣形についてのウンチクをたれようとしていたゼンはそのざっくりとした説明に思わず吹き出してしまった。


「じゃあまぁ、それで行こう」


「隊列はそうですねぇ…先頭を片手剣と盾で殴れる手数の多い蒼龍騎。二列目にジュリーとサスケで蒼龍騎が囲まれるのを阻止するという形でいきましょう」


 通路は薄壁一枚の折り返しになっていて蒼龍騎が通路を覗き込むと同じようなゾンビの大群が所在無げにゆらゆらと揺れていた。


「同じパターンだ。さっきとおんなじ」


「では、予定通り突撃するのみですね」


 若干及び腰の蒼龍騎に冷たいと感じさせる事務的な返答で先を急がせるゼン。

 蒼龍騎は一度天を仰ぐと大きくため息をついて意を決し、突撃を敢行する。

 ジュリーとサスケが後を追い、少し遅れてゼンが続く。

 どんなセンサーが反応したものか、彼らを察知したゾンビの群れが意思を統一したようにこちらに迫り来る。

 遮二無二殴りつける蒼龍騎は数の不利で詰め寄られたことにより振り回せなくなったショートソードより取り回しがいいのか、左腕に装着している円形の盾を主武装としてゾンビを倒していく。

 もちろん武器であるソードほどの攻撃力が期待できない盾ではどうしてもダメージを与えにくいのか、二度三度と殴りつけないと倒せない。

 手数が増えた結果疲弊も増える。

 接敵から通路中央で大群の圧力に一歩も退かず戦う蒼龍騎の一歩後ろで左右に並ぶジュリーとサスケは、彼が倒しきれずに溢れてくるゾンビを多少の余裕を持って一撃必倒で倒していく。

 ゾンビのダメージ設定は既知のダンジョンの弱小|怪物と比べても弱く設定されているらしい。

 両手で剣を振るうジュリーはもとより腰に差していた短刀で戦うサスケでも苦もなく倒すことができた。


「数多すぎだろ!」


 悪態をつく蒼龍騎の足が一歩後ずさる。

 一体一体は弱くとも数が多いゾンビとの戦いで最初に音をあげたのは蒼龍騎の左腕だった。

 疲労が溜まって腕が上がらなくなったのか、目に見えて手数が減っていた。

 その結果、ゾンビの前進圧力に堪えきれずに後退を余儀なくされているのだ。


「サスケ、蒼龍騎と交替してください」


 ゼンはものの短く間合いの短いサスケに指示を出す。

 一拍遅れて反応したサスケは蒼龍騎を右肩で押し出すようにポジションを替える。

 押し出された蒼龍騎が前に来たことで一時手の空いたジュリーが、サスケがいなくなったことで空いたスペースから押し出してくるゾンビを迎撃して陣形を立て直す。

 しかし、余力の残っている二人と違って先陣で疲れている蒼龍騎は押し出されてくるゾンビを捌き切れないのか、ジリジリと陣形が崩れかける。

 その蒼龍騎の外、左の壁際からゼンが杖の石突きで援護の攻撃を繰り出す。陣形的には鋒矢陣から左が少し厚い魚鱗陣に変化したと言えるだろうか?

 これでなんとか持ちこたえることに成功し、そのまま最後までしのぎ切った。


「もう右も左も手が上がんねぇ」


 戦闘終了後、サスケが地図の作成でゾンビの数や通路の距離を測っている間、蒼龍騎は足を投げ出し背中を丸めて脱力していた。

 「気を抜くな」といってもこれは無理からぬことだったかもしれない。

 事件後、数度のダンジョンアタック後で改めて自分たちの戦闘力のなさを嘆いていたジュリーたちはロムに指導を仰ぐ形でほぼ毎日剣を振り続けてきた。

 わずかひと月ふた月とはいえ腕が上がらなくなるまで振り込んできた成果は着実に彼らの血肉となり、蒼龍騎との体力差となってあらわれた。

 もちろんそれは付け焼き刃だ。

 ただただ迫ってくるだけの人形だったから、底上げされた体力が尽きる前に倒せたにすぎない。

 単純な機械制御の人形だったから通用したにすぎない。

 そういう自覚が彼らにはある。

 だからこの状況で慢心することなどあり得なかった。


「この先もこんなか?」


 通路の奥、目の前に開いた非常階段への入り口のような扉をくぐり先ほどと同じ構造の階段を降りる。

 拍子抜けするくらいあっさりとクリアできてしまうフロアはしかし、階層という概念で作られた既存のダンジョンとはかけ離れていた。

 少なくとも縮小前に見たダンジョンの外観サイズは小さめとはいえこんなマンション然とした奥行きではなかった。


「RPGというくくりで考えれば階層を上がったり下がったりというのも特別なことではありませんが」


 それはタイムアタック的なアトラクションであるミクロンダンジョンの構造としてはそぐわないとゼンは続ける。

 下から上へと昇っていくという従来のスタイルを踏襲していないことも気にかかる。

 サスケの作成している地図の大部分を占める未踏領域には一体どんな罠が仕掛けられているのか?


「蒼龍騎、腕は上がるか?」


 階段を下り切ったところでジュリーが訊ねる。


「またあんな大群相手にするってんなら不安だけど、戦えなくはない」


「状況次第ですが隊列を変えましょう。ジュリーを先頭にサスケ、私、蒼龍騎の一列縦隊です。いいですか?」


「構わぬ」


 ジュリーも頷き扉を開く。

 そしてここでも彼らは当惑することになる。

 通路の先には大部屋の控え室のような空間が扉もなく彼らを待っていた。

 怪物が仕込まれている様子もなく、単なる控え室を模した空間らしい。

 正面奥には扉がある。

 そこを開けると暗い通路が伸びていて、通路の先に部屋がありそうだった。

 ゼンはその通路を歩きながら胸騒ぎを覚える。


(扉の向こうは倉庫のような場所ではないでしょうか?)


 そんな予想通り、扉の先は倉庫のようだった。

 ここもそういう意匠というだけで何かが仕掛けられているというわけでもない。

 倉庫は他に出口もなくある種の行き止まりになっている。


「隠し扉か何かを探すってわけだな?」


 ジュリーが壁を探そうと歩き出すのをゼンが止める。


「どうしたんだ?」


「すいませんが、サスケが配置図を書き終えるまで待っていてもらえませんか」


「何かあるのでござるか?」


「えぇ、嫌な予感です」


 そんなゼンをちらりと一瞥したサスケは、それきり何も言わずに黙々と地図に書き込んでいく。

 手持ち無沙汰なジュリーとまだだるさを感じている蒼龍騎は邪魔にならない場所に腰を下ろし、ゼンは倉庫の中央あたりに顔を青くしながら立ってサスケを目で追っていた。

 ほどなく配置図が完成すると、四人は額を集めて地図を見る。


「やはりここは奈落ですね…」


「奈落って『奈落の底』のあの奈落?」


 蒼龍騎が確認するのに頷いたゼンは青ざめた顔で続ける。


「配置物の何かがせりになっています」


 言いながら地図と実物を見比べながら一面が開放された大きな箱を指差した。


「あぁ、あれでしょう」


 その箱の上を見上げるとなるほどその箱の大きさほどの穴が天井に空いていた。

 期せずして全員がこの状況が何を意味するのかに気づいてしまった。


「相手が本物の生き物じゃなきゃいいな」


 乾く唇を無意識にひと舐めして、ジュリーはその箱に乗り込む決意を固めた。






 四人を見送ったロムは、緩慢な動作で彼らの荷物を片付けながら考える。

 まずは、部屋の間取りの確認だ。

 これは、急ぐ必要はない。

 荷物を片付ければあとは特段することがない。

 ぼーっとしている風を装ってじっくり確認すればいい。

 ついでに男たちの様子も観察できる。

 ちらりと三人の男を見てすぐに視線を荷物に戻す。

 こっちはあまりじっくり見ると因縁つけられそうだ。

 片付けを終えた彼はグルリと部屋を見回す。

 時計がないことは部屋に入った時から確認済みだったが、この行動はあくまでも彼らに対するポーズだ。

 時計がないことを確認するとポケットから携帯端末を抜き出し確認する。

 あくまでも時間を確認するていで実際に確認したのは電波状況の方である。

 案の定電波が届いていない。

 携帯端末は今や完全な社会インフラだ。

 オフィスもマシンパワーを極端に要求する仕事や、安全のためのオフライン作業でもない限り携帯端末で行われている。

 そして携帯端末の利用は九分九厘ネット接続が前提であり、オフィスビル内に電波の不感地帯があるなどまず考えられない。

 あるとすればそれは意図的な遮断と考えるのが妥当だろう。


「すいません、どこにいればいいですか?」


 眼鏡の男に声をかけると、彼は案内の男にパイプ椅子を用意させて壁際にロムを座らせた。

 ミクロンシステムの前、部屋の隅に用意されたパイプ椅子にだるそうに座ると改めて部屋を眺めまわす。

 窓のない長方形の部屋はもともと会議室だったと見え、障害物となるような柱はない。

 決して広くないその部屋の長辺に一面をミクロンシステムが隠している。

 縮小装置が三台。

 調子が悪いと言っていた二台はしかし、稼働している気配がある。

 ロムが見る限り少なくとも通電し、起動していることは間違いない。

 ダンジョンフィールドは「賢者の迷宮亭」と比べても外観上ふたまわりは小さく見える。

 それでも部屋全体の六割以上は占有しているだろう。

 通常ダンジョンフィールドの外観は味気ないほどシンプルである。

 メンテナンスのため内部にアクセスしやすいようにストッパーや持ち手がいくつかあるだけ、というのが大半である。

合法時代のダンジョンフィールドはアミューズメントパークなどに設置され多くの人の目に触れていたこともあり、宣伝も兼ねてイラストなどで飾られていたが、今はそんなところに金をかけるオーナーはいない。

 観客を入れていた下町の迷宮亭でさえ外観は持ち手のついたパネル以上のものではなかった。

 そういう意味では目の前のダンジョンフィールドも外見上は特に変わったところはない。

 空いたスペースは六畳もないだろう。

 ロムの対角に二人。

 細いフレームのスクエアメガネに濃灰色のカットソーの男と、えん色のスリムなレザーパンツに襟ぐりの広い黒のタンクトップを着た茶金色の髪をしたにやけた男。

 その向かい、ドアの前に立っている顎に整える気の無い無精髭を生やした若い男。白いスラックスに黒いヨレヨレのタンクトップの上からは派手な刺繍入りのジャンパーを羽織り、下品なほどジャラジャラとしたネックレスが目立つ見事なまでのチンピラスタイルだ。

 彼らの服装を見る限り特に武器になるようなものを持っているようには見えない。

 それ以外には何も目につくものがない。

 天井も古い直管型蛍光灯照明器具が二列に並んでいる(もっとも照明自体はLEDのようだ)し、掃除用具どころかゴミ箱さえ見当たらない。


(何戦うこと前提に状況把握してるんだろうね、俺)


 思わず自嘲を漏らしそうになったロムは目を閉じ、耳をすます。


「どうします?」


 数分後、彼が眠ったと思ったのだろうか? あご髭の男が小声で問いかけるのが聞こえた。


「構わねぇよ、一人で何ができるってんだ。さ、準備準備」


 茶金髪の男が答えながら動き出す気配がする。

 こちら側に近寄ってくるようだ。

 いや、彼のことは眼中にないらしい。

 ダンジョンフィールドを回って奥へ入って行ったようだ。


「そっすね」


 あご髭の男は深く考えた形跡のない返事で作業を手伝い始めたらしい。

 ロムは何を始めたのかを確認したいところだったが、メガネの男の気配がこちらに向いているため実行に移せないでいた。


(やっぱ、あいつの攻略がポイントだな)


 ロムは音と気配を頼りに何が行われているかを探り続ける。


(ダンジョンフィールドを開いている?)


 そうとしか考えられない。

 最初こそ彼をはばかってか、なるべく音を立てないように配慮しながらだった作業はいつしか普通にそれなりの音を立てている。


(いやいや、アタック中だよ?)


 このタイミングなら目を開けるのもありかと判断したロムの背筋をぞくりと悪寒が走る。

 メガネの男の気配が鋭いものに変わったからだ。

 位置は変わっていない。

 相変わらず同じ場所にいる。

 しかし、こちらに向けている気配の質が変わった。

 こちらの気配を探るような圧がある。

 おそらくこちらの反応が伝わったと考えなければいけないだろう。

 油断していたわけじゃない。

 しかし、気質の変化に反応してしまった自覚もある。

 ここまであからさまに気の質を変えてくる相手が、相手の気を読めないはずがない。

 大きくは揺らいでいない自信はあっても楽観するほど強気でも傲慢でもない。

 ロムは改めて男の容姿を思い出す。

 ジーンズに濃灰色のカットソーを着たどちらかといえばインテリな若者。 フレームの細いスクエアのメガネがその印象を強調している。

 背はロムより五センチほど大きかっただろうか。全体的な印象は細身だったが同じ背格好の茶金髪の男や、ゼンと同じ背丈のあご髭の男と違って胸板は厚く張りがあった。


(やべ、インテリどころか武闘派だ)


 何らかの格闘技を習っていたことは間違い無く、少なくとも今でも筋トレは続けている。肉付きがそれを物語っていた。


(何を習っていた?)


 一口に格闘技といってもいろいろある。

 見た目の印象から組み技ではないだろうと勝手に想像しているが、打撃専門と考えるのも怖い。

 それよりもと、ロムは無駄な考察から行動するタイミングへと思考を切り替えた。

 ガタガタとそれなりの音がしていたのだ。

 微睡まどろんでいたとして目覚めても不自然とは思わないだろう。

 問題は起きた後だ。それが決まらなければ目を開けられない。

 メガネの男がいなければ寝ぼけたふりでも構わない。

 あとの二人など彼にとっては相手ではない。

 しかしメガネの男がどれだけの戦闘力を持っているかわからず、じっとこちらを注視している以上下手へたを打つわけにはいかなかった。

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