第81話 ダイカングーン
湯治を終え、クルドと飛び、ダイカングーンと言う八聖龍の一人に会いに出向いた。この龍は昔のクルド様で俺は笑ってしまった。彼の色は黄色。黄金色ではなく黄色なのである。白龍クリシュナゴーンからの使いである旨を伝えると直ぐに門は開かれた。彼は御座にぐったりと横になり、こちらを見ていた。クルドが前に座ると眠そうにこちらを見るだけであった。クルドは緊張してキッチリと正座して待っていた。その姿を見て俺は「ふっ」と笑った。
「お前、不謹慎だぞ。我の謁見を受けてもっと畏まらねばならぬ」
「どうも、申し訳ありません」
この会話を聞いていて俺は笑ってしまった。
「アキオ。頼むからもっとシャキリしてくれ。さっきから笑ってばかりじゃないか。頼むよ」
「クルドよ。俺にとってはこの黄色いドラゴンは昔のお前だ。良く見ろ。色は黄色いがお前その物だ。これは本物か、偽物か。良く見てみろ。何でもありがたがるな。こいつはまやかしのドラゴンだぜ」
「でも、こんな所に居るのに」
「良いか、どんな所にいてようが、どんな姿をしてようが、お前さんが確かめねばならないことがたくさんあるという事だ」
「じゃあ、これは偽物」
「かもな」
「くそ〜。騙したのか。こうなれば全て燃やしてやる」
「良いんじゃない。燃やしてしまえば」
「オイッ。黙って聞いていれば大概ひどい事を口にする」
「やあ。こんにちは」
「こいつ、人の癖にえぐい奴だ。いつもここで何日も正座させてやるのに。たった数刻か。嫌になる」
「そう言わないで。頼みます。聖印を下さい」
「おい。聖印の事は口に出さない掟だぞ」
「それはドラゴンの掟でしょう」
「うん。お前は人であったな。悔しい。こんな掟破りがあろうとは」
ダイカングーンは少しブツブツ言いながらもクルドに聖印をお与えになった。
「コヤツめ。最短で手に入れおった。この竜の戦士め。小狡い奴。お前がついて居る限りクルドとやらは八つの聖印を必ず手に入れる事が出来るだろう。だが・・・・・」
あとが聞こえなかったので俺は聞いてみた。
「人が知らなくても良い事だ。クルド。こいつが聞いても聖印にかけて話すことはならん。あとは好きにしろ」
「少しお待ちを次に赴く所をお教え願いませんか」
「知らぬ。俺は大体何もせずにいたいのよ。大方のドラゴンは何処かにいる。探せ」
そう言うとゴロッと横になり眠り始めた。
クルドと俺はイロシュワークの実を鞄から出し、クルドに食えと差し出した。クルドはその実をほうばると旨そうに食い始めた。あたり一面旨そうな匂いが漂い、クルドはさらに一個手を伸ばし、食おうとしたが、実が掴めない。
「どうして?あれ?」
俺は黙ってダイカングーンの方を指差した。
「只食いはお腹に悪いですよ」
クルドは真顔でダイカングーンに言った。
「ふっ。見ておったか。悪かった。ここから西に飛び、海の中に針のように突き出てる島に行け。行けば分かる。名を聞き出すことが出来れば願いも聞き届けてくれようぞ」
旨そうに食ってる姿はまるでクルド。俺は笑いながらもう一つ如何ですかと問いかけたが、相手は応えなかった。それで紐をつけてダイカングーンの前におき、紐を少しずつ引き、取らせなかった。紐を知った瞬間、ダイカングーンは怒り始めた。
「なんて奴だ。くれるのと違うのか。そんな事をするのならサグレイのやつに言いつけてやる」
「どうぞお食べ下さい。サグレイ様には何も言わないで下さい」
「むっ。なぜ奴の名を知っておる。こやつ!小狡い奴」
「どうも」
クルドと俺は直ぐに海の針の島に向かった。
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