特別編 樹希視点
朝起きると、紅音はいなかった。
朝になるといつも来てくれる紅音が今日は来なかった。
放送で紅音の名前が呼ばれて頭が真っ白になった。
そこから先の記憶が曖昧でよく覚えてはいない。
会議が終わって航平に呼ばれハッとした。
航平に心配されたが、一人にしてほしいと、言って一人にしてもらった。
航平には水咲のそばにできるだけいてほしいから。
一人で外に出るのは初めてだ。僕の性格は皆から心配されることが多いから、紅音がいつもいてくれる。たまに航平も。
靴を履き替えようと下駄箱に行き、靴を履き替えようと思って靴を取り出すと手紙が出てきた。
こんな状況でなんで手紙。誰からだろうと、思いみるとそれは紅音からだった。
僕は手紙の内容を見なかった。今見ちゃだめだ。きっと航平にも水咲にも心配される。そう思って手紙をポケットにしまった。
僕は紅音と一緒に歩いた道、一緒に行った場所を思い出を思い出しながら歩いた。
そして紅音たちと来た喫茶店についた。
ここでケーキを食べて紅音は幸せそうだった。あの笑顔が最後になると思ってもいなかった。
喫茶店に入りケーキを食べた席に座り紅音からの手紙を読み始めた。
『樹希へ
読んでいるということは樹希の隣にいないということだね。
疑われて追放されることはなんとなくわかってたんだ。
だって凜々花ちゃん相手じゃ勝てないもの。でも、樹希にひどい死に方
見せなくて済んだと思えばいいと思ってる。でも、正直死ぬのは怖い。
もう樹希に会えないと思うと寂しい。死にたくないよ。でも仕方ない
ことだよね。最後まで言えなかったことがあるの。樹希には隠し事は
してこなかったけどこれはずっと隠してたこと。私は樹希が大好き。
初めてあった時から大好き。生きてる前に言いたかったけどね。
そしてお願い。私の分まで生きて。私より素敵な人見つけて幸せにな
って。樹希は天国とか信じてないかもしれないけど、長生きして
おじいちゃんになってから天国へきて。そしてあったこととか話して
一緒に過ごそうよ。できなかったことたくさんしよう。だから、樹希は
生きて、生きて、最後まで生きて。それがお願い。
水咲と航平たちと一緒に生き延びて。幸せになって。
紅音より』
最後のほうが涙でぼやけて読みずらかった。でも、紅音からの最後の手紙。なんで言ってくれなかったんだよ。僕だって好きだったのに。一人で言って思いが通じ合ってないよ。一人は寂しいんだよ。いつも一緒にいたのに一人にしないでよ。紅音より素敵な人もいないし紅音以外好きになれないよ。紅音がいないと幸せにはなれないよ。・・・紅音に会いたいよ。
なんで言ってくれないんだよ。寂しいじゃん。
僕は暗くなるまで喫茶店で泣いた。
建物に戻ると航平と水咲が心配して玄関まで迎えてくれた。
フッと後ろから紅音の声で「バイバイ」と聞こえた。
そこには蛍しかいなかった。
人狼げぇむ 螢奏 @aozolaoka
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