8-13(日)〜8-14(月)のブログ

     2017-08-13 23:45

         ☆無題


   別の男に拾われた。

   ちょっと太ってて、

   ぶ厚いメガネをかけてチェックのネルシャツを着て、

   たくさん荷物を抱えた暑苦しい男。

   なんだかオタクっぽい。

   さえないヤツ。


   逃げ出してきたのはいいけど、お金もあまりないし、

   途方に暮れて、どこかのマンションの隅にうずくまってたら、

   タクシーから降りてきたオタクが、

   あたしに気づいて、声かけてきた。

   どうやらこのマンションの住人らしい。


   「ここでなにしてるの? 危ないよ、こんなとこにいちゃ。

   行くとこないの?

   じゃあ、とりあえず、うちに来ればいいよ。なんにもしないから」


   なんにもしないから、って、、

   みえみえの嘘。

   エッチが目的って、わかりきってる。

   男ってみんな、薄汚い下心を、優しい笑顔で覆い隠そうとする。

   偽善者。

   

   、、別にどうでもいいか。

   仲間を集めて、

   輪姦まわそうとしてたさっきの男より、マシかも。

   どうせあたしなんて、だれからも必要とされてないし、

   本気で好かれるわけないんだから、

   汚されるだけ汚されて、落ちるとこまで堕ちればいい。


   もう、どうでもいい。

   寝る場所もないし、このキモ男に任せよう。




     2017-08-14 00:33

         ☆無題


   オタク男は寝てしまった。

   なんにもしないで。

   だいぶ酔ってたみたいだし、なんか汗臭いし。


   ま、いっか。

   どうせ朝になったら、のしかかってくるだろ。

   結構体重ありそうだから、圧死するかもしれない。

   まあ、それもいいかもw


   エッチなんて大っキライ。

   他人のからだがあたしのなかに入ってくるなんて、、

   考えただけでもゾッとする。

   吐き気がするほど気持ち悪いけど、、、しかたない。

   それがあたしに与えられた、罰なんだから。




     2017-08-14 09:17

         ☆無題


   オタクはバタバタと仕事に出かけた。

   昨日の事はまったく憶えてないみたい。

   あたしの言う事全部信じちゃって、ごはん代まで置いてった。

   本気で責任とるつもり?

   結構お人好しっていうか、、、バカ?

   こういう人って、世の中じゃきっと、損するんだよね。


   正直に生きたって、ロクな事はない。

   うまく人を操って、

   上手に世の中を渡っていける小狡いヤツが、

   最後は勝ち残る。

   でもあたし、そんな風には生きられない。

   自分も不器用な方でイヤになるけど、こいつも鈍臭い。

   今どきこんな男がいるなんて、なんか意外。

   きっとこの人、カノジョいたことないだろな。


   でも油断できない。

   もしかして、

   昨日の男みたいに友達連れて帰ってくるかもしれない。

   夜になったら、みんなであたしをなぶるつもりかもしれない。

   嬲るって漢字、まさに字のまんま。

   男がよってたかって、

   女を痛めつけるんだ。

   やっぱり、ここからも逃げた方がいいかな?


   でももう疲れた。

   昨日までのエッチでからだが軋んでる。

   帰ってくるまではゆっくりさせてもらおう。

   そのときはそのとき。

   別に犯されたっていい。

   覚悟はできてる。

   あんなキモ男に抱かれるなんて惨めだけど、

   今のあたしにはそれがお似合い。



     2017-08-14 19:20

         ☆無題


   心配そうな視線を、あたしに向けてくるオタク男。

   あたしのこと、気にかけてくれてるみたい。


   ありえない。


   今朝だって、オタクが出勤するのを邪魔する様に、

   わざといろんなワガママを言って困らせたのに、

   オタクはそんなあたしのワガママを、いちいち真に受けて、

   全部叶えてくれた。


   信じられない。


   人間って、だれでも自分が一番可愛くて大事で、

   他人なんてどうでもいいはずなのに、

   どうしてあたしに、そんなによくしてくれるんだろ?


   オタクにとっては、あたしなんてただの家出娘で、

   どっかでのたれ死んでも、関係ない話。


   だったら、さっさと自分のしたい事して、

   溜まった欲望をあたしのなかに吐き出せばいいのに、

   オタクはそんな事しようともしない。


   ううん。

   正確には、エッチしたいのをガマンしてるみたい。


   オタクのあたしを見る目つきが、悩ましい。

   胸とかお尻を覗き見る視線を、痛いほど感じる。

   だけど、物欲しそうに見てるだけ。

   それ以上なにかをしてくることはない。


   ただのチキン?


   かと思ったけど、

   昨夜あたしとエッチしたって、オタクは信じてるから、

   いつでも手出してきたって、おかしくはないはず。

   なのに、あたしが挑発しても、触ろうともしない。


   それって、あたしのこと、思ってくれてるってこと?

   自分の欲望より、あたしの気持ちを優先してくれてるってこと?


   そんなお人好しがこの世にいるなんて、

   信じられない。


   でも、騙されちゃいけない。

   信じると、必ず裏切られる。

   美優もそうだった。

   美優、、

   ほんとに、親友だって思ってたんだよ。

   ただひとり心開けて

   悩み相談できて

   一生親友て思ってた。。


   あたしがバカだった。


   心を開くというのは、弱い自分をさらけ出すってこと。

   その弱い部分を、他人は攻撃してくる。

   自分以外は、みんな敵。


   だれも信じず、だれも寄せつけなければ、

   傷つかずにすむ。



時間が経つのも忘れて、ぼくは次々に記事をクリックしていった。


『お人好し』で『鈍臭い』ぼくに、最初は呆れてバカにしてた栞里ちゃん。

そんなぼくをいじるのがおもしろくなってきて、挑発してみたり、ワガママ言ってみたり。

そうしてるうちに、いつの間にかぼくの部屋が居心地よくなってきて、次第にぼくの事も、なんだか安心できる存在になっていく。

だけど、そうやって居心地がよくなるほど、

『信じたい』けど、

『信じれば裏切られる』

『頼りたい』けど、

『頼れば突き放される』

というふたつの気持ちがぶつかりあい、希望と絶望のはざまで揺れ動く栞里ちゃん。


自分のなかに生まれた『あったかい気持ち』に困惑し、ぼくに迷惑をかける事を怖れた栞里ちゃんは、ついに部屋を出ていく決心をした。

だけど、行くあてもなく、ビルの最上階の非常階段で、ぼんやり過ごしてた。

そんな彼女をぼくは、偶然見つけたんだった。


つづく

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