第78話 クリスマスケーキ
「フンフンフン♪」
今日は何だか気分が良い。
こんな気分の良い日を迎えるのは何か月ぶりだろう。
昨夜は智さんにも頑張って貰ったので、今日は朝食にお肉を用意した。
「朝から肉なんて珍しいな」
「旦那さまに昨日、体力を使わせてしまいましたし、これからも頑張ってほしいですから」
夕食も肉料理にしようかしら。
私の身体は元に戻った。
智さんとも毎回、昔のように喜びを迎える事ができる。
でも、やっぱり、近所に気を遣うので、最高に抱かれたいときは、ホテルに連れて行って貰う。
でも、反対に智さんがなんだか、お疲れになって行くようで、気が重い。
「彩、11月の連休の時に名古屋に行かないか?お盆の時に行けなかったから」
「えっ、ほんとに?行きます」
11月3日の祭日と絡めて名古屋の智さんの実家に帰省することになった。
智さんが母も誘ってくれたので、一緒に行くことにする。
いつもの通り、緒川駅に着くと、お義父さんが車で迎えに来てくれている。
「お盆に来なかったので、心配していたんだ。母さんも彩さんを心配しておった」
お義母さんも、私が流産した事を気にしてくれたみたい。
「よく来たわね、彩さん身体の方は、もう大丈夫ね?」
「はい、おかげ様で、もう大丈夫です」
「あなたたち、この先の伊置路神社にでも、お参りに行って来れば?」
「神社に?」
「あそこは、命と安産の神様だからね」
聞けば私が流産したと聞いて、私の身体の事を心配して、お義母さんがお参りに行ってくれたらしい。
本当のお義母さんじゃないのに、態々お参りに行ってくれた事が嬉しくて、涙が出てくる。
母も同じようで、二人でお礼を言う。
智さんと母と私は歩いて伊置路神社に来たけど、季節外れの境内は誰もいない。
お賽銭箱にお賽銭を入れて、お祈りをすると、智さんが聞いてきた。
「彩は何をお祈りしたんだい?」
「えへへ、丈夫な赤ちゃんが授かりますようにって。そういう、あなたは?」
「彩の身体の事かな」
「お母さんは?」
「やっぱり、彩の事ね。それは智久さんと同じかな」
「母は子供の事が一番なんだね」
「そうだな、『母は強し』って言うから」
この展開、何か嫌な予感がする。
「でもね、あれは彩がまだ中学生の頃かな。オーストラリアから帰って来た頃だから。
彩に『母は強し』って言った事があるのよ、そしたら彩が『お母さんの名前が剛くんって言うの?』って、それには大爆笑だったわ」
「もう、いい加減、そんな事は忘れてよ」
「ははは、やっぱり、俺の嫁さんは天然だな」
「もう、あなたまで」
やっぱり、その話になった。
これは私の黒歴史なのに。
連休といっても3日しかない。なので、3日目は午前の新幹線で帰る。
新幹線の中では、私は寝てしまうけど、今日は何故だか、目が覚めた。
そのまま智さんと母の会話を聞く。
「今は輸入雑貨の会社といっても、店舗扱いなのよ。住所も自宅のままだし。
だけど、口コミで最近購入者も増えてきて、どうにか売り上げも伸びているので、いっそ会社で登記して、事務所も設立しようかなと思って。
社員だって、今まで一人でやってたけど、今ではなかなか大変で、注文が殺到すると夜中まで荷造りとかしなきゃならないから、パートさんなりを雇おうかなと思っているの」
智さんは黙って聞いているみたい。
「最初は彩をと考えていたけど、ほら流産したでしょ、あんまり無理もさせられないかなって思って」
「そうですね。誘えば彩はやると言うでしょうが…」
「あの子の性格から言って、そうでしょうね」
「それで、いつ立ち上げるんですか?」
「来年の2月頃かな」
「場所とか決まっているんですか?」
「候補は八王子と吉祥寺かな。山手線の中は場所代が高くて無理だし、通勤を考えると近い方がいいかなと思って」
「だったら八王子の方がいいんじゃないですか?」
「吉祥寺は、あなたたちがいるからなの。彩に近い方がいいかなって」
母が、私の身体の事を心配しているのが分かる。
「八王子駅の近くだったら、直ぐに来れますし、いいんじゃないですか?」
「そうね、そこで探してみようかしら」
母とは三鷹の駅で別れて、智さんと私は三鷹のマンションに戻る。
「彩、クリスマスだけど、陽子さんの家に行こうか」
「じゃあ、連絡しておくね」
私が電話すると横から智さんが、「ケーキはこちらで用意すると伝えて」と言って来たので、そう伝える。
前にブッキングした事があるから、そこを気にしているのかな。
クリスマスの日に母の家に行ったら、足の踏み場も無いくらいの荷物がある。
しかも、その荷物が部屋の中に山積みされている。
「陽子さん、これは?」
「発送しなきゃいけない分、今、パートさんにも来て貰っているのだけど、まだ数人必要だわ。
年末、年始だから注文が多くて。
だから、申し訳ないけど、今年は名古屋のご実家の方には行けないわ」
「分かりました。両親にも伝えておきますが、さぞかし残念がるでしょうね」
名古屋の実家に行くと、母が来ないので、みんなががっかりしていた。
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