僕は普通の高校生活を送りたかったのにMIKIが引っ掻き回して困っています
黒猫ポチ
第1話 プロローグ 8年前
・・・あれは、北海道ニセコ町のスキー場での出来事だった・・・。
・・・そう、あの時、僕はまだ小学校1年生だった・・・。
「・・・これは本当にヤバイかも・・・」
何しろ僕はどこにいるのか分からない。冬山の天気は変わり易いとは父さんがよく言ってたけど、さっきまでの快晴が嘘のように吹雪いてきて、自分の位置が分からないのだ。視界はせいぜい1m位。距離感も、方角も全然分からない。あまり広いコースではないが、それでも20m以上のコース幅はあったはず。山の上からの吹き降ろしの風だから、風下に向かって進んで、そのコースの端にあるロープを目印に進めば・・・でも、場所によっては雪を盛り上げているだけの所もあったから、下手に動くのは危険だな。そう思って、10分位、ここでじっとして動かないでいるのだが・・・。
「姉ちゃんたちは大丈夫だろうか?」
などと人の事を心配している場合ではなかった。まったく、こんな時に呑気な事を言えるなあ、と少し自分でも感心した。段々と心細くなっていくのが自分でも分かる。
でも、僕はそんな素振りを見せる訳にはいかなかった。何せ、隣には僕と同い年の女の子がいる。スキーはほぼ初心者といっていい子の前で弱音を吐く訳にはいかなかった。
「・・・・・」
さっきからこの子は何も言わない。でも明らかに泣きそうなのを必死で耐えているのが分かる。だから、僕は嘘でもいいから励まそうとした。
「大丈夫だよ。山の天気は変わり易いっていうし、それに、ほら、ここは迂回コースとはいえ正規のコースだから他にも滑っていた人も多かっただろ?きっと誰か滑っているだろうから、そんなに心配しなくてもいいよ。」
「でも、もし誰も見つけてくれなかったら?それに、みんなが心配しているはず」
あ~あ、こいつ、本当に涙声になってる。いつもは僕よりも男っぽいのに、こんな時に限って女の子になってる・・・。まあ、これでも正真正銘の女の子だけど。
「大丈夫!絶対大丈夫!!僕がいるから大丈夫だよ。僕が君を守るから!」
などとやたら強気な事を言っている僕も、本当は泣きたかった。
その時、この子が何かを言った。でも、吹雪いてるからうまく聞き取れない。
「な~に?聞こえないから、もう1回、大きい声で言ってくれないか?」
すると、この子がぴくっと肩を震わせて、こっちを向いてゴーグルを外した。何か先程までと違い怒ってるような戸惑っているような、何とも言えない、少し真顔で僕を見た。
「じゃあ、もし………かえ………たし………さん………ってや………」
あ~、風のせいでうまく聞き取れないや。でも、もう1回言ってなどと頼んだら、今度こそ怒るだろうなあ・・・。
「うん、わかった。約束しよう。だから、一緒に頑張ろう!」
あの時、あいつは、何と言ったのだろうか・・・。
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