第405話 7月25日(日)高校生クイズキング選手権北海道予選~第4ステージ(ファイナルステージ)③


 僕たちはこの1分を利用して、自分たちが使う烏龍茶をコップに注いだ。それでもまだ30秒位ある。

 僕は周囲を見渡した。お店によって袋の大きさはマチマチだが、たしかにテーブルの上には8つの袋が置かれている。

「・・・確率8分の5か・・・どれがハズレなのかは食べ終わらないと分からないとは、まさに、ここでも『運』か・・・」

「猛、あたしが行こうか?」

「ああ、そうしてくれ。今日の美紀は神懸かっているからなあ」

「任せておけ!」

 僕と美紀からは、外野スタンドの上にある大型ビジョンが正面に見える。右半分は僕たちの真上にあるカメラからの映像で、各々のペアの所には、学校名と数字の『0』が書かれている。左半分は正面にある小型カメラや、周りのカメラマンが移している映像、お店に設置してある固定カメラの映像が数秒ごとに切り替わっている。

『すたーとお!』

 この声と同時に、4人が一斉に立ち上がった。美紀は自分から見て後ろのお店に行くと素早く1袋を掴み、再び席に戻ってきた。どの組も、戻ってきたタイミングはほとんど同じだ。

 美紀は袋を開けた。最初の料理は・・・サンドイッチだ。

 美紀は椅子に座るとサンドイッチが入っているビニルカバーを開封し、僕も開封した。入っていたのは、卵サンドとハムカツサンドだ。

(・・・さっきのリーダーの話の通りなら、この問題はパンに関する事か?それとも、卵やハムに関する問題か?それとも別の事か?・・・)

 やがて僕たちの右隣の室蘭大川高校の旗が上がった。このペアが封筒を開封した。

『あー、室蘭大川高校、いきなり「はずれ」を引き当てたー!』

 室蘭大川高校は早くも一歩後退だ。その次に旗が上がったのは僕たちの左、札幌星光高校の女子柔道部ペアだ。さすがに運動部だけあって食欲は凄まじい。

『札幌星光高校は「はずれ」ではなかったー。今、問題文を読んでいます』

 正面の函館ラムサール高校と僕たちのペアは殆ど同時に旗が上がった。

『あー!函館ラムサール高校も「はずれ」だあ。さあ、札幌時計台高校の方はどうだ!?』

 僕は祈るような気持ちで封筒を開けた。何かの文字が書かれてた。やった、これは「はずれ」ではないぞ。

(問題。サンドイッチの名前の由来となった貴族、サンドイッチ氏の『しゃく位』を漢字で書け)

 僕は素早くペンを取った。相変わらずではあるが、美紀はこの答えを知らないようで、首を横に振っている。

 僕は問題用紙の下に2文字の漢字を書き込んだ。この問題の答えは「伯爵」だ。いきなり雑学の、しかも国語とミックスした問題だ。

 これを書き終えると美紀は僕から用紙を奪い取るような形で素早く立ち上がり、さっき買い物をした店に行き、この問題用紙を渡した。そして、店員さんが『〇』と書いた札を上げた。やった、1ポイントゲットだ。

『さあ、札幌星光高校と札幌時計台高校が早くも1ポイント上げました。先に2ポイント目を上げるのはどっちだ』

 そのまま美紀はその左の店に行った。そして、素早く1袋を掴むと走るようにして席に戻ってきた。

 今度の料理は・・・フライドポテトだ。

『さあ、室蘭大川高校、再び旗があがったぞ、今度は大丈夫か?』

(・・・フライドポテトというからにはジャガイモの問題なのか?ジャガイモの花に関する問題か?それとも、品種に関する問題か?あるいは、19世紀のアイルランドを襲った、いわゆるジャガイモ飢饉に関する歴史問題、それに波及したアメリカ移民問題か、それともジャガイモ原産地である、インカにまつわる問題なのか・・・シンプルすぎて悩むぞ。逆に料理に使う油に関する事とかだったら、どういう問題になるのだろう・・・)

 旗が上がった。僕は素早く封筒を開封した。今度はどうだ?・・・やった、今度も問題文が書かれている。

(問題。ポテトチップスやフライドポテトに使われるジャガイモは、普通、男爵やメークインではなく『トヨシロ』という品種を使う。では、なぜ『トヨシロ』を使うのか答えよ)

『あー!、札幌星光高校、2問目は不正解だあ。1ポイントのままだあ!』

 これは、農業の分野と料理の分野を合わせたような問題だ!

『室蘭大川高校、函館ラムサール高校もほぼ同時に1ポイントをゲット!、これで全チーム横並びだあ』

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