異世界人生は運ゲーだと誰が決めた?

秋野シモン

プロローグ

あれ?ここはどこだ?


俺は真っ白い部屋のような場所で、一人の美少女と向き合って座っていた。

部屋といい勝負なくらいに白く透き通った肌。艶のある金髪に、空色の目。ゆったりした神官のような服の上からでも、スタイルがいいのがわかる。

女神発言も納得してしまいそうな容姿だが、なぜだろう、すごい残念なオーラを感じる。


「こんにちは、佐々木 妃ささき きさきさん」


なぜここにいる?


「残念ながら、あなたは死んでしまいました」


どういうことだ?


「事故によって、あなたはその短い生涯に幕を閉じたのです」


俺が、死んだ?確か最後の記憶は、トラックとバナナ。バナナ?


「あなたはトラックにはねられました」


そうか、俺はトラックに引かれて死んだのか。


「そのときはまだ生きていましたが、よろけた拍子に偶然開いていたマンホールに落ち」


そうか、俺はマンホールに落ちて死んだのか。


「中に落ちていたバナナの皮で足を滑らせて転倒、頭を強打して絶命しました」


おい、俺の死因バナナじゃねぇか。


「ププ...本当に...残念で...クスクス」


この人を殴りたい僕はおかしいのでしょうか。


「とにかく、私は女神ハピネ、これからあなたには、二つの選択肢のうちどちらかを選んでもらいます」


なんか目の前の残念美少女がどんどん話を進めているんですが。

何?女神ハピネ?この人大丈夫?


「一つはこのまま成仏して、天国的な場所で定年退職後のおじいちゃんみたいな生活をする」


例えはおかしいが、死んだら天国。おかしい話ではない。


「もう一つは、記憶を全て失い、頭カラッポの赤ちゃんとして生まれ変わり、人生をやり直す」


表現はおかしいが、死んだら生まれ変わる。こちらもよくある話だ。


だが、正直言ってどちらも乗り気ではない。なんとなく嫌だ。


「他に第三の選択肢とか無いんですか?」


「お、初めて喋りましたね。えぇ、ありますとも第三の選択肢。というか、私としてはそちらが本命です」


じゃあ最初から言えよ。


「あなた、ゲームとか好きですか?」


「え?まぁ、好きですが」


実を言うと、大好きである。なぜなら生前の俺は、半分引きこもりだったのだから。


「実は、とある世界が悪しき魔王に苦しめられているの?」


「ほう?」


「その世界にはモンスターや魔法が存在するのよ」


「ほほう?」


つまり、異世界の魔王を倒してその世界を救う、定番の異世界転生ストーリーだな?


「どう?」


「行きましょう異世界。救いましょう異世界!」


「そうこなくっちゃ!」


「で、どうすれば行けるんですか?」


「あぁ、それはこちらにお任せください」


なるほど、手続きとかもろもろをそっちでしてくれるのか。と思ったら、俺の下にいきなり魔方陣のようなものが現れた。


「さぁ、異世界へ行きましょう!」

「いやいきなり過ぎるだろ!」


俺の視界は、白い光に包まれていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る