第24話 ここからずっと俺のターン!

『ぬぁああああああああああああああ!!!!』


ザツザから放たれた全方向極太の橙色レーザーと共にふぐ刺しに見ようと思えば見える細かい弾幕!

更には青い球体の弾幕が視界を埋め尽くす。

いや、空間そのものを埋め尽くす物量でデビルバハムートの全身が徐々に削られていく・・・

不思議な事にデビルバハムートは着弾と共に少しずつその体を小さくしていった。


『あれを・・・あれを我は・・・』


銀河系以上のサイズであったデビルバハムートはこの裏世界でザツザの攻撃によりその体を惑星よりも小さくしていた。

そして、弾幕を掻い潜りながら溜めに溜めたブレスを前方ではなく体の周囲を守るように吐き出した!

そのまま全身をブレスで覆った状態でザツザに特攻を仕掛けるのであった・・・




一方裏世界から戻ったヒロシは倦怠感に包まれ手足が透ける現象が起こり始めていた。

魂が減りすぎて消滅するのが近付いているのだ。

それでも自分でデビルバハムートを滅ぼす決意は固くそんな状態にも関わらずアホウを使用してそれを出現させた。

一見緑色の服を着た小人、ヒロシはそれに深く頷くとそいつは前方に在った球体らしき物を押して何処かへ走っていった。


「頼むぞ・・・お前が勝利の鍵だ・・・」


流石に限界が近いのかヒロシはその場に座り込み体を休める・・・

少しでも気を緩めればこの世界から存在そのものが消失するところまで来ているがまだヒロシは諦めていない。

だが今は少しでも回復に努める為にその状態で極力動かないように心がけるのであった。






10分以上が経過してそれは突如出現した。

月の様な星の上に座るヒロシは顔を上げてそれを見る。

サイズは極端に小さくなったが間違い無くデビルバハムートである。


『グハハハハハ!!!やったぞ!遂に我は新たなる存在へと進化した!』


体調4メートル程となったデビルバハムートは明らかに以前とは容姿が変わっていた。

ドラゴンにも関わらず頭部に触覚、そして背中にドラゴンの翼と共に羽が生えていた。

そう・・・


『残念だったな強き者よ、我は全ての存在を喰らい我が物とする。お前が切り札として用意したあれは既に我が体内に取り込ませてもらった』


空に浮かぶデビルバハムートがその羽を広げてエネルギーを蓄える。

無から無限のエネルギーを生み出す火蜂の能力そのものすら自身のモノとしたのだ。

疲労で立ち上がるのも困難に見えるヒロシの姿を見下ろすデビルバハムートは高らかに宣言する!


『感謝を述べさせてもらおう、我に新たなる力と進化を、そして夢の様な一時に』


そう宣言して羽が輝きだす。

今のデビルバハムートが放つブレスはあの巨大な時のゼタフレアを遥かに凌駕する威力を持っている。

空間どころか宇宙誕生の爆発であるビックバンにも匹敵するそれを放てばこの宇宙は消滅し更に新しい宇宙が生み出されるかもしれない。

その威力はアホウで回避したところで空間そのものに干渉しヒロシに届きえるであろう。

それほどのエネルギーが蓄えられヒロシ1人に放たれようとしているのだがヒロシは肩を震わせて笑い出した。


「ははは・・・はははははは・・・間に合った!」

『最後に気を狂わせたか強き者よ?』

「いや、俺はお前に一言伝えておかない言葉があるんだ・・・」

『言葉?遺言か?』

「いや、チェックメイトだデビルバハムート!何処かの世界には常識を遥かに超えた理解し得ない異常ともいえる存在が在る事をお前は知らない」


ヒロシが何を言っているのか理解が出来ないデビルバハムートは首を傾けて不思議がる。

今にも死にそうなヒロシのその余裕の態度に違和感しか無いのだ。

しかし、それは直ぐにやって来た。


ブィイイイイイイイン!!!


まるでエンジンのモーター音の様な音と共にやってきたそれは巨大な球体であった。

ヒロシの隠し球だと理解したデビルバハムートは溜めに溜めたブレスをヒロシではなくその球体に向けて放つ!

虹色に輝くそのブレスはあのゼタフレアを更に上回った破壊力を持ち真っ直ぐにその球体に向けて飛んでいく!

更に周囲には火蜂特有の弾幕が放射状に乱発射される!

名付けるならばゼタの更に上の単位である『ヨタフレア』であろう。

それを見詰めるヒロシは聞こえるのか分からない、それでも告げずには居られなかった。


「世の中にはな、不条理な存在と言うのが存在する。そいつはその代表格だ!」


ブレスを吐きながらヒロシの声を聞いたデビルバハムートは目を疑った!

自らから放たれたブレスがその球体に吸収、いや巻き取られているのだ?!

更に周囲に飛び散った弾幕すらもその球体に触れると共に球体にくっつき一体化してデビルバハムート目掛けて転がってくる?!

慌ててブレスを止めて回避行動に出るデビルバハムート!

だがその球体を見下ろして目を疑った。

球体の後ろには小人が居たのだ。


「紹介するよ、どんな攻撃を受けても一切ダメージを負わずどんな物質・・・いや視認出来る物であれば巻き込む玉を転がす王子だ!」


そう、どうやっているのか分からない宇宙空間を生身で走って球体を転がしているその存在。

ありえないというのはありえない、それは錬金術師の言葉であった。

人間が想像できることは、人間が必ず実現できる、それはフランスの小説家ジュール・ヴェルヌの言葉であった。

ヒロシが告げた通りそれは埋め尽くされるほどの弾幕の中いつも通り球体を転がして進んでいた。

一切のダメージを負わず放った弾幕は全て吸着され玉が更に大きくなる。

そして、それがデビルバハムートの真下に来た時にヒロシは叫ぶ!


「ジャンプだ!王子!」


その言葉と共にビヨ~ンと気が抜ける音が響き球体と王子がデビルバハムートへ向けてジャンプしてきた!

そして、この球体のもう一つの特徴!

巻き込めないサイズの動ける物とぶつかった場合、自身が一定以上のサイズであれば相手を跳ね飛ばして一定時間行動不能にする事が出来るのだ!


『なっなんだとぉおおおお?!?!?!』


球体とデビルバハムートが接触した瞬間キリモミ状態でスピンをしながら浮き上がりデビルバハムートはそのまま地面に頭部から突き刺さった。

そして、そのまま王子の転がす球体に接触し巻き込まれた!

暴れるが一切体が球体から離れずに身動きが取れなくなったそれを見てヒロシは立ち上がる。


「やっぱりすげぇよ塊魂、よしそれじゃあ行くぞ!ここからはずっと俺のターンだ!」


休んだ事で少しだけ元気になったヒロシは最後の力を振り絞ってデビルバハムートへ向けて指を刺して高らかに叫ぶ!

その背後に浮かび上がる巨大な白い巨人、そして紫色のロボットと赤い巨大な槍。

それらが空中で謎の幾何学模様を映し出し紫色の巨大ロボットを触媒に変化が起こり始めた!

球体に巻き込まれたまま身動きが取れないデビルバハムートはそれを見詰め続ける・・・

一体何が起こっていてこれから何が起こるのか分からないデビルバハムートにヒロシが告げた。


「それじゃ俺は巻き込まれたら困るから一旦退避するよ、それじゃサードインパクトを堪能してくれ!」


そう言い残してヒロシはアホウで別空間へ退避した。

宇宙に木の様な物が出現しそれを中心に光り輝くショートカットの青髪女性が舞い降りた。

それらは微笑みながら周囲を見回しこの宇宙に唯一存在するデビルバハムートへ向けて近寄る・・・


『よ、寄るな!よるなぁああああ!!!』


デビルバハムートの叫びが聞こえていないようにそれは手をデビルバハムートの体へ触れさせた。

直後、デビルバハムートの体からピンク色の液体が流れ出る。

それは下へ下へ次々と流れ出てデビルバハムートが絶叫し続ける。

徐々に小さくなっていくデビルバハムートの中からピンクの液体が流れ出尽くしてそれは全て消え去った。

そう、これこそがデビルバハムートに取り込まれた全人類だけをその中から救出する為の方法・・・

人類保管計画を利用したのだ!

塊からポロリとデビルバハムートの体が落ちて肩で息をするその前にヒロシが出現した。


「さぁ、大詰めだ!行くぞ皆!」


ヒロシの叫びと共に空間が割れそこに物凄い数の人々が出現する!

宇宙空間であるコチラ側へは来れない為にアホウで開いた向こう側に居るのだ!

そこに居るのはかつてヒロシが様々な世界で救った人々。

異世界転移させられた勇者だけに留まらず様々な者が全員それを手にしていた。

光り輝く剣・・・

そこに居る全ての物が手にしたそれを掲げヒロシの言葉に答える!


「「「「「応!!!!」」」」」


そして、ヒロシは2つのポケ○ンボールを両手に持ちデビルバハムートの方を向いて地面に叩きつける!

そこから出現したのはヒロシが別の世界で捕まえた神オロチと悪魔オメガデーモンである!


「喰らって消滅しろデビルバハムートォオオオオオオ!!!!」


ヒロシの叫びと共に神と悪魔がその力を解き放つのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る