窓の外は、雪が降っていた。
@yuki_usagi
第1話
無慈悲に白い部屋に、少女は、1人佇んでいた。
外には雪が降っていて、遠くから子供の楽しげな声が聞こえる。でも、少女の部屋は静かだった。
「ふぅ。」
少し息を吐いて、わたしは読みかけの本を閉じた。
ストレスで声の出なくなった女性バンドマンが男性と出会い、声を取り戻していく話。まだ途中だけれど、ハッピーエンドの幸せな作品だ。今はハッピーエンドがたくさんでみんな喜ぶ世の中なのか。
いいよなぁ。気楽で。話の中の人は、必ずどこか長所があって。絶対の幸せが約束されていて。
わたしとは、かけ離れている。
声が出なくなっても、治る未来があるなんて、素晴らしい話だ。わたしも、そうなればいいのに。
何度も願った。けど現実は物語じゃないから。そうそううまくなんて行かない。本に出てくる男性は現れない。
わたしは、心臓に病気を持っている。移植してくれる人がいなければ、余命はあと、ちょうど一年。でも、きっといない。今までずっと探していたけど、ずっと現れていないのだ。ちょうど来年の冬、わたしは死ぬ。
今日みたいな、静かな雪の日に。
ふと窓の外に目をやる。子供たちは、雪合戦をしていた。わたしは、そんな遊びしたことない。今まで一回も、これからも無いと思う。来年は死ぬんだから。
でも、別に、いいや。
病気で悩む人はいっぱいいて、わたしに臓器提供するくらいならもっと将来有望な子の方がいい。
それに、雪は好きだ。静かで、優しい。
そんな雪の日に死ねるのなら、少しはいいかと思った。
窓の外は、雪が降っていた。 @yuki_usagi
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