⒊ 視忍(9) 悪夢と向き合う決意

 布都部島のとある海岸通りにて――


 神眼狩りを終えた悠人たちは夜の海をながめながら、物思いにふけっていた。


「なあ、未予。一体、俺達は何をやっているんだろうな………。他人の目を奪い取って生き残りを賭けたゲームだとかなんとか、完全に従ってちゃっていてさ。

 元は死んだ人だからあやめても問題は無いとか、そういうことでも無いってのに……………」


「君は昨夜、覚悟を決めた筈よ。どんなものにも何かを成し遂げる為には、それ相応の犠牲が付きもの――………

 それは時間であったり、心の持ちようであったり、このゲームにおいてはそれが、《神眼者ヒトの命》であるということ。

 ……正直、このゲームがいつまで―、なんて明確な期間が断言されていない以上、貴方には色々思う気持ちが大きいでしょうね……………

 けれども、あの神様も口にしていたように、これをあくまでも『ゲーム』だと言うのなら――そこには必ず、終わりとなるものがあると言うもの。

 この悪夢を終わらす為の、デスゲームをエンディングへと導くのよ」


「……ゲームにはエンディングが付きもの…………ってやつ、か。そんな素敵な考え方もあったんだな。

 そっか………そう思うとこれからのゲームも、どうにか乗り越えられそうな気がするよ。……………ありがとうな、未予」


「そう、それなら良かったわ」


「なんか……悪いな、ここのところ似たような事を口にしてしまって」


「気にしないで。だって私たち、共に闘う仲間じゃない」


「未予、お前………」


「それより早く、妹さんの元へと戻らなくて良いのかしら?今頃、心配しているかもしれないわよ」


「げっ……、そーだったッ!あいつのことだ。ちゃんとしたものを食ってないに違いない。わりぃ、未予。さっきは相談に乗ってくれて、ありがとう!

 さっき言ってくれた言葉のおかげで、何か俺にも一歩を踏み出す勇気が出た気がする。それじゃあまた、明日学校で!」


 それだけ伝えると悠人は慌ててその場から走り去り、未予と別れた。


「……これで彼も、本格的にスタートしたと言ったところかしら」


 人のいない静かな海辺で彼女は一人、何やらそう独り言を呟くのだった。

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