巨乳ロリータちゃんは責めたりしない
その日は合流後、速攻でカラオケ屋に入り、食事をしながらアニソンやボカロを中心にカラオケ三昧。
その合間に、ヨシキと麗奈ちゃんは、栞里ちゃんとぼくをおかずにして、盛り上がってた。
どうやらふたりの間では、栞里ちゃんは『家出少女』で、ぼくは単なる『宿主』、『泊め男』という設定ができあがったみたいだ。
「だけどミノル、気をつけた方がいいぞ。家出少女を泊めたのはいいけど、金目のものを盗られて逃げられたって話も、あるみたいだからな」
「あと、
「そうか~。こっちの住所はもう割れちゃってるから、逃げるに逃げられないな」
「ヤバいよね~」
「でなくても、家族から捜索願とか出されてたら、未成年者略取で即タイーホだしな」
「逮捕~?! なんかすご~い! カッコいい~!」
「よくねえよ。ミノルの人生終了だよ」
「え〜?! そのくらいで終了なんかしないわよ」
「だいたい未成年者とのエッチは、当事者同士の合意があっても、親がダメ出しすればアウトなんだよ。女の子の方に悪気がなくても、親から訴えられるって場合もあるし」
「じゃあ、悪質な親だったら、それをネタに脅されるかもしれないって事? 家出してまで逃げたくなる様な親でしょ? まともな人間じゃないわよ。絶対モンペよ」
「ミノルって気が弱いから、いいカモにされるな」
「今だって『責任とってよ』なんて、中学生から脅されてるしね」
交互にそんな事を言い合って、こちらの不安を煽る。
二人とも、アドバイスしてるんだか脅してるんだかわからない。
なんだか、、、 モーレツに心配になってきた。
ご飯代とか置いてきたけど、栞里ちゃんはぼくの部屋で、おとなしくしてるだろうか?
それとも今頃は彼女の両親が、ぼくの帰りを待ち構えてるとか。
怖いお兄さんがいたりとか、、、
「とにかくその子には、早いとこ出てってもらった方がいいんじゃないか? あまり長く関わってると、ロクな事にならないぞ」
締めくくる様に、ヨシキが言った。
「あ。ああ、、、 でも…」
「でも?」
「ヨシキの言う事はもっともだけど、ぼくには栞里ちゃんがそんなに悪い子には思えないんだよ。
そりゃ、ワガママで気まぐれな所はあるけど、昨日だって、ぼくのいない間に部屋を掻き回したりしてなかったし、コミケの売り上げも無事だったし、ぼくが渡したお金にさえ、手つけてないくらいだよ」
「それで?」
「栞里ちゃんがもし、家でDVとか受けてて、それが辛くて家出したんだったら、帰せるわけないじゃないか」
「…じゃあミノル」
ヨシキが真剣な眼差しで、まっすぐぼくを見つめて言った。
「おまえは栞里ちゃんの人生に、ほんとに責任とれるのか?」
「え?」
「その子がDVとか、家庭内不和で家出してるとして、おまえに、それをちゃんと解決してやる覚悟と力は、あるのか?」
「う…」
「原因を解決してやれないのなら、ずっとその子を家に置いて、面倒見てやれるのか?」
「…」
「そんな覚悟もないまま、『帰せるわけない』なんて言うな。
それって単に、『可愛いから』ってペットを飼って、気に入らなくなったら捨てる様な、バカな飼い主と同じレベルだろ」
「…」
「中途半端にやさしくされて、その後に見捨てられる方が、余計に傷つくぞ」
「…」
「最後まで責任持てる自信がないなら、はじめっから関わらない方が、お互いのためだろ。こども110番とか児童相談所とかの機関もあるんだし、警察だって家出少女は引き受けてくれるさ。
本当にその子が困ってるのなら、そう言う所で保護してもらうのが、一番現実的な対応なんじゃないのか?」
「…」
…なにも言い返せない。
上から目線で説教するヨシキに、腹は立つものの、それ以上に、自分の甘さが
『ある日突然、主人公の部屋に、可愛い女の子が舞い込んできた』
なんて、まるでアニメやライトノベルみたいなシチュエーションに浮かれて、そのバックにある現実が見えてなかった自分が、情けない。
「でも、ミノルくんって、いい人よね。そうやって家出少女の面倒みてあげたいなんて」
肩を落としてしょげてたぼくが哀れに見えたのか、麗奈ちゃんが慰める様に言った。
「家出少女を泊めても、男の人はヤリたいだけでしょ? ふつー。
なのにミノルくんは、こうやってその子の事心配してあげてるし、それなりに気を遣ってるし」
「そ、そうかな?」
「その子だって、きっと不安でいっぱいよ」
「不安?」
「だってそうでしょ。知らない男の部屋に泊めてもらうんだから。
無理矢理ヤラれるのはイヤだろうし、暴力ふるわれたり、殺されたりって恐怖もあるわけでしょ。
でもそうやって、ミノルくんの前でスヤスヤ眠ってるなんて、、、 安心してるって証拠じゃない?」
「…そう?」
「そうよ。あたし見直しちゃったかも、ミノルくんの事」
「え…」
「いっそカノジョにしちゃいなさいよ、その子。そうすれば問題ないじゃない」
「ま、まさか… 14歳なのに」
「え~っ? たった8つ差じゃん。
6年経てば28歳と20歳。ふつーじゃん」
「ま、まあ、そうかもしれないけど…」
麗奈ちゃん、、、
ありがとう。
こんな、ロリータファッションの可愛い、しかも巨乳の女の子から『いい人』とか言われると、勇気が湧いてくる。
「ま。あとはおまえが決めろよ。タイーホされてみるのも、人生経験になっていいんじゃね? まあ生暖かく見守ってるから」
ふざけた調子で、ヨシキがそう言って締めくくった。
カラオケで歌って食事して、ついでにチューハイとか呑んだ後、ヨシキ達とは駅前で別れて、自分のマンションに帰り着いた時には、もう10時を回ってた。
みんなでいっしょに騒いでる時はそうでもなかったけど、こうしてひとりになると、いきなり不安が増してくる。
ふたりから散々脅されたせいで、昨日以上に緊張してて、心臓がバクバク鳴ってる感じ。
マンションのホールに入ってセキュリティボードの前に立ち、ドアのロックを解除しながら、ぼくは大きく深呼吸をしてみた。
だけど、動悸は止まらなかった。
栞里ちゃんはちゃんと部屋にいるだろか?
ぼくのパソコンとかは無事だろか?
怖いお兄さんとか、親とかが上がり込んでて、ぼくの帰りを待ち構えてるんじゃないだろうか?
警察の人が来てて、いきなり手錠をかけられるとか、、、
「くそっ」
気持ちを落ち着かせるために、ぼくはiPhoneを取り出し、高瀬みくタンに電話した。
つづく
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