disclose01-05
「我はアレスとしばらく目の保養してから戻る」
そう言うゼウス達を海辺に置いて、俺達は帰宅することとした。
人間の目に映らないからと好き勝手しなければいいけれど……
帰宅し、へラ達もそれぞれの家へ戻ると、今日ゼウスから聞かされたことを考えていた。
「そう気にするな。ゼウスも言ったように、今のおまえを傷つけられる者などおらぬのだ。我もへラも居る。ネサレテとベアトリーチェの二人の半神も居る。今まで通りにしておればいいのだ」
「そうなんだろうがな、簡単に気持ちを切り替えられないんだ」
玄関先に常時置いてある、白いテーブルと椅子。
その一つに座り、牧場を眺めていた。
もう日が暮れているから、ペット達は屋内へ連れ戻されている。
そろそろ夕食でも与えられているのではないか。
「駿介。ここに居たのね」
駒姫とおさなを寮へ帰して戻ってきたベアトリーチェが隣の椅子に座った。
「私達が遊んでる間のことはネサレテから聞いたわ」
「どうしたらいいんだろうな?」
俺の膝に手を置き、じっと見つめてきた。
「ねえ? 私がここに居て嬉しい?」
「もちろんだ。ネサレテとベアトリーチェがそばに居てくれるから、だからもう止めてもいいかなと思ってるんだ」
「じゃあ、駒姫は? おさなは? ジョゼフとシャルルは?」
「そりゃ元気な様子が見られて嬉しいよ。だけどさ……」
指を俺の唇にあてて言葉の続きを遮る。
「だけどさ……じゃないの。駿介がよく言うように、辛い目に遭った人達を全て助けられるわけじゃないわ。助けられない人のほうが全然多いわ。ペット達も同じよね。でも、少しでも救える命があるなら助けるのが、私の愛するあなたなんだわ」
買いかぶりすぎだ。
俺は興味本位で始めただけで、高尚な目的などもっていない。
「そんな偉い人間じゃないよ、俺は」
「偉いかどうかなんかどうでもいいの。得にならないことでも、やれることを少しでもやってきた。それでいいのよ」
今度は俺の頬に柔らかな手をあてる。
じんわりと温かさが伝わってくる。
その温もりの優しさが嬉しくてちょっと泣きそうな気持ちになった。
「続けた方が良いと?」
「そうね。結局は、駿介と私達の自己満足にすぎないかもしれないけれど……。ネサレテも私も、
ふいにチュッとバードキスし、その後も俺を見つめている。
ブラウンの瞳が、大丈夫よと、一緒に頑張りましょうと、そう言っている。
……そうだな。
俺の気持ちはどうあれ、結果はベアトリーチェの言う通りなんだろう。
「あはは、ちょっとビビってしまったな。情けないとこ見せてごめん」
「何を言っているのよ。私達は家族よ。どんなあなたも受け止めてあげるわ」
「ありがとう」
ベアトリーチェの紅い唇を吸い、白く柔らかな頬にもキスをする。
優しい香りと温かさに気持ちが落ち着く。
「元気出た?」と、俺を覗くように訊くベアトリーチェを軽く抱きしめたあと離す。
「ああ、ありがとう。さあ、ネサレテが待ってる。夕食を楽しもう」
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