落ちこぼれ冒険者とドラゴン

@abeyu6629

第1話 思い出のニューヨーク

 俺は海原章雄。母親は香里。親父はデイビット・マクレイン。共に死んじまった。俺が9歳、妹が6歳の時だった。オババの家に来ていた時の事で何も聞かされておらずズルズルと時が過ぎて行った。

 思い出すのは母、香里の言っていた言葉だ。

「アキオ、いい。よくお聞きなさい。この世界は決して一つでは無いのです。違う世界、そう異次元の世界があるのよ。あの空の向こうに」

そう言うと母は空をずーと眺めていた。俺は母を見上げていたが、何時迄も見ている母の手を引っ張り、俺に注意を振り向けさせた。

「早く帰ろうよ」

「そうだったわね。寒いものね」

そう言うと母は俺を抱き上げると車に乗せ家に走らせた。


そんなある日の事だった。

ニューヨークのブルックリンの橋を走ってる時のことだった。川の上流を見た時太陽が二つ見えた。母に告げた時母は笑っていた。

「アキオ。太陽はお母さんの左の空高くにあったわ」

「そうかな。僕の方の窓から川の向こうに二つ見えたよ。オレンジみたいだったよ。ビルの少し上に見えたんだよ」

「そうなの」

母は、そう発言すると黙り込み、何かを計算し始めた。電話をかけ。

「あなた。アキオがブルックリン橋から北の方に太陽が二つあったって言ってるの。それも低い位置に見えたらしいの。ええ、そうらしいの。ビルの高さぐらいだって。今日の1時ぐらいの時。何かしてた」

少し沈黙の後、母は興奮気味に電話を切った。何か考えているように見えていたが、もう次の電話をかけていた。


「アキオ。明日、オババのウチに行くのよ。妹のセレナも一緒よ。さあ、準備、準備。アキオは何がいい」

俺が何を言おうと御構い無しの自分中心女で、思ったことをすぐ行動に移す。

次の日俺は成田空港に妹と二人荷物と名札をつけられて立たされていた。俺たちを見つけてくれたのは今俺が厄介になっている母の弟で会社役員の海原浩二だった。

「姉さん。二人をかあさんに預けるのかい。それでいいのかい」

「浩二。宜しく。頼むわ」

母は座り込み、俺の目線に合わせて言った。

「アキオ。あなたがお兄さん。セレナを頼むわよ」

そう言い残して多くの人の流れの中に消えて行った。あれ以来母の姿を見ていない。叔父の問いかけに答えもせず母は行ってしまった。

「姉さん。なんて事だ。子供を置いて。あ〜ぁ。かあさんになんて言うんだ」

俺は叔父浩二の手を引っ張り、早く行こうと催促した。


もう昔の思い出だ。

オババの家で両親の死を告げられ、あれから9年が経っていた。母と別れた日から数えて12年。

ここ東京に高校生として生活をしている。

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