第11話

              ある夏の日々


            八月のうんざりした一日

アメリカ・ABCニュース 警官による万引きをした黒人青年射殺について

人権活動家「彼は武器も持たない人間を撃ったんだ。我々は断固として正義による裁きを要求する。」


フランス・F2 イラクにおける過激派と政府軍の先頭について

キャスター「フランス政府はイスラム過激派に対抗するためにイラク政府軍に機関銃を供与することを決定しました。」

イラク政府軍将校「彼らを殺すことは嬉しいさ。それが祖国のためになるのだから。」


スペイン・TVE ウクライナの内乱について

親ロシア派住人「彼らウクライナの人間の言うことなんて信じるな。」


「彼らは武器も持たない人間を撃ったんだ。我々は断固として正義による裁きを要求する。」

「彼らを殺すことは嬉しいさ。それが祖国のためになるのだから。彼らの言うことなんて信じるな。」

「政府は機関銃の供与を決定しました。」




            ヘラクレス第十三番目の難行

 夜中にカブトムシを捕まえてきた。近所の子供にあげようと思ったのだった。一夜限りの付き合いだがカブトムシにヘラクレスと名前を付ける。

「おい、ヘラクレス。明日になったら子供のところに連れて行ってやるからそこで可愛がってもらえ。」

 ヘラクレスは箱の中でこそこそ動いていた。

 翌朝、箱の中を見るとヘラクレスがいなくなっている。忘れてた。カブトムシは脱走するのだった。でも必ず近くにいるはずだ。その予想は当たった。


「近所のホーム・センターに行けば飼育セットが売ってると思うんで、それに入れて食べ物を与えておけば長生きすると思いますよ。あと昆虫って意外と湿気が必要なんでたまに霧吹きで水をやって下さい。」

 奥さんに簡単な説明をする。


 しばらくしてその家の前で奥さんに会ったのでヘラクレスの近況を聞いてみる。すると奥さんがヘラクレスの入ったケースを持って来てくれた。ケースの蓋のさらに内側に脱走防止用と思われる内蓋がしつらえてある。その中でヘラクレスが湿地帯を這っていた。






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