流転
@kounosu01111
第1話
私が調理に興味を持ったのは必然だった。
私が最初に作ったのは、ポトフだった。料理本を片手に持ち、基本通りに具材を入れ味を付け、出来たのは、私以外は誰も食べないポトフだった。
当時は母が精神病院に入院し、高校二年生の私が台所に立たねばならなかった。
姉は観光ガイドの免許を取るため東京の神田のYWCへ通っていた。下に弟と妹が居て、食事の準備は私がせねばならなかった。
母が狂いだしたのは昭和四十二年の二月からだった。
当時の私は生き生きしていた。中学で野球部のキャプテンをし、新人戦で優勝するという離れ術をやったのであった。
当時の私は今のように思慮深くなく、ただ手足を動かしていただけだった。競技には、一切頭も神経も使わなかった。
それがために私は、走っても駄目・投げても駄目・守っても駄目な選手であった。
それが故に高校で野球をする気なぞなかった。勉強一筋に切り替えた。
二兎を追うものは一兎も得ずの言葉通りで、私の中学時代は失敗であった。私は不器用であった。とにかく肩と頭が弱かった。
それでも三年生の時は同学年が三百人居た中で三十三位であった。トップには、今も付き合いのある角がいた。
彼のその風貌から、私は大成する人物と見ていた。その頃では珍しく塾へ通っていた。父親が会計検査員という国家公務員であった。
その点私の両親は勉強にこだわる方ではなかった。それよりも倫理観に興味があるようだった。
先生に注意されたとき、母に報告すると愁傷狼狽するのであった。そんな日の翌日は、先生に米や落花生の付け届けをするのでった。
現代なら通じないだろう、そういう行為が当たり前のように行われていた。
三年生の大貫先生などは、それが当たり前のように喜ぶのだった。
その後何度か怒られたか知れない。母はその都度大貫先生に付け届けをするのだった。
ある日等は、体育時間を利用して学校周辺の林の中に入り、茸を採らされた。
一つの組が五十人と多かったにも関わらず、大貫先生はそれを全て自分の物としてしまうのだった。
まだまだ自然が豊かであった。それと同時に人の心も豊かであった。老人の数も多かったはずだが、今のような介護施設等無く元気であった。
問題があったのは、嫁と姑のいさかいであった。それが無ければ各家庭で寝たきりの老人を看病するのであった。
我が家でも祖母のくまがそうであった。五十代で脳卒中を患い、十年ほど寝たきりだった。
そんな時、新興宗教の信者が訪ねてくるのだった。我が家には創価学会員が毎日のように来ていた。
それを追い出せず、お茶等出すものだから、なかなか帰ってはくれなかった。
当時宗教について何の知識がなかった私にも、ナムアミダブツという唱和は良く聞こえた。
その学会員によると、寝たきりの人間も元気になるんだそうだ。その辺は、私には思惟があるわけでもなかった。
ほとんど毎日来て、祖母の枕元で「ナンミョウ、ホウレンゲイキョウ」と何遍も唱えるのであった。
母は嫌な顔を顔をするでもなく帰るまで接待するのであった。
当時は、そんな新興宗教の勃興期で、真光教や天理教が出来ていた。
天理教は中島ふくという老婆が教祖で明治時代に起こった柔術神考●で、大きくなりすぎて、今の天理市が育った。
中島ふくは、サリン事件を起こしたオウム真理教の麻原のような感じの人物である。
それが原因で床に臥している人達もいるという。宗教も一歩間違えると戦争にまでなる。
今でも中東ではイスラム教の派閥同士が戦っている。こうなると宗教ほど残忍な殺し合いは無い。
古くは、キリスト教でプロテスタントとカトリックの大戦争があった。
故に私は仏教を考える。
仏教だけが温和な宗教だ。だがその仏教にも一向一揆があった。宗教に溺れるほど悲惨なものはない。
宗教は、いつの時代でも手に負えなくなる。殺戮の繰り返しだ。
人間社会にも異常なら、自然界も異常だ。
天変地異が多すぎる。七年前は、東日本大震災があったが、今年は熊本大震災である。一年中、何処かで自然に勝てなくなっている。
当たり前だ。この宇宙を自在にしようとする人間の方に因果がある。あくまでも人間側にミスがある。
それに原子力等使おうとするから、破滅に拍車がかかっているのだ。
民族の戦いも凄まじい。私の最も愛した中川さんは、米国に留学したとき、「ジャップ」となじられたそうな。
イギリスへ行った池澤は、黄色人種と意思を投げられ、罵声を浴びたそうな。
今中国では漢民族化しいようとして、少数民族の生きる町に漢民族の起こした企業を送り込んでいるらしい。
中国では昔もあった。モンゴルでもあった。一民族が支配する等、到底不可能だ。
日本の北海道にもあった。アイヌ民族を駆逐した。今では数百人か居ないという。
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