第34話 クリスマスケーキ

 駅前でメモ用紙を見ながら、買い物をする。

 食材は東京駅で買った物があったので、足りない物を少しだけ買う。

 クリスマス用品は、既に売り切れていたりする物もあったけど、反対に衝動買いする物もあって、二人で楽しく買い物をした。

 そうしたら、私の携帯に着信が入った。

「あっ、お母さん、えっ、もう三鷹の駅なの。ちょっと改札の所で待ってて、直ぐに行くから」

「来たみたい?」

「ええ、三鷹の改札で待っているそうです」


 三鷹駅の改札のところに行くと既に、母が待っていた。

「お母さん、駅を出る時に連絡くれればよかったのに」

「二人、変な事をしていたら、悪いだろうなと思って」

「変な事なんてしてません」

 もう、こんな場所で止めてよ。

「ウフフ、はい、お土産」

 えっ、どこかで見た事がある包み紙。

「えっ、これってケーキ」

「そうよ、車を八王子に置いてきたから、そこのデパートで買ってきたの」

 これって、私たちが東京駅で買って来たケーキと同じチェーン店のケーキだ。

 智さん、どうしよう。

 私は智さんを見ると、智さんは目を逸らした。こいつめ、他人の振りをしやがった。


「ここから15分程歩きます」

 智さんも何も言わずに、母を連れて歩き出す。

 マンションに着くと、貰ったケーキを冷蔵庫に入れる。

「なんだか、もう主婦って感じね」

 キッチンに立っている私の姿を見ながら母が言う。

「そんな事ないよ」

「ううん、もうお嫁に行ったみたいな感じがするわ。じゃ、私も手伝うかな」

 お母さんも手伝ってくれるなら、今日の夜は豪華になりそうな気がする。

 智さんは、買って来たクリスマスツリーへの飾りつけをして貰う。


「何か手伝う事は、ありますか?」

 智さんが聞いてきたけど、特にして貰う事はない。

「いえ、特にないです。ゆっくりしていて下さい」

 智さんがTVを点けると、聞こえてくる番組はクリスマス一色みたい。


 私たちは、出来た料理をテーブルの上に並べる。

 メインは東京駅地下で買った握り寿司で、フライドチキンも作ったけど、智さんは鶏肉は苦手って、言ってなかったっけ。

 食事が済んだら、母が買って来たケーキを出す。

 箱を開けてみると、私たちが買ったケーキと同じケーキが入っている。

 店だけでなく、ケーキまで一緒だったとは。

 私は、この母の子だという事を実感した。


 ケーキにロウソクを立て、火を点けた。

 部屋の電気を消して、私がロウソクの火を吹き消したけど、これって誕生日だよね。

 握り寿司とチキンを食べているので、出したケーキを食べるのは、いくら別腹でも限度がある。

「ケーキ全部食べれない」

 私はギブアップだ。

「私も」

 母も同じようにギブアップした。

「では、冷蔵庫に入れておきましょう。明日にでも食べればいいんじゃないですか」

「そうですね」

 母が残ったケーキを持って、冷蔵庫の所に行った。

「あれ?この箱」

 冷蔵庫のドアを開けたら、私たちが東京駅で買ったケーキの箱を見つけたみたい。

「あら、あなたたちもこのケーキを買っていたの」

「ええ、まあ」

「もう、言ってくれればいいのに、フフフ」

「ウフフ」

「ハハハ」

 結局3人で爆笑した。


 ひと段落ついたら、お正月に智さんの実家に挨拶に行く話をする。

「私も一度おじゃました方が、いいわよね。あなたたちは、いつから行くの?」

「30日に行って、2日に帰って来る予定です」

「あら、そう。じゃ、私も2日に行って、同じ列車で帰って来ようかな」

「では、予約入れておきましょう」

 智さんが、PCから予約を入れる。

「席は並びになりませんでしたが、とりあえずokです」

「ありがとうございます」


「お母さん、泊ってく?」

「そんなヤボな事する訳ないでしょ。帰りますよ、着替えとか持ってきてないし」

「そうですか、では駅まで送ります」

 智さんと二人で、母を駅まで送って行った。


「智さん、私も一緒に帰った方が良かったかな。智さん、明日は仕事でしょう。私一人居ても仕方ないし」

「そうだね、でももう仕方ないから、明日の朝帰れば」

「うん、じゃ、一緒に出るようにする」

 駅からの帰りの夜空は冬晴れで、東京では珍しく、星が輝いていた。

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