ぼっちマスという名の悪魔の日
おとうふ
変わらない いつもの日
辺りにキラキラと輝くライト。幸せそうな雰囲気で歩く恋人達。今日は俗にいうクリスマスという日。恋人と過ごすなどというイベントは定職に付かずふらふらと毎日を過ごしてる俺に訪れることはないだろう。
いつものようにアルバイト先からの帰路でコンビニに寄り、煙草とビールを買う。煙草に火をつけ、煙を蒸しながら震える体で自宅に急ぐ。
自宅に着くと暖房とテレビを付け、上着を脱いだ。ソファに座り暖房の暖かさに眠気を覚えながら煙草を消して買ってきたビールに手を伸ばす。
彼女と別れてから二年。結婚も約束していたが振られてしまった。理由は俺の気分屋な所らしい。今更何を言っても変わることは出来ないがその別れ以降俺の生活は一変した。仕事を辞め、引っ越し、知らない街で暮らしている。親や友人は帰ってこいと優しい言葉をかけてくれるがこの街の雰囲気を気に入った俺は帰るつもりは無いと断った。この街の人は余所者である俺にも優しく察してくれる。近所のおばちゃんはよく夜ご飯をタッパーに入れて玄関に置いてくれるし、隣の親父さんはゴミの日に玄関を叩いて起こしてくれる。とてもいい人達だ。
テレビには何処も彼処もクリスマス企画という番組しかやっていない。時刻は20時。特に面白そうな番組も無いため、借りていた映画をつける。クリスマスとは関係の無いアニメの映画。恋愛映画を見て一人で項垂れるよりはましか。
ビールを一口飲みまた煙草に火をつける。恋人が欲しいという考えはもうしばらく持ち合わせていないが、こうも、周りがキラキラしていると自分が惨めに見えて仕方がない。彼女を引き留めることをしなかった自分が悪いのだが。別れてこの街に来たことは後悔はしていなかった。むしろ感謝すらしている。あの頃の自分は何かをしたいとも変えたいとも思うことは無かった。しかし彼女と別れて自分のやりたいこと、行きたい場所がはっきりと頭に浮かんで体が自然と動くことか増えた。確かにあの頃より金銭面的には負担は増えたが、心にゆとりができている。成長したということだろうか。
…来年は実家に帰ろうかな。
そんなことを思いながら少しだけ窓を開け、外を眺める。明かりの少ないくらい町の夜景を見ながら煙草を蒸す。それと交互に静かなこの街のツンとした冷たい空気で肺を満たし、ゆっくりと窓を閉めた。
また明日から変わらない毎日の繰り返しだ。飽きるまで続けてみよう。
白い雪が静かに降り始めた。
ぼっちマスという名の悪魔の日 おとうふ @otoufu0644
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
脆い心がバレないように/おとうふ
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます