死の檻はだれも寄せつけない

875:C.N.;名無したん 2017/8/20/17:35 ID:gbodnPm5g0

  こいつ、学校裏サイトでは有名人じゃん。

  ttp://gakkouurasaito.000,000.jp



学校裏サイトって、、、

もしかして、栞里ちゃんの学校なのか?

麗奈ちゃんが学校名を聞き出そうとしたのは、こういうサイトを見つけるためだったのか?


恐る恐るそのアドレスにアクセスしながら、ぼくは隣の栞里ちゃんの様子を伺う。

こんな所を見てるなんて彼女に知れるのは、まずい気がしたからだ。

だけど栞里ちゃんは、イベントの疲れが出たのか、スマホを握って膝に置いたまま、コクリコクリと居眠りをはじめていた。

それを確かめて、ぼくはその学校裏サイトを読みはじめた。



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ひどい。




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見るんじゃなかった、、、orz



『死檻(栞里ちゃんの事?)のヤツ、また今日も先生に媚び売ってたし。成績いいのはヒイキ』

『死檻ブログハケーンw でもマイフレンドひとりもいない。ここでもボッチwwwww』

『あいつ、¥助(援交の事?)やってるって。男と歩いてるの見たヤツいる』

『え? いくら? オレ買いたいかも。死檻タン即ハボかわゆす。ハァハァ』

『やめとけ。ちょっとばかり顔可愛くても、みんなにやられてるよな汚ま○こだぞ。ビョーキ移されるのがオチ』

『こえーな。いっしょにプール入れない』

『死檻ビッチ認定wwwwww』

『ビッチ汚まん○死檻クラスのバイキンタヒね』



いくら裏サイトだからって、、、

書き込んだ人間が特定されないからって、、、 


ひとりの女の子をみんなで寄ってたかって、そこまで攻撃する事ないだろ。

これじゃ栞里ちゃんが可哀想過ぎる。

もちろん、叩かれてるのは栞里ちゃんひとりじゃなく、ほかにも何人かいた。

わずかに反論や擁護のレスもあったが、その後は倍返しの様に、叩き返されてる。

まるで無法地帯。

リアルではふつうに接してる様なクラスメイトも、裏サイトに書き込んでんだろうか?

栞里ちゃんが人間不信になるのも、あたりまえだ!

なんか、、、

こっちまで涙が出てきた…


それにしても、、、

このカキコのどこまでが、ホントの事なんだろ?

ビッチなんて言われてるけど、こんなにあどけなくて清楚な美少女が、処女じゃないなんて、信じられない。

栞里ちゃんのブログにリンク貼られてたけど、そこで栞里ちゃんはなんて言ってるんだろ?

気になって、ぼくはリンクを辿ってみた。


『Death Jail』


そのブログのタイトルだった。

直訳すると『死の監獄』。

黒地に髑髏どくろやら十字架の模様の入った、オドロオドロしい背景。

『死檻』って裏サイトの当て字からとってるのか?

自虐的なネーミングだ。


プロフィールを見ると、ニックネーム欄には『Death Jail』とあり、生年月日は7月24日となってるが、それ以外の欄は全部空白だった。

続いて更新履歴を見てみる。

数時間おきに記事が並んでて、結構マメに一日何回もブロクを書き込んでるみたいだ。

最新記事はこの電車に乗ってる時。つい10分程前だった。


そうか!


出会った時から、栞里ちゃんはしょっちゅうスマホになにか打ち込んでたけど、それはここのブログ書いてたんだ!

謎がひとつ解けたぞ!

ぼくはさっそく、その最新記事をクリックしてみた。


『この記事はマイフレンドさん限定です』


画面にはそんな通知が出てくる。

、、、見れないのか。

次の記事をクリックしてみる。


『この記事はマイフレンドさん限定です』


これもかダメか、、、


ぼくは次々に記事をクリックした。


『この記事はマイフレンドさん限定です』


どの記事をクリックしても、どれも『マイフレンド限定』で、読む事はできない。

かなり過去にまで遡ってみたけど、ひとつとしてぼくが読める記事はなかった。

とりあえず申請をして、『マイフレンド』にならなきゃ、栞里ちゃんのブログは読めないんだな。

けっこうガードが固いかも。


そう考えながら、ぼくはもう一度トップ画面に戻って、マイフレンド欄を見てみた。

しかし、そこは空欄になってて、ひとりのマイフレンドもいなかった。


???


記事はすべて『マイフレンド限定』で、マイフレンドはひとりもいない。

これじゃあ、だれもブログを読めないし、そんなブログを書く意味、あるんだろうか?

そいうえば、裏サイトでは『申請してもみんな拒否られる』ってカキコがあったっけ。

だれも信じず、だれにも心を許さず、自分の世界にだれも寄せつけず、栞里ちゃんはひとりで戦ってるのか?


なんだか哀しすぎる。

淋しすぎる、、、


「う… ん」


電車が揺れてスマホが座席のシートに滑り落ち、栞里ちゃんが目を醒した。

ハッとしてブログを閉じる。栞里ちゃんは寝ぼけ声で訊いた。


「ここ、どこらへん?」

「も、もうすぐうちの近くの駅だよ」

「そっか。やっとお兄ちゃんだね」


少し弾んだ声でそう言って、栞里ちゃんはぼくを見て軽く微笑んだ。

それは嬉しい事なんだけど、ぼくの心の中には、重たい『なにか』が芽生えはじめてた。

だれにも心を開いていない彼女が、いったいぼくになんの話があるんだろうか?

重い話なんだろうか?

彼女いない歴=年齢のキモブサデブオタクなぼくが、そんなものを抱えていけるんだろうか?


つづく

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