⒋ 姉弟(2) 天眼
斬月は死んだ……そう、死んだ筈なのだ。
それなのに………
気付けば、彼女は目を開けていた。
不思議そうに、斬月は周囲に目を走らせながら口をゆっくりと開き出す。
「……
何が何だか……どうやら自分の死の記憶が斬月の意識として残っているようであり、自分が今存在するこの真っ白い空間をこの時代の浄土信仰の教えに聞く《極楽》という存在――、つまりは【
だがこの場所に関する
斬月は目を
否――、パッと見では纏ったように見えたと言ったところだろうか。
これまた良く見れば、衣服と身体が同化しているかのようにそれら二つを遮る一切の分かれ目が存在しないように見える。
今とは雰囲気が異なり、その当時は右目を覆い
更には髪型も今とは違い、ポニーテールヘアーではなく、右側にのみ束ねられたワンサイドアップな髪型をしていた。
すぐに視界からはっきりと少女の姿が
「……
斬月の格好を見て、日本人だと思ったヘアムは、彼女に合わせて言語の調整確認をした。
「………
ここで何を言っているのかと
問題ないと判断したヘアムは、初対面の斬月にその名を告げる。
「……良きに口上伝はりて其れ嬉し……こは、失敬。
「……へ……あ……む…………?」
「左様に、極楽昇らう亡者の
「………女……神……様………………」
言葉のニュアンス違えど神なる答えに変わりない、奴の正体に関するその答えを聞くや否や斬月は、わなわなと唇を震わせ……
「よ、よもや
……な、なんと
これまた
「……
「其の通りで候ふ」
「
「さ、
「なに、我が案じたらずと申せるなり。何も恐るゝことあらず」
「そこまで仰らば…………」
そう言って斬月が折れ、素直に堅苦しい言葉を止めることとした。
「……時に、他の亡者の存在見当たらねど…………」
斬月は気になる謎を口にする。
ヘアムは答えた。
「祖の神より生まれき二十三座
手の空きし者より一様に一対一して亡者への
「
斬月は次の謎をヘアムをぶつけた。
「……亡者
「
「……
その通り、返事なら最初から決まっておる。
ずばり、其方が選択するのは…………
「
「……
ヘアムは予想外の返答を聞かされ、驚き以上に
これまで担当してきた死者の中に、彼女と同じ答えを出した者が一人としていなかったからである。
どんなに善人ぶった人だろうと、自分の魂が失くなると聞けば、怖がったものだ。
彼女の考えが知りたい。
斬月は答えた。
「……生くる
其の、
「其れ
「二つ合わせ、我が
「
……時に其のやむごとなき人とやら、
斬月はコクリと
「忍
(暗殺)対象始末することに成功せるものの、
斬月がそこまで言うと、ヘアムは分かったように口を開いた。
「
「―――ッ!」
この瞬間、斬月の中で何かが変わった。
(
私めなどの
「……わ…………いき…………」
「何か
斬月が何かを発したようだが、小さすぎて聞き取れなかったヘアム。
「……我………
「其れまことの
コクリと静かに
「其の意気やよしに然る覚悟持ちて
何か意味有りげにヘアムはそう言って、フッと手元に二つの眼球、それも普通のものとは異なり半透明状の眼球をどこからともなく出現させた。
「其の……
「そは凝縮されき生く
これなる名を『
「『
「左様なり。
勝負や一度きり、腹括るお覚悟
一度きりと言われ、霊体にある筈のない心臓がドクンッと激しく動悸するのと似たような感覚があると錯覚してしまうくらいに、妙な緊張感が彼女を襲った。
果たして、自分に耐え抜くだけの強さがあるのだろうか?
私めなど……私めなど……私めなど……私めなど……私めなど……私めなど……
斬月の心の中が負のオーラ
『無用ならぬや、姉者。相変はらず、其ればかり言へれば。
きっとこれも錯覚だ。
精神が不安定の状態だったのだ。
斬月が描く乱月の幻想の声が、幻聴が聞こえてきても、
だが錯覚であろうとなかろうと、その言葉が彼女を落ち着かせ、そして救った。
「……
斬月は小声でその声に感謝を告げると、彼女は真に決意を決めたのだった。
「
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[あとがき]
ちなみに色々と話題になる地球温暖化ですが、実は約1000年前、およそ平安の時代も現代と同じように温暖化していたと言われております。
それも現代より温暖化であったとも聞きますし、恐ろしいですね。
それと神眼で決まる前に候補としてあった名称をまさかこういった形で出すとは思わなんだ。
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