后羿(こうげい)の矢
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四凶を倒すには、
「ガイアに頼めば
「冥府を治めているハーデス様ではなくてもいいのですか?」
「同業他社というのは神の世界でもライバルだ。そのようなことをハーデスに頼んでも無駄だな」
うーん、信仰が薄れたせいで、亡者の奪い合いとかあるんかね?
それとも冥府環境の善し悪しみたいなもので?
ま、争いにならなきゃどうでもいいんだけどさ。
「ではガイア様に頼めば
「大丈夫だろう。お前の準備が整い次第クロノスと黄泉へ行けば良い」
「では
「良いぞ。他の神には我から伝えておこう。
それだけ言うと、
崑崙を離れてわざわざ来てくれたのに、お礼らしいこともモテナシもできなかったな。
全てを終えたら、改めてきちんとお礼しなくちゃいけない。
どこのお大尽なんだか判らないような態度で、ソファにふんぞり返ってワインに舌鼓を打つゼウスを苦々しく感じる。
だが、
「ゼウス様、
「フフフ……日頃他国の神々と交流してコネを作っているからな。いつも遊んでいるわけではないと理解するのだぞ」
ワイングラスを回しながら、なんか偉そうなことを言ってる。
呑みニケーションが大事と言う昭和のサラリーマンみたいだと思ったが、ま、黙っていよう。
「ではガイア様と連絡をとり、
ヒュッポリテにワインを注がせながら、片手を振って「おう!頑張ってこい」というゼウスの姿はチャラい。
ウール布を纏っていながらもピシッとしたヒュッポリテが、スナックのホステスのようにしか見えないじゃないか。
ジョゼフ達と雑談しているため、この場には居ないヘラにお礼をとヒュッポリテに伝え、もう一度ゼウスに頭を下げて居間から去った。
家に戻ると、皿に満たされたバーボンを、居間の床でペロペロと舐めているクロノスを見つける。
「戻ってきたか。それでどういうことになったのだ?」
四凶のこと、
「なるほどな。それでガイアと連絡をというわけか」
「……逃げるなよ?」
「今ではガイアともうまくやってるぞ」
確かに、ガイアが訪問するたびに逃げ出すことはなくなったが、たまに隠れているからな。
気まずい気持ちは残っているのだろう。
皿のバーボンを舐め取り、こちらに目を向けているクロノスの尻尾は動いていないしねぇ。
「そうだといいんだけどな。とにかくだ。明日から黄泉へ行くことになるだろう」
クロノスの前の床に座り、台所のネサレテに声をかけ、「皿にバーボンを注いであげて」と伝える。
「なんかさ? デイモスだけでなく、悪神まで倒すだなんてクロノスと会ったときはまったく想像もしていなかったよ」
「怖くなったか?」
「ああ、怖いさ。だって相手は神なんだぜ? 半神になったと言っても、アレス達から訓練されたと言ってもだ? 俺はもともと平凡なおっさんだった。デイモスだって今も怖いしな」
「案ずるな。お前には我もテューポーンもついている」
「駿介さん。私とベアトリーチェも居ますよ? 怖いのは一緒ですけれど、一人じゃありませんから」
酒瓶を手にして、クロノスの横に座り、ネサレテが励ましてくれる。
「そうだな。でも、ネサレテとベアトリーチェまで戦いの場に連れて行きたくないんだよ」
「あら、私達は対等じゃないんですか?」
「そうなんだけどさ? やっぱり……戦いには、大事な奧さん達を連れていきたくないじゃないか」
「大事な旦那さまを一人で戦わせたくないですよ? 私達も、できることがあれば手助けしたいんです」
俺にグラスを手渡し、バーボンを注ぎながらネサレテは微笑む。
優しい奧さんに、頼りになる旦那だと思われたいよなぁ。
……ま、今は、できることを精一杯やるだけだ。
※
射日神話にあるように、十の太陽のうち九つを打ち落としたため神籍を外された弓の名手。
太陽を減らしたせいで、神の一人の怒りを買い不老不死ではなくなる。
そのせいで、弟子の
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