何でも知ってるよ
桜舞い散る校門を俺はゆっくりと歩き始めた
(それにしてもすごい桜だ) 俺の故郷 異世界には桜など咲いていない
記念に写真を取ろうとしていると
一人の少女が話しかけてきた
「すごい桜だよね〜 見惚れちゃうよ〜」
「ああ そうだな」
見たところ外国人か 金色の髪はさらりと風になびき見る者を魅了する
「私 フィール フィーちゃんでもフィルちゃんでも呼び方はお任せするわ!よろしく!」
ちゃん付け確定なのか
「俺は隣堂颯馬 颯馬でいい よろしく頼む」
「よろしく!」
桜に呆気に取られてか あまり少女を見ていなかったがよく見ると中々の体つきをしている
バストは80程度か…俺はくだらないことを考える
「あ!今 こいつの胸は後ろから揉むと気持ちよさそうだなぁ とか考えてたでしょ!
スケベだねぇ〜」
知るか しかしスケベであることは否定出来ない というより高校生とはそういうものだ
………
会話が続かない
しばしの沈黙があったあと俺は少女に質問する
「スキルは?」
そう ここはスキルでランク分けされる学校 故にスキルは気になるところだ
少女は答える
「一の煌めき」
俺は少しばかり目を見開く
一の煌めき とは異世界でも伝説として語り継がれるスキルでランクは神クラス
光から様々な武器を作り出すことができる
それだけではなく光を一部に集め極光を作ることで目眩しをしたり 相手の視界を奪ったりすることができる 一見すると神クラスとまではいかない能力だが 伝説として語り継がれているのは別の理由がある かつての異世界での戦争で 神 悪魔 天使 堕天使 王 それぞれが目的のために闘った 「一の煌めき」はその中の天使ウリエルが持つスキルであった
さらに伝説ではまだ隠された能力がいくつかありスキルを所持する者がある一定段階成長すると使える力があるという
とはいえ神クラスは教師になれる程なので
もう出会うことはないな と颯馬は思った
「信じられないって顔だねぇ〜 見せてあげよっかぁ〜」
信じられないっていう顔をしてたのは事実だ
神クラスのスキル持ちがこんなに近くに しかも話しかけてきたとなるとこんな奇跡は2度とないだろう
「しっかり見ておいてね!」
彼女はそう言うと 手のひらから眩い光を出し始めた 思わず目を手で覆ってしまう
光が収まりある程度の塊になったかと思うと
少女はいきなり棒状のものを掴むような手をし上下に動かし始める
傍から見るととんでもない光景だ
しかも速い
彼女はざわついている周りの状況を気にせずに夢中に手を動かしている
俺は視線を逸らした
見てないふりをしようとしている
何故なら周りからの視線が痛いからだ
あんまり時間がかかるようなら静かに逃げるか… そう思っていると少女は声を荒らげる
「できた!」
そういうとさっきまでただの光を放つ棒だったものがいつの間にか両手剣になっていた
かなり大きい
彼女が持てているのが不思議なぐらいだ
しかし彼女によると 元は光なので
質量はほとんどないそうだ
「すげえな それ」
「えへへー ありがとう!」
彼女は照れくさそうに答える
「あっそうだ!私Aクラスなんだ〜」
うん?何故だ 一の煌めき は神クラス つまり教師枠になるのでクラスには入れないはずだ
質問をするとすぐに答えが帰ってきた
「教師ってぇ面白くないし〜 Aクラスの方が面白そうじゃん!」
なんて自由なんだ と俺は思う
ん まてよ Aクラスといえば…
「君と同じだね! 千刃君!」
?????なぜ初対面のこの少女が
俺のスキルを知っている?
千刃 この名を知っているものは ごく少ない者だけだ 千刃がどういうものなのかも
それを踏まえて彼女は俺がAクラスに入ることを知っている 何者だ?
「えへへ〜驚いた〜? まだまだ知っているよ〜君の秘密」
彼女は余裕のある笑みを見せている
「君は〜異世界に行くためにAランクと嘘をついて入学をしようとしている〜 違う?」
違わない 違わないけど何故だ 何故ここまで知っている 急に可愛いらしいこの少女を不気味に感じた
「とにかく〜このまま君の秘密をここで暴露し続けてもいいんだよ〜大声で」
それはまずい
この学校に来た意味が無くなってしまう
俺たちは場所を変えて話すことにした
人気のない道…
旧校舎と体育館倉庫の間
もう1度 気持ちを入れ替えて話し始めようとする
「こんな所まで連れてくるなんて〜
もしかして入学早々レ〇プする気?」
するわけないだろう
コホンと咳払いをし 俺は問う
「君は何者だ? 何故俺のスキルを知っている? その口調 まるで全てを知っているようだが何を知っている?」
俺の心臓の鼓動が速くなる
「全てだよ〜何故君が異世界からここにきたのか 異世界での君の呼び名 君は学校に入学して何がしたいのか」
さすがに怖い
喋ってもないのに全てがお見通しにされているようだ 変なことは考えないでおこう
俺は生唾を飲んだ
「まぁそれはまた後で話そうよ〜 遅れちゃうよ? ただでさえこんなとこに来てるから時間かかると思うなぁ〜」
確かにその通りだ
俺たちは入学式が行われる本校舎体育館
から歩いて5分程度 しかもかなり複雑に入り組んだ所が幾つかあるので迷ったら一巻の終わりだ 俺は話を切り上げ体育館に行くことを
決め、彼女の手をとる
(うん?この冷たさ…)
颯馬の脳内には異世界での情景が浮かんだ
とある少女の手を取った時と同じ…
顔までは思い出せなかったが 懐かしい気を感じた
「ちょっと! いきなり美少女の手を取るなんて積極的だねぇ〜 S?」
どうでもいい とにかく急がねば と俺は懸命に走り続けた 忌々しき異世界の記憶を消し去ろうと必死に…ただひたすらに…
俺は…俺は…
必死に走る
残酷な景色が脳内に広がる前に…
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