第16話 神オロチ撃破!

『我が力の前に跪け!』


シエルが腕を振り下ろすとヒロシの周囲の重力が一気に数倍に跳ね上がる!

動きが鈍くなったヒロシは再度指をパチンっと鳴らす。


『ウッ・・・またか・・・』


ヒロシの指パッチンの音と共にシエルが再びふらついた。

すると不思議な事にヒロシに掛かっていた重力が解除されたのだ。


『そ・・・そんなバカナ・・』

「というか・・・はぁ・・・」


シエルに向かって溜め息を吐くヒロシ。

まるで何かに困っている様なその仕草にシエルは遂に全力を出す!


『無に帰ろう!絶』


両腕をクロスして天を仰ぐと共にヒロシを中心に天から神々しい光が降り注いだ!

全ての物が蒸発するその光は辺りを包み込み腕を降ろしたシエルの前には人どころか土すらも消滅して大穴が広がる・・・


『ウッ・・・なんなんだこれは・・・』


再度シエルを襲うふらつき。

そんなシエルの前にヒロシが浮いていた。

2台のドローンを手元のラジコンで操作しながらそれの上に乗っているのだ。


『なん・・・なんなんだ・・・お前は・・・』

「俺か?俺は酒井酒店のヒロシだ!」


どーん!!!と効果音が響きそうな雰囲気の中ヒロシは親指を下にして拳を下ろした。

ラジコンを左手で持ちながら右手を動かしただけ。

だが次の瞬間空から物凄い数の弓矢が雨の様に降り注いだ!


『が、がああああああ!!!!』


流石のシエルも予想外の方向からの予想外の攻撃には反撃が遅れたようでそれを体を守った腕に受けてしまう。

更にヒロシが何かを投げつける!


『いい加減にしろ!!!』


再びそれを青い玉を放って破壊するシエル!

その青い玉の周囲は物凄い斬撃が発生しているのでその何かは切り裂かれた!


パンッ!

『なに?ぐぁあああ・・・あれ?』


それは水風船であった。

斬撃により破裂した水風船の中身がシエルに降りかかった!

だが悲鳴を上げたが特に何も異常が無い事に驚いたシエル。

それもそのはず、今のはただの水風船であったからだ。


『ば・・・馬鹿に・・・』

パチンッ!


再びヒロシが指を鳴らした時であった。


『ぐ・・・ぐふっ・・・』


シエルが口から血を吹いた。

それは仕方ないだろう、シエルの腹部に大きな大穴が開いていたからだ。


「ふぅ・・・やっとだぜ」


ヒロシがそう言いアホウで亜空間からボールを取り出した。

そして、シエルに向かってそれを投げようとした時にシエルが尋ねる・・・


『お、教えて・・・私に一体・・・なにを・・・したの?』

「召喚魔法カタストさ」

『か・・・カタスト?』

「そう、こいつ」


そう言ってヒロシがりんごを一つ上に放り投げた。

そして、指をパチンッ!と鳴らすと黒い空間の狭間が開いた。

そこから首の無い馬に跨った鎧の騎士が飛び出し空中のりんごを一太刀で切り裂きそのまま走り去った!


「別名、オーディン。一定の確率で今の斬鉄剣かグングニルって槍を投げる攻撃をしてくれるんだけど・・・」


そう言って落ちてきた切られたりんごを受け止めかじる。


「斬鉄剣が出ると一撃で相手を殺しちゃうんだよね・・・」

『ま・・・まさか・・・私は既に・・・』

「うん、グングニルが出るまで何回か呼んじゃって殺しちゃった。てへっ」


ふざけた様子のヒロシだがシエルは納得の行かない顔で訴える。


『そんな筈があるか!私には見えなかったぞ!』

「そらそうだよ、この世界は1秒が24フレームだもん」


フレーム、それは1秒間に表示される刹那の時の単位である。

この世界の刹那が1秒間に24なのに対してヒロシの刹那は1秒間に100京なのである。

※京とは兆の上の単位である、万→億→兆→京→垓→・・・と続くので覚えておこう。


「つまり、君が1瞬と認識できる時間に俺は兆を超える時間動けるって訳さ」


まるでキングクリムゾンである、認識できる時間よりも短い時間に起こった事はこの世界の物では認識も出来無いのだ。

むしろ時を止めているのと同意と思ってもいいだろう。


『ばかな・・・それでは私は・・・』

「あっ大丈夫、そっちにはリレイズの本を使って死んでも何回でも生き返れるようになってるから」

『?!』


そう、シエルがふらついたのはヒロシの呼び出したオーディンの斬鉄剣により切断され死んでいたのを生き返っていたからそう感じていただけなのだ。


『そして、ようやくお望みのこれが出たわけか・・・』

「そ、んじゃそろそろいくよ!これいじょう引っ張ったらお前死んじゃいそうだから」


そう言ってヒロシは手にしていた赤と白のボールをシエルに投げつけた。

今なお2台のドローンの上に乗ったまま浮いているヒロシ、彼が投げたボールはまっすぐにシエルに向かって飛ぶのだが・・・


『ひ・・・ひぇええええええ!!!』


その瞬間シエルの体から光の靄の様な物が飛び出し逃げ出した。

それと同時にシエルの体から力が抜けその場に座り込む。

それはシエルの体に入っていた神であるオロチの正体であった。

だが・・・


『こ・・・こっちにくるぅ!!!!!』


ヒロシの投げたボールはカーブを描き、まるで前からそっちに逃げるのを分かっていたかのように曲がって霧状態のオロチに当たった!


『ごぉぉぉぉおっぉぉぉぁぁっぁぁあああああ』


霧状態のオロチの体は当たったボールが光りだしてその中へ吸い込まれボールが地面に落ちる。

そう、それは赤と白の真ん中にラインの入ったボール・・・

ポケ○ンボールであった。


「ゴッドモンげっとだぜ!」


この捕獲には一定以上のダメージを与える必要があった為にヒロシはグングニルが出るまで繰り返しオーディンを呼び出して何度もシエル毎殺害していたのだ。

こうしてヒロシは無事にオロチを手に入れたのだが・・・


「う~ん・・・これはちょっと酷すぎるよな・・・」


既にロチのビルどころか荒野でもない大穴となってしまったその町。

ヒロシはとりあえず死んだ人を生き返らせようとアホウを使ってアレを呼び出す!

そう・・・10分以上前に死んだ人も生き返らせるにはこれしか思いつかなかったのだ。


「こいフェニックス!」


その言葉と共に空中に火の輪が生まれその中から炎の体を持つ鳥、フェニックスが飛び出した!

そのまま空に浮かび上がり翼を広げその周囲に広げた翼から放たれた光がその地を晴らす!


「う・・・ううん・・・ここは・・・」

「あれ?私達どうして・・・?」

「なんだってんだこれは・・・」


あの山崎を含む全ての死んだ人がその光によって生き返ったのだ!

クリスはその奇跡の光景を見てヒロシに祈りを捧げようとするのだが・・・


「おっと、俺は無宗教だからそれは無しな!」


って一言残してヒロシはその姿を消した。

死んだ人が生き返った事で町の復興は彼らが行なうだろうとヒロシは1人で納得していた。

あれを行なったのがシエルだったからでもあった。

そういう彼女は・・・


「ヒロシ・・・なんて凄い漢なんだ・・・惚れたぜ」


とオロチから開放されヒロシに対する感情に悶える事になるのであった。

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