第82話 サグレイ
クルドの飛行能力で行けば、直ぐにそれらしき島には辿り着いたが、島への上陸の方法が解らなかった。島は周囲一キロも無く、島の中心に聳え立つ山は三千メートルはある。つまりは海に岩のコーンが立ってる様なものだった。
「こりゃダメだな。入れないよ」
「クルド、あの山燃やそうぜ。でも穴が空いて、海の水がなかに入ってしまうと、怒られないかなあ。どうしようか」
「いいんじゃない。どうにかなるよ」
クルドと言い合いをして居ると、「ちゃんとせんとダメだぞう」と海の中から聞こえて来た。
「えっ。アキオ何か言った」
「さあ。俺は何も言わない。さあ、あの島を燃やしてしまおう」
すると、さっきよりももっと大きい声がする。
「ダメだって言ってるじゃないか」
「ダメだって言ってる様に聞こえるよ」
「クルド、俺にはそうは聞こえんぞ」
「どう聞こえるの」
「島を割ってみせよ」
「えっ!本当に」
「そうさ。きっとこの島から出たいのさ」
「何勝手なこと言ってるんだ!入りたければ、水の波動を使い水を動かせ。島の周りの海を動かせばできるだろう。全く、あまりにしょうもないこと言ってると手加減せんぞ」
「アキオ、怒ってるよ」
「イヤイヤ。歓迎してくれてるんだよ」
クルドはクリシュナゴーンに与えられた水の波動エネルギーを使った。
「どうだろう。こんなもんでいいのかな」
島の周りは海の水が引き、島に周りには千メーとの高さに海水がそそり立って居る。
「おい、クルド、ちょっと上に飛んでみろ」
クルドが飛ぶと海がポコッと穴が空き、島の周りだけ何もなくなっていた。
「これで良いんだろうか」
「クルド。こんなもんだろうぜ。さあ、行こう」
島の周りを飛ぶと、確かに海面すれすれの所に大きな横穴があった。
「ここだろうか」
「そうだな。ここで正解だろう」
クルドと一緒に入って行くと、奥の大きな空間に青い一匹のドラゴンがいた。
「おい、お前たち何しに来た」
「おい、クルド言えよ。君から頼んで見たら」
「さあ、言って見たまえ。聞いてやろう」
「そうですか。ザグレイ様。聖印を下さい」
「えっ。なぜ知って居る。誰から聞いた」
「え〜。誰って言われましてもですね。みんな知ってますよ。海のザクレイって」
ザクレイは複雑な顔をして困っていた。
「この一千年誰も来てはせんのだが。そんなにわしは有名か?」
「ええ、有名です」
「おかしいなあ。この前ダイカングーンにあった時、そうは言ってなかったがのう」
「いつの事です」
「そうだな。八百年ほど前かな」
「そりゃぁ、前過ぎますよ。昨日は有名だったんですから」
「ぬ!そりゃ何か。キャツが喋ったのか」
「サグレイ様、ここだけの話ですよ。誰にも言っちゃだめですよ」
サグレイは余りのことに腹を抱えて笑い出した。
「ワハハハハ。そうか。そうか。分かった分かった。渡そう」
サグレイは物分かりの良いドラゴンだった。クルドに聖印を直ぐにくれた。
「サグレイ様、この聖印は何で出来て居るの」
「ああこれか。なんでできていると思う?」
「クリシュナゴーン様は水。ダイカングーン様は岩。だったら海の水?」
「ハハハッハ。違うぞ。海の水も元は水じゃぁ。わしの操れるものは生命の息吹じゃ」
「生命の息吹?それは食えるの?」
「うん?食えるかって。食えると言えば食える。だが食えないとすれば食えない。この世には余りあってはならない力さ。お前の力を1とすると3にも4にもできる。だが、この力振るえば多くの命が消える。また他に与えるとすれば多くのものがお前の前に現れるであろう」
「う〜ん。どう使えば良いのか」
「そうじゃのう。余り使い所のない力じゃ。じゃが、絶対要らぬ力では無い。だがわしがこんな所で隠遁しているのがわかる時が来る。お前の心にかけて聖印を渡したのじゃ」
「さ、旅立ちの時じゃ。出口まで送ってゆこう」
サグレイは出口の穴の向こうに水が無いのに驚いて目を回していた。
「こりゃどうした事か。クルドとやら。お前がやらかした事なのか?」
「これで良いのでは」
「こりゃやり過ぎぞ!困ったものだ。こんな奴に聖印を渡しても良かったのか」
クルドは「さようなら」と一言言って飛び立った。すると周りの海が島に押し寄せた。ガガッガッと響きとともに島が揺れ、自分の住まいにヒビが入ってゆく。
「ああ、あいつめ。なんてこと仕出かしやがる」
サグレイは力を使い岩を修復してもと通りにした。
「まっ!そのうちに力の使い方も考えるだろう」
サグレイは横になり、眠りに就こうとしていた。すると、聞き覚え終えのある声がして、自分の名を呼ぶ。
「なんだ。誰だ?何、クルド。お前さっき聖印を渡してやっただろう。なに!次はどこに行けば良いだと。知らんわ。調べろ。なに。今からそこに行くだと。うるさい。来るな!ええっい!来ぬでも良いと申しておる。なに。教えてくれないと押しかけるだと。わかった。わかった。教えてやる。中つ国に行け。名前?誰でも知ってる。でも教えてとな。うるさいなぁ。わかったわかった。奴の名はキョロシ。ありがとうだと。もう良いだろう。俺は寝るんだ。起こさないでくれ」
俺とクルドは中つ国に急いだ。
「キョロシ様ってどんなドラゴンだろう?」
「さあな。小うるさい奴かもな」
「誰に似てるかな。お母さん?妹?」
「違うさ。お前だ。だってサグレイ様が言っていただろう。うるさいって」
「う〜ん。そうかなあ」
「どうかは、行けば分かることだ。急ごう」
「そうだね」
「あと五つ。全て集めてやる」
「アキオ。君が熱くならなくても。いいんだよ」
「バカ言うな。こうなれば全て集めるんだ。君が嫌でも俺はやる」
「でも」
「でもも何も無い!やるっキャ無いんだ」
二人は中つ国が今大戦争の真っ只中にいる事を知らなかった。
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