改造人間は魔物に含まれますか?〜悪の怪人が異世界でまったり大陸侵略ライフ〜

東山ききん☆

0 悪の怪人の一生

プロローグ 東京都壊滅作戦!

 怪人エビボーガンの東京都壊滅作戦がついに始動した!


 東京湾の埠頭にてエビボーガンは正義のヒーローを待ち受ける!

 正義のヒーローは未曾有のテロリズムを食い止めることが出来るのか!?


「そこまでだ!怪人エビボーガン!」

 正義のヒーローが叫ぶ。

 一度はエビボーガンの卑劣なハサミ型ボーガンに敗れたが、不思議な力によって再起したのである。


「待っていたぞ。正義のヒーロー」

 エビボーガンは静かに答える。

 一度は正義のヒーローを倒したが、滝壺に転落した後、どれだけ探してもヒーローの死体を確認できなかった。

 その為、IQ160の高度な知能を持つエビボーガンは、必ずヒーローが復活すると信じて、東京湾埠頭で待ち構えていたのだ。


「エビボーガン!今すぐ東京都壊滅作戦を止めるんだ!」

「安心しろ。作戦を実行するのはお前を倒してからだ。それまでは東京都壊滅作戦は中断しているつもりだった」

 正義と悪。二人は宿敵同士だった。


 悪の組織最強戦士であるエビボーガンは、正義のヒーローを倒すことに拘っていた。

 それゆえに、組織の幹部カニトロ博士の命令に背いてまで、正義のヒーローとの決着を付けることを優先したのである。


「くっ卑怯な!先に俺を倒してから東京都壊滅作戦を再開するつもりか!絶対にそうはさせん!」

「さらに安心しろ!先週誘拐したお前の幼い妹のリカちゃんは安全な所に開放しておいた!」


 自分との戦いに集中させるため、エビボーガンはさらなる事実を告げる!

 それは、正義のヒーローの元から誘拐された妹のリカちゃん(7)を安全な場所に開放したという報せだった!


「リカちゃんを!?どういうことだ!!エビボーガン!!答えろ!!」

「俺は作戦よりも、お前との決着をつけたいと思った…!お前がリカちゃんに黙って正義のヒーローをしていることも上手く隠しておいた…!後は俺を倒すだけだ!」


 リカちゃんは、自分の兄が隠れて正義のヒーローをしていることを知らなかった。

 ヒーローとは得てして孤独である。もし、ヒーローの身元が明らかになれば、近しい人たちが危険に晒されるからだ。


 実際、前回の戦いではカニトロ博士がリカちゃんを誘拐した。そのせいで、正義のヒーローは卑劣な罠にハマり、滝壺に転落したのだ。

 自分の実力を過信するエビボーガンは、人質によってヒーローの実力が低下することを許さなかったのだ。


「エビボーガン!お前が組織に独断でそんなことをするとは!!先週は『エビビビビ』とか変な笑い方をする奴では無かったか!?」

「フッ…!アレはカニトロ博士の命令さ。だが、俺は俺だ。そしてこれが俺のやり方さ!!」


「…」

 両者は一時沈黙する。

 エビボーガンの行動は明らかな独断専行である。命令違反に等しい。

 だが、こんな馬鹿な真似をするほどにまで、エビボーガンは自分の力だけで勝てると強く信じていたのだ!!


「…いくらお前が自分の力に自信を持っていようと!俺の無限に溢れる生命エネルギーを叩き込めば絶対に負けん!行くぞ!エビボーガン!!」

「来い!怪人特有の特殊なボディは貴様の生命エネルギーしか通さん!!」


 東京湾を背景に、ヒーローと怪人が激突する!!

 ヒーローが走りながら緑色に光り輝く生命エネルギーを迸らせ、拳を怪人エビボーガンに叩き込む!


 しかし、甲殻類特有の固い外殻に包まれた肉体は生命エネルギーを通さない!!

「無駄だ!俺のエビ外殻は緑色の生命エネルギーを内部まで通さん!」

「くそっ!緑色の生命エネルギーが内部まで届けば、怪人エビボーガンといえども倒すことができるのに!!」


 ヒーローは腰のベルトに手をかざし、手元に銃を出現させる。

 手元に出現させた緑色の銃から、不思議な緑色の生命エネルギーが放たれる!!


「無駄だッ!俺の外皮は緑色の生命エネルギー以外の全てをはじき返す!!」

 エビボーガンが得意げに言うが、彼の身体に今当たっているのはまさにその緑色の生命エネルギーである。


 とはいえ、最強戦士であるエビボーガンのエビ外殻は非常に硬く、緑色の生命エネルギーといえども体の内部にまで届かない!


「くそっ!このままではラチが明かない!!」

「お前の緑色の生命エネルギーも今日で最後だ!!」

 勝ちほこるエビボーガンは右腕に接続されたハサミを開く!


 開かれたハサミの中にはボーガンが!仕込まれていた!


「ハサミ型ボーガン、展開!」

「くそっ!あのボーガンはマズイ…!」

 エビボーガンの誇る最強兵器、それがハサミ型ボーガンだ。

 ボーガンの矢はエビボーガンの体内で生成される赤色の月のブラッドストリームの力が流れている。


 その矢の威力は20tを超え、あらゆる物体を貫通する。

「死ね、今日が貴様の最後だ!」

「そうか、コレだ!!」

 ヒーローの脳裏に閃きが走る。


 エビボーガンのハサミ型ボーガンから赤色の月のブラッドストリームの矢が放たれる!!威力20tの矢が!!

 しかし、ヒーローは緑色の生命エネルギーを視覚に集中させると、驚異的な反射神経で矢を掴み取った!!


「何ィ!?」

「怪人エビボーガン!!お前の敗因は自分の実力に頼りすぎたことだ!!この矢を喰らえ!!」

 ヒーローは赤色の月のブラッドストリームの力と対を成す、緑色の生命エネルギーの力で矢を浄化すると、20tの矢をエビボーガンに投げ返した!!


 20tの矢はあらゆる物体を貫通する!つまり、エビボーガンの固い外殻もきっと貫通する筈だ!

「エビビビビ〜!」


 だが、威力20tの矢はエビボーガンの外殻に突き刺さらずに跳ね返った。

「エビビビビ〜!!」

「何だとッ!?」

 悪の怪人の肉体は!!正義のヒーローの緑色の生命エネルギー以外通用しない!!


 エビボーガンは最強戦士だ。

 その外殻も威力20tの矢にも耐えられる性能を誇る。

 しかも緑色の生命エネルギーも、量が少なければ耐えられる!

「馬鹿め、俺が自分の矢に貫かれると思…ギヤアアアアアア!」


 ヒーローの反撃を耐え切った筈のエビボーガンが突如苦しむ!

 一体何故か!?


「エビボーガン!俺がお前の矢に流し込んだ緑色の生命エネルギーの量は…そんじょそこらの量ではない!!俺の全身全霊の力で緑色の生命エネルギーの力を注ぎ込んだ!致死量だ!」

「しまった…!そうだったとは…!!」

 致死量の緑色の生命エネルギーの力を流し込まれたエビボーガンは全身から火花を散らしながら苦しみ悶える。


「そこだっ!無敵のエビ外殻に一点の隙を見つけたぞ!」

 勝機を見出したヒーローは無限に湧き出る緑色の生命エネルギーの力を全身から溢れ出させ、一足に怪人へ駆ける!


 そして低空跳躍!

「アロエキィーック!!」

「ギヤアアアアアア!!」

 ヒーローの低空ドロップキックがエビボーガンのスネに衝突する!!この痛みには流石のエビボーガンも堪えられない!


「馬鹿な…最強戦士の…この俺が…!!」

 エビボーガン敗れたり!

 いかに無敵の外殻を誇れども、致死量の緑色の生命エネルギーを流し込まれ、スネに低空ドロップキックを叩き込まれれば、心が折れる!!


 ヒーローは苦しみ悶えるエビボーガンを押し倒し、馬乗りになる。

「ここだッ!アロエパンチ!」

「エビビビビ〜!」


 緑色の生命エネルギーに包まれた拳がエビボーガンに炸裂する!

 しかし、パンチ一発だけではエビボーガンの固いエビ外殻を通さない!!


「アロエ連続パンチ!!」

「ギヤアアアアアア!!」

 ヒーローが拳をエビボーガンに…叩き込む!叩き込む!叩き込む!


 ヒーローが看破したエビボーガンの弱点。それは、耐久力が無くなるまで殴り続けることだった!!

「エビボーガン!俺の拳とお前の外殻、どちらが強いか試してやる!!」

「ギヤアアアアアア!!ギヤアアアアアア!!」


 30秒後、ヒーローのパンチが100発叩き込まれた時、圧倒的な負荷によって、ついにエビボーガンの固いエビ外殻が破壊された!

 エビボーガンの腹部が拳型に割れ、緑色の生命エネルギーを象った紋様が刻まれた!


 ヒーローがエビボーガンを無理やり起こし、蹴って突き飛ばすと、ベルトに手をかざして、手元に剣を出現させた!

「アロエソード!!」

「くっ…アレを腹部のアロエ紋様に突き刺されるとヤバイ!!」


 ヒーローはエビボーガンに一目散に駆け、緑色の生命エネルギーが迸る剣をエビボーガンの腹部に突き刺す!!

 エビボーガンは己の最強を証明せんとばかりに、防御不要!剣が突き刺さる!!

「ギヤアアアアアア!!」

「アロエキィーック!!」


 トドメの一撃だ!ヒーローのアロエキックがエビボーガンの腹部に突き刺さった剣に叩き込まれる!!

「ギヤアアアアアア!!」


 致死量の緑色の生命エネルギーを叩き込まれたエビボーガンは、自らの死期を悟ると、崩れ落ちずに仁王立ちになる!

「見事だ…!!アロエマン!それでこそ俺が認めた終生のライバル…!!」

「終わりだ!エビボーガン!」


 エビボーガンが敗北を認めて潔く散ろうとしたその時だ。

 道路に立つヒーローの元へ、一台の大型トラックが突っ込んできた。

「馬鹿な!?ここに来るまでに市民は全員避難させた筈だ…さては飲酒運転か!!」

 ヒーロー特有の察知能力で、大型トラックの運転手が悪質な飲酒運転の常習犯であることを見抜くと、ヒーローは迎撃態勢に入った!!


「仕方ない…アロエパンチで、トラックを止めるしかない!!」

「危ないッ!アロエマーン!!」

 しかし、アロエマンの前に瀕死のエビボーガンが立ちはだかる。

「ギヤアアアアアア!!」


 トラックに轢かれたエビボーガンは全身に火花を散らしながら、腹部は拳型に破壊され、緑色の生命エネルギーの紋様が刻まれ、剣が突き刺さっている。もはや助かる見込みは無いだろう。

 トラックは結局アロエマンがパンチで止めた。

「エビボーガン!!何故俺を助けるような真似を!!」

「フッ!…勘違いするな、俺は悪の組織の最強戦士。そんな俺に勝ったお前が、万に一つもあんなトラックなんぞに倒されてたまるものか。」


 アロエマンは必死の形相でエビボーガンの亡骸を抱きしめた。

「なら死ぬな、エビボーガン!お前はトラックに轢かれて死ぬようなタマじゃない筈だ!」

「アロエマン…あくまで俺に勝ったのはお前だ。俺は悪の組織の最強戦士、怪人12号エビボーガン。だが、次は必ずや…」


「こんなトラックなんかで決着がついていい戦いでは無かった!エビボーガンー!!しっかりしろ、エビボーガーーッンー!!」

「カニトロ博士だけが唯一の心残り…さらば…悪の組織バンザーイ!!」

 緑色の生命エネルギーが体内深くまで達したエビボーガンは大爆発した。


 直後…爆発の中から無傷のアロエマンがトラック運転手を背負いながら姿を現した。

「おのれ、悪の組織め…よくもエビボーガンを!!絶対に許さんぞ悪の組織!!そして、カニトロ博士!!」


 親友だった…敵同士ではあったが、戦いの中で認め合ったエビボーガンは、間違いなく親友だった。

 アロエマンはまた一つ悪の組織への深い怒りを覚えるのだった。

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