第16話 熱血漢

次の日の、午前5時。

家のチャイムが鳴った。


昨夜、あまり寝れなかったのに・・・。

しぶしぶベッドから起き上がり、モニターを確認する。


・・・?


寝起きであまり働かない頭には、その光景がすんなりと飲み込めなかった。


なんで、制服姿の神谷先輩がいるの・・・?


早朝に、知らない人にインターホンを押されるのも怖いけれど、先輩っていうのもちょっと・・・。


っていうか、家の場所教えたっけな?

でも、とりあえず話さなければ。


なぜか仏頂面の神谷先輩にためらいながらも、モニターの通話ボタンを押す。


「おはようございます・・・。」


神谷先輩は、怒ったような表情から一転、爽やか(?)な笑顔になった。


『おう!いい朝だな!!』


僕にとっては、そんなにいい朝じゃないんですけど・・・。


『河谷、今から話せるか?』


・・・なんで?


というか、話せないって言っても、この人なら根気で説得しにくると思う。


ドア叩いて、「どうしても話したいんだ!!」って叫んだり、玄関先で何日間でも座りこんだりするんじゃないかな・・・。


「話せ・・・ますよ。」

『ならよかった!!』


この先輩、後輩が引き気味に困っていることに気づいてないんですけど・・・。


まあ、仕方ない。(と思うしかないと思う。)


「鍵開けるので、少し待っていてください。」

『ああ、いくらでも待つからな!!』


玄関へ向かいながら、思う。


心がグチャグチャになって眠れなかった次の日に、早朝に起こされて朝っぱらから熱血な先輩と話・・・。


『図書部』って、こんなにハードな部活なのでしょうか・・・。


ガチャッ。

ドアを開ける。


「お入りください。

粗茶とかしか、出せないですけど・・・。」

「いいってことよ!!」

「あっ、家族が寝ているのでお静かに・・・。」

「お、おう。」


そして、先輩をリビングに案内しながら聞く。


「僕の家、知ってたんですか?」

「いや。住所聞いた。」


これを『熱血指導の一環』と呼んでいいのか・・・。


「じゃ、お茶いれてくるので、ソファーに座っててください。」


そう言って、台所に行こうとすると、神谷先輩に「待て」と止められた。


「お茶はなくて大丈夫。」

「えっ、でも・・・。」


「さあ、そこに正座しなさいっ!」


そう言って、先輩の向かいのソファーを指差した。


へ?

冗談めかして言っているとはいえ、訳わからないんですが・・・?


「俺はしたいんだ!

茶などいらんっ!!」

今度は、芝居がかった口調の神谷先輩。


そして、いままで見たことがないような、ホッとする笑顔で言った。


「河谷と話がしたいだけだからな。

とりあえず、座ってくれないか?」

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