第3話 熱血先輩
今日も、河谷は憂鬱であった。
放課後、通学用カバンを背負いながら、図書室を目指す。
・・・なぜって、河谷は図書部に所属しているからだ。
週二日、三年生の部長である桐野さん、二年生の副部長である神谷先輩、幼稚園からの幼なじみで、学級委員の長谷川で活動している。
活動内容は、ただ本を読むだけではない。
「どうやったら、本を楽しめるか」を
研究するのだ。
友達と感想を言いながら、とか、木陰のベンチに座りながら、とか、河谷が入部してからもいろいろ試してきた。
自然が好きな河谷は、入学当時に
迷わず図書部に入部したのだった。
しかし河谷は、高校の数多くある
イベントの中で、部活がトップ3に
入るほど嫌だった。
―長谷川とゆっくり話せることは、
とても嬉しいのだが・・・。
河谷は、図書室に入る前に、大きく息を吐く。
そして、黒ぶちめがねと窓ごしに、
空を仰いだ。
―ところどころ雲はあるが、清々しい
青空。
しかし、気持ちの方は晴れない。
遠い目をする、河谷。
せっかく、
「クラスの人と友達になれないなら、
せめて先輩とつながれたら・・・。」
と思っていたのに、部活が憂鬱なのでは意味がない。
・・・そうだな、部活が憂鬱なのでは意味がない。
先輩はいい人達なんだから、こんな
気分なのでは『青春』なんて一生
やってこない。
その気持ちに背中を押してもらいながら、図書室に入っていった。
本当は、嫌で仕方がないのだが・・・。
ガラガラ。
「こんにちは。」
とりあえず、あいさつをする。
「よく来たな、河谷!!」
・・・どうしよう、すでに帰りたい。
そう思いながらも、先に来ていた
神谷先輩の方へ歩を進める。
神谷先輩は、手前の窓際の四人掛け
テーブルの、右奥側に座っている。
なので、その正面に座ると、下ろした荷物を足元に置いた。
「遅かったな!!
いや~、待ってたんだぞ?
どうしたんだ?掃除が長引いた、とかか?」
「いえ・・・。」
実際、どうしたもこうしたもないのだが・・・。
―この先輩、神谷紀明は、とにかく
アツいし、声が大きいので目立つ。
今も大声を出したので、司書の古門先生に睨まれているくらいだ。
・・・そんな神谷先輩と河谷は、全く相性が会わないのだった。
「いえ、日直でして。
学級日誌を書いていたら、少し遅くなりました。」
「そうか~!・・・ってかな?」
神谷先輩が、身を乗り出して耳元に口を近づけてきた。
反射的に身を引きたくなるのを抑えながら、続く言葉を待つ。
「別に、先生が見てないところなら、
もっと気軽に絡んでくれていいんだからなー?
先輩後輩関係なく、タメ口で構わんぞ!」
「いえ、顧問の亜口先生にばれると
面倒なのでいいです。」
「そうかー?」
そう言うと、神谷先輩は乗り出していた身を引いた。
でも。
敬語を使わない理由は、
「顧問にばれると面倒だから」と答えたが、実際は違う。
―距離をとりたいからなんだ。
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