counterattack02-10
C国大使館を半壊させたあたりで、クロノスを抱いて牧場まで戻ってきた。
家へ戻ると、武田、ライト、ミハイルがTVのニュースを観ながら待っていた。
「派手にやりましたねぇ」
ニヤリと笑うライト。
「やりすぎじゃないのか? 今頃、内閣府、外務省などでは対応に大騒ぎになってる」
深刻そうな武田。
だが、そんなこと知ったことではない。
適当に誤魔化すのは得意だろうよ。
「事前の警告や、各国との申し合わせに反したのですから、この程度はいいんじゃないですか。まあ、私達が手を出した方が表面的には大人しかったかもしれませんね。正面から突っ込むとは想像していませんでした」
他人事のミハイル。
神の力を借りて、陰で行動すると考えていたようだ。
でもな?
俺がいつでも大人しく事を治めると考えて貰っては困る。
C国には敵がいることを周知させ、C国自身が隠しようのない状況の下で恥をかかせてやることもあるんだ。
三者三様の反応を見てから、俺は言う。
「大使館半壊程度で済ませるつもりはない。明日、C国の軍事施設がどうなるかな……」
「つまりこれは前哨戦だと?」
俺がしでかした事件のニュースを面白そうに見ていたライトが訊いてきた。
「ああ、そうだ。やると決めたら、C国が考えを改めるまで徹底的にやる」
「まあ、国内でなければ構わないが……」
あくまでも「我が国の責任にならなければいい」と言いたげに武田がつぶやく。
「……この機に乗じて、C国に戦争仕掛けても面白いですね」
「そんなことのためにC国の施設壊すわけじゃないぞ」
「ええ、冗談です。それでも現状の国家間の軍事バランスが一時的に崩れますから、ほどほどにしといて下さいね」
「ああ、これ以上私や関係者に手を出すようなら保証しないですけどね」
この状況を面白がっているミハイルから、常識的なことを言われても説得力がない。
「この事件は各国の知るところになる。今頃、玖珂さんを捕えようと考えていた国は冷汗流してます。この件では、未知の危険な武器を持つ、C国に恨みがあるテロリストの仕業として、各国は非難声明を出すでしょう。ですが、今回の件で実際に動く国はC国の他にはないでしょうな」
「動いても構わないが、その先どうなるかは想像に任せます」
特に気持ちを込めたつもりはないが、俺の言葉に武田が焦ったように目を開く。
今回の事件のようなことを起こさせたくなければ、C国が俺達を狙ったようなことのないよう国内の安全保障もしっかりやればいい。
それができないなら、後始末で苦労するくらい諦めて受け入れるんだな。
「大丈夫ですよ。今回の件は根回しが済んでます。我々も国には報告しています。玖珂駿介と関係者には我々はどうすることもできないとね。どうにかできる可能性があるなら動くでしょうが、そんなものは見当たらないのですから無謀なことはしませんよ。我が身可愛い……保身に汲汲としている方達ばかりですからね」
「ミハイルの言う通りです。A国でも、玖珂さんはアンタッチャブルな存在としてカテゴライズされています」
「この牧場で平和に暮らせるなら、私は何もしない。……あなた達が決めたように、各国間の関係に影響するようなことはしない」
俺の言葉に納得しているかどうかは判らない。
だが、ここに居る三名は、俺の言うことに嘘はないと感じているように見える。
……まあいい。
本心かどうかはこれから判ることだし、今、考えても仕方がない。
俺は俺の持つ力を見せつけるだけだ。
「駿介」と俺を呼ぶベアトリーチェの声が玄関から聞こえた。
俺はまだ
「戻って居たのね。……怪我は……ないようね。良かった。羽田梨奈はへラ様のところでアスクレピオス様に治療して貰ったわ。今は寝ているから、会うのは明日にしたほうがいいと思う」
「判った。ありがとう。ベアトリーチェもお疲れ様」
「……彼女、暴力振るわれて、身体中怪我してた」
「……そうか……んじゃ、明日はその分も仕返ししてこなきゃな」
「そうよ。思い知らせてきてね」
「ああ」と返事した俺に笑顔で手を振り、「先に休んでいるわ」とベアトリーチェは自室へ向かった。
「そういうことなんで、明日は二カ所ほど叩いてくる。すぐ終わる作業だ。午前中には報告するよ。あ、一応、人的被害は出さないようにする」
ベアトリーチェの姿が消えたところで、三名に伝える。
「判りました」と三名それぞれが畏まって返事し、各自椅子から立ち上がって家を出た。
俺も風呂に入って、既に休んでいるはずのネサレテの横に潜り込むとしよう。
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