第74話 ソレアの覚悟

 アの国に到着したソレアはクンタを呼び出し、白花を薬師に渡し病人を助ける様にと伝えた。クリシュナゴーンに水が湧き出す石を貰い、自分で置くことを求められたことを伝えた。クンタの行動は早かった。20箇所の井戸の予定場所を決め、水道も同時に計画していた。これにはソレアも驚き感謝した。

「何をおっしゃいます。女王陛下。あなたが赴き、この石を手に入れられたのです。この事は誰にも真似は出来ません」

そう言われてもあまり嬉しくはないソレアであった。何か考える事があるのかあまり怒る事もなく、静かに過ごしているソレアを見てクンタは思案を巡らせていた。


 いく日か経った頃やっとクラップ村に送る食料と衣料などの調達が出来た。クンタはソレアに恭しく用意ができた旨伝えに来た。ただ、これだけの荷物を誰が届けるのか心配していた。荷馬車で20車両にもなる。当然被災地を通って行く。大人しい民草だけがいるわけでもなく、盗賊も出るだろうし、道も知る者がおらず指揮官選定が難航していると報告していた。クンタはソレアに報告の為、王の謁見の間にやって来た。部屋に入ると、武具を着けて立つ凛々しい兵士の姿を見た。

「おお。来たか。これが勇者アデヤだ。多くの魔物が巣食う魔の山に赴き、生きて帰って来た勇者なのだ。アデヤに責任者を任せようと思う。どうだ。いいかな」

「これは誠、適任と考えます」

「陛下。こんな任務で私の恩義が晴れるとは思ってもおりません」

「それはそうだ。多分この先、大戦争が起こるだろう。其方には命を捨ててもらわねばならぬ時が来る。この事必ず心に留めておいてくれ」

「はっ。心得ました」

アデヤは直ぐに旅立って行った。


 クンタは執政官として日々仕事に追われていた。だが、ソレアは手を緩める事なく国を強固なものにしていった。クンタは驚きを隠せなかった。

「何故そこまで急がれるのですか」

ソレアはクリシュナゴーンから強大な敵がきっと現れる事を伝えられ、アキオ様に手助けしてもらわなくとも撃退できる様に考えている事をクンタに話した。クンタは王宮を出ると兵器庫に出向き、多くの兵器を改修し、使える様に整備する事を指示した。


ミランダはアキオとガジュマル・ガジタ渓谷に行く事になっていた。一緒に行きたいソレアではあったが、我慢して国の安泰をクンタと練っていた。俺はこの時戦争が引き起こされるとは思ってもいなかった。が、ラディウスに焼かれたグエルがこの時復讐の為、人間世界に一波乱起こそうとしていたことなど俺たちには思いもよらなかった。大嵐の戦争と名ずけられた戦いの幕は静かに開けられていた。


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