第17話 魔界で最凶の魔物を求めて・・・

闇の底よりも更に深い闇が包み込む世界が広がる。

そこは弱肉強食のみがルールの強者だけが生き残る事で知られるこの世の地獄。

人々はそこをデッドエンドと呼んだ。


「よっと、さて・・・と」


フワリと着地したヒロシは今の一瞬で襲い掛かってきていた魔物を3匹纏めて細切れにしていた。

右手につけられたグローブから光に反射してキラキラと糸が輝く。

光の届かない空間にも関わらずその糸が反射している光はその存在を主張している。

魔力が流し込まれた糸を使ってヘルシング家の執事が使用するアレを強化した物を使っているのだ。


「あっちかな?」


と違う方向を見ながらヒロシの背後から大きく口を開けていた異形の岩の魔物は押しつぶされて地面のシミと消える。

いつのまにか左手に握られた巨大な銃の銃口が向けられギューンという音と共に魔物を消滅させたのだ。

ガ○ツのあれであった。

もうなんでもありなヒロシであるがこの場所では誰も突っ込まない、強者は生き残り弱者は死ぬだけの世界だからだ。


「もぅ、面倒臭いな・・・」


ヒロシがそう告げるのも仕方ないだろう、ヒロシの向かおうとしている先には物凄い数の魔物が獲物を求めて彷徨っているのだ。

強い生き物は生存に膨大なカロリーを消費する、その為常に獲物を求めるほど空腹なのだ。

それでもそこに生息する多種の魔物よりも人間であるヒロシの肉は柔らかくて美味そうなのだ。

その状況下で餌と認識されて狙われないはずが無かった。

どの魔物もヒロシを狙ってその目を輝かせている、その目を見てヒロシはニヤリと良い事を思いついたと顔を歪ませアホウを使ってそれを取り出す。

一見何の変哲も無いただの小型銃だがそれを嬉しそうに握り締めて歩くヒロシ。

そこへ恐竜の様な魔物が襲い掛かってきた!


「それっ!」


焦る事無くヒロシは銃を向けて放つ!

銃からジグザグの光が放たれてそれが魔物に直撃すると同時に魔物は輝いて一匹の鹿になった。

一瞬何が起こったのか分からない鹿はそのままヒロシに突撃しようとするが直ぐ横に居た魔物に丸呑みにされてしまった。

続いてヒロシは鹿を食った魔物にも銃を放つ!

光が当たった魔物は輝いて今度はシマウマになってしまった。

そうして歩くヒロシに襲い掛かろうとした魔物は次々と動物へと変身させられていった。

悠々と歩くヒロシにいつしか魔物は襲い掛かるのを止めて遠くから眺めるだけとなったのだ。


「なんだもう終わりか・・・仕方ないな」


そう言って今度はガラスの容器に入った液体を自分の足元に垂らした。

すると周囲から魔物の気配が消えてヒロシは今度こそ何の妨害も受ける事無く目的地へと進むことが出来た。

ヒロシの使った銃、先程のガン○の大型銃とは違う小型の片手で簡単に扱えるそれこそがかの有名な『細胞変換銃』である。

今の子供達は知らないかもしれないが、昔『パマーン』と言うヒーローアニメがあったのだ。

それに出てくる『バドーマン』がヒーロー『パマーン』達の正体がバレたらこの銃で動物にすると語ったあの銃であった。

ちなみに原作では『スーパマーン』が半人前なので『スー』が無くて『パマーン』と言うのは豆知識である。

版権関係で超人→鳥人で名前がバドーマンに変更されたのは覚えておくといいだろう。


「うん、歩くの面倒だ」


そう言って出したのは原付でもなく自転車でもなくサブウェイであった。

かのドクターマ○リト博士にそっくりと言われた小泉総理も乗った事がある立ち乗りするあれである。

それを荒れ果てた地面の上を1人走るヒロシ、あまりにも場違いであまりにもシュールであった。

だが彼は魔物に襲われる事は無い、何故ならば先程彼が垂らしたのはドラゴンのクエストに良く出てくるトヘロスと同じ効果の『聖水』であった。

自分よりもレベルの低い魔物が寄ってこなくなる効果である聖水であるが飽く迄もこれは使用者のレベルが魔物よりも高くなくてはならない。

だがヒロシはこれをある方法を用いて解決していた。

それが・・・『ふっかつのじゅもん偽造バグ』である!

ドラゴンなクエストを昔からプレイしているプレイヤーならそれが直ぐに分かると思うが簡単に言うと今のセーブ&ロードを文字で行なう訳だ。

難解な文字列がそのキャラや世界の状態を全て表しているパスワードとなっていると言えば分かるだろうか?

簡単に言うと何処かの文字がレベルに充てられているのでそれを理解すれば簡単に自分のレベルを自由に弄れると言う訳である。

ちなみに、今のヒロシのレベルはこの復活の呪文偽造バグにより『99999』となっている。

この世界のMAXレベルが999なのでこの時点で強さは関係なく聖水は全ての魔物を遠ざける事に成功していたというわけであった。


「よしよし、サブウェイに乗って正解だったな」


そう口にしたヒロシは手に出していたもう一本の聖水をアホウで片付けた。

ヒロシが予想外にラッキーだと感じたのはこの聖水の効果が切れていない事に付いてである。

そもそも聖水の効果は・・・フィールドマップで64歩を歩く間その効果が持続する。

つまり、歩かず何かに乗って移動すれば聖水の効果は切れる事無く継続するのである!

しかし、馬車などに座っているとその効果が同じように切れるのは実証されている。

立って乗るのが条件と言うのを知らずヒロシは運よくこの特製を逆利用していたのだ。


「げっまたおやじっちになっちまったよ・・・」


進む方向が決まり立ち乗りのまま魔物が襲ってこず平坦な道となれば暇になるのは当然である。

最初ゲームデボーイを起動してカコムンジャをプレイしていたヒロシであったが単三電池が必要な所期バージョン機だった為に重くて疲れたので代わりに最近何故か育てている『たまごうぉっち』をプレイしていた。

御存知世紀末に大爆発的な大人気商品となった玩具であるあれである。


「ゴォアアアァァァァァァ!!!!」

「おっ!近付いてきたな!」


たまごうぉっちがおやじっちに成長してしまった為にそれ以上育てる気が無くなったヒロシはそれを仕舞い進行方向へ目を光らせる!

そして、見えてきたのは巨大な建造物・・・いや、機械の体を持った巨大な魔物であった。

直ぐ近くに居た大型魔獣を一瞬で八つ裂きにしてその心臓をバリバリと喰らうその姿はこの弱肉強食の世界で頂点に君臨する存在として風格を表していた。


「ひゅぅ~でけーなー!」


流石に星よりも巨大なデビルバハムートに比べれば比較にもならないが通常空間に存在する生物としては破格のサイズであった。

見上げるその姿は10階建てのビルにも相当する大きさで機械が融合したその体は少年心を擽り一言で・・・


「カッコぶ~!!!」


どこのリベロだと突っ込みを受けそうな言葉に反応してそいつは振り返った。

そう、レベル99999で聖水の効果が発動しているにも関わらずそいつはヒロシに気付き反応したのだ。

その動きを察知してヒロシは素早く跳躍した!

次の瞬間、サブウェイを中心に大爆発が起こる!

だが爆発は内側へ閉じ込めるように圧縮されその中に在った全てを消滅させる力となって空間毎飲み込んだ。


『アトミックフレア』


遅れて使用された魔法の名前がヒロシの脳内に届いた。

遅いってと自分の脳内に聞こえた声に対して突っ込みを入れながら着地したヒロシが顔を上げるとそこへ極太のレーザーが打ち込まれた!

再び遅れてヒロシの脳内に技名が届く。


『オメガシュート』

「だから解説遅いって!」


突っ込みを入れつつヒロシはレーザーの中を突っ込んでそのまま巨大な機械の魔物に強烈な一撃をぶつけた!

よく見るとヒロシが何かに乗ってレーザーの中を進みその乗っていた物が巨大な魔物にぶつかったのだ!


『ブルー・スライダー』


電脳戦機バーチャ○ン オラトリオ・タングラムと言うロボット同士が対戦するアーケードゲームでの主人公機『手無人』の隠し技である。

追跡効果のある盾の乗って敵へ突撃するこの技はスパロボをプレイしている人なら良く知っていることだろう。

全武器のゲージ残量が100%で空中前ダッシュ中にしか使用できないが回避方法を知らなければ避けるのは困難と言う初見殺しの技である!

相手も驚いた事だろう、自分の放ったレーザーを直撃されたのにその中を突撃し反撃までされたのだから。

ヒロシは空中で無駄にポーズを決めて着地してから再び違うポーズを決める!

まさにジョジョ立ち状態である。

その横にはボロボロの人形が落ちていた。

悪魔城ド○キュラで有名な『身代わり人形』であった。

これは一撃だけHPを0にされた時の攻撃を肩代わりして消費するアイテムで本人へのその一撃は無効となる。

つまり直撃を受けていればヒロシであっても先程の一撃は死んでいたという事である。

オメガシュートが連続でダメージを与える攻撃でなかったのでヒロシはそれを自身へは向こうとして中を突っ込んだのだ!


「もうちょっと今の一撃で驚くとかしてくれてもいいんじゃないですか?」


先程の一撃は完全に不意を付いた強烈な一撃であったがそれに仰け反ることすらしなかった目の前のそいつにヒロシは目つきを変える!


「仕方ないか、ちょっと本気で行かせて貰うぜ!オメガデーモン!」

「GUWAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」


ヒロシの気合に同調して叫びを上げるオメガデーモンと呼ばれた巨大な魔物。

ここ、魔界で史上最大の戦いが今始まる!

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