匿名だからで許されるわけない

613:C.N.;名無したん 2017/8/19/21:45 ID:IUjiidw9e2

  だいたい夜死期(ヨシキのこと?)とつるんでる時点で、あいつも鬼畜。

  イラストも鉄板ばかりで個性ないし、

  萌えの向こうにドロドロした性欲が透けて見えてキモ杉



614:C.N.;名無したん 2017/8/19/21:48 ID:6IUiposln0

  まあ、デブサのヲタなんで、リアル女とは一生関われねーな。

  そりゃ歪んだリビドーがイラストに吹き出すわな(w

  あわれだ

  だが非人道行為は許せん。速攻タイーホ汁!




こっ、、、

これって、ぼくの事か?


「301から見てみろよ。麗奈のカキコと思うけど、祭はそこからはじまってるから。

まあ、、、 あまり気にすんなよ」


電話の向こうから、ヨシキが慰める様に言うが、そんな言葉も耳に入らないくらい、頭に血が昇ってたぼくは、一気に画面をスクロール。301の書き込みを見て、心臓がバクバク鳴って、息が止まった。




301:C.N.;名無したん 2017/8/19/17:20 ID:kjyuKJXl50

  レイープされそ。だれか助けて!!!!!



なんだこれは!

レイプだって?!


書き込み時間は17時20分。

ちょうどぼくが麗奈ちゃんを待ちながら、シャワーを浴びてた頃だ。


『だれか助けて』

という書き込みに対して、そのスレの住人達が次々に反応し、『kjyuKJXl50』というIDの主は、克明に状況を記していた。


『土下座してお願いされたから仕方なく会ったら、無理矢理ホテルに連れ込まれた』

『自称『逝けメンカメコ』とグルになってて、リンカーンされそ』

『珍珍触らされた。キモイ。死ぬ~~~((( ;゜ Д ゜)))』

『みんなありがと。やつがシャワー浴びてるスキになんとか脱出できたお』

『その男は厨房もレイープしてる常習犯』

『ヤツから電話かかってきたお。怖い~ (((;゚Д゚)))ガクブルガクブル』

『特徴? エロ絵描いてるデブサのヲタ』

『ちょっとフォトショ使えるかと思って、師匠気取り』

『リア恋のみくが嫁とか、痛杉』

『じゃちょっとだけ晒す。デブサヲタのツレの逝けメンカメコは、いろんな女喰い散らかしてる極悪。罰のリーダーみたいな名前』




、、、ここまで書けば、もうぼくとヨシキって、特定できるじゃないか!

『kjyuKJXl50』の書き込みが投下されると、スレの住人もそれに群がる様に、『デブサヲタ』と『夜死期』を攻撃してくる。

攻撃はイラストの悪口だけじゃなかった。


『売れっ子絵師気取りのデブサヲタ』

『ゴミみたいなハンコ絵を量産してるだけ』

『見てるだけで吐き気がする』

『三流大学だし末路はニートだろ』

『性格が醜悪だと絵も歪んでるね』


容姿や人格への堪え難いほどに執拗な悪口雑言に、ぼくは発狂しそうになった。


「読んだか?」


頃合いを見計らって、ヨシキから電話がかかってきた。


「あ、ああ、、、」


かろうじて返事をする。


「…すまん」

「え?」

「麗奈に手を出したのは、失敗だった」

「なにが?」

「あいつ、かなり黒かった」

「黒い?」

「束縛とか嫉妬がすごくてさ。『他のだれも撮るな。会うな』って、脅してくるんだよ」

「そっ、そんな風には見えないけど、、、」

「だよな。麗奈って一見、巨乳の癒し系だもんな。おれも見る目がなかったよ。

だけどここまでやるとは、、、 想定の範囲外だったな」

「、、、もしかして、今日。おまえと美月梗夜さんが会う事、麗奈ちゃんは知ってた?」

「ああ。根掘り葉掘り訊かれたよ」

「じゃあ、アキバのカフェで偶然会ったのも、、、」

「麗奈の計算のうちだろ。おまえ、利用されたんだな」

「利用、、、」

「おれに見せつけるために、麗奈がおまえを誘ったんじゃないか?

ぶっちゃけおれと麗奈は今、ちょっとトラブってるんだよ。

どうやって穏便に切れるか悩んでるんだけど、おまえにもとんだ巻き添え、喰わせてしまったな。すまん」

「……」


そうだよな、、、、、、

だいたい、ぼくが麗奈ちゃんに好かれるはずがない。

デブでブサイクなヲタなのに、あんな可愛い(黒いけど)女の子に、好かれるはずがない。

イラストが得意と言ったって、人から見れば、性欲が透けて見える、歪んだキモいハンコ絵でしかないし、そんなぼくが、だれかと恋とかできるわけがない。

なのに、ちょっと甘い言葉をかけられただけで、舞い上がってたなんて、、、


なんか、、、

涙が出てきた。


どうしてこんな惨めな思いをしなきゃならないんだ。

容姿なんて、自分じゃどうにもならないのに。

全身整形しろってか?

デブのブサイクは、人並みに扱ってもらう事さえできないのか?

ぼくの内面を、だれも見てくれないのか?

そりゃ、ヲタ趣味全開の自分なんて、たいした人間じゃないけど、それなりに人の気持ちは考えて生きてるつもりだ。

それを『鬼畜』だなんて、、、

凹む、、、、、、、 _| ̄| . . . .. ...○


「気にすんな、、、って言っても無理だろうけど、オレはおまえの事知ってっから。

おまえはレイプなんてできるやつじゃないし、イラストに対しても、本気でやってるし、根っからまじめで、いいヤツだよ」


電話の向こうで、ヨシキが淡々と語る。

ひとりでもそう言ってくれる人間がいる事が、今はありがたい。


「おまえこそ、、、 あれだけ2ちゃんで叩かれてて、よく平気だな」


熱いものがこみ上げてきたのを必死で抑えながら、ぼくはヨシキに言った。

確かにそのスレでの、『ぼく(蓑屡ミノル)』への書き込みはひどいものだったけど、『夜死期(ヨシキ)』へのバッシングはさらに、その数十倍も凄まじかったのだ。

擁護の書き込みもいくらかあったけど、それ以上に攻撃は悪意に満ち満ちてて、下劣で醜悪で執拗。

ヨシキのバイト先から、過去につきあってた女の子(妄想含む)、出身校に住所、持ってるカメラの種類や乗ってるクルマ、サイトアドレスまで、公私ともに晒されまくってた。


「まあ、ね。勲章と思う事にしてるよ」

「勲章?」

「叩かれるって事は、それだけ羨ましがられてるって事だろ」

「…」

「光を浴びりゃ、後ろには影ができるもんさ。陳腐な言い回しだけどな」

「ヨシキ、おまえ、、、 強いな」

「臭いセリフやめろよ」

「いや、ほんと。ぼくなんか、、、」

「わかるよ。オレも最初は凹んだよ。安全な場所から攻撃する時、人はどこまでも残虐になれるもんだな」

「安全な場所、、、」

「絶対的に有利な立場。絶対的な匿名。絶対的な兵器。

自分が傷つかない場所にいると、他人の痛みなんかわからない。わかろうともしない。戦争から学校や会社の人間関係、掲示板まで、みんなそうさ」

「なのにどうして、そんなスレ見てるんだ?」

「防御のためさ」

「防御?」

「敵を知っておけば、おのずと対処法も見えてくるだろ」

「弁解の書き込み、するのか? 麗奈ちゃんとやり合うとか…」

「麗奈もあれでいて、巧妙でシッポ出さないからな。やり合っても無駄だろ」

「そう、、、 だな。当事者じゃないとわかんない様な書き方してたし」

「ってか、反論書き込んでも、本人降臨とかで、余計叩かれるし」

「そうだろな」

「まあ… スレの中で闘う様な不毛な事はしねーよ。匿名掲示板なんて便所と同じさ。人間どこかで溜まった汚物を排泄しないと、生きられないんだから」

「だけど…」

「便所の中でケンカしてたって、醜いだけだろ」

「ああ… でもぼくは、もうだれも信じられない、、、」

「でもオレは、おまえの事信じてっから。明日ちゃんとイベントに来るって事も、な」

「、、、ああ」

「じゃ、また明日」


そう言ってヨシキは電話を切った。

ぼくも電話を切りながら、iPhoneに表示されていた掲示板も閉じた。

スレの最後の書き込みが視界に入ってきた。



  デブサヲタ=レイープ魔FA!


つづく

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