第10話「死を選ぶ権利ー人生に飽きたらー」
製薬会社から発売された「カロドポタリクル」は、
まず若者の間で流行した。
導入するにあたって行われた市場調査の段階では、高齢者(特に後期高齢者)の間で流行すると考えられていた。
しかし、予想を裏切るマーケティングの結果であった。
「人生に飽きてしまうのは、若者も同じだった」
「カロドポタリクル」は、安楽死の薬として開発された。
現在世界的に流行している「新型マナヴォリックウィルス」による後遺症があり、
その後遺症の「間質性肺炎」や「認知症の発症(レビー小体型の症状が顕著)」
また、重度な症状になると、様々な合併症を併発する。
感染者は、世界人口の3割程に達した。
死者は、その内の3割。
再発の患者も後を絶たない状況。
そうして、収束が見えない現状に対し「人権」が訴えられるようになった。
まず感染者に対する「人権侵害」について。
そして「生きる権利」が訴えられた。
そこから、人々の間で「死を選ぶ権利」が訴えられるようになった。
我が国では対策として、イギリスとアメリカで共同開発された新薬に頼ることになった。
新薬の登場から、異例の早さで「ジェネリック医薬品」の製造が許可された。
(その異例すぎる早さから、陰謀説が囁かれている)
ジェネリック医薬品として、「カロドポタリクル」から名称が変わり製造された物が社会問題として取り沙汰されている。
その医薬品は、主にネット上の動画配信サービスの広告で宣伝された売り文句が問題であった。
「ロイドポタールNは、人間不信の解決策。」
「ロイドポタールBは、人間関係の不毛なやり取りに疲れたあなたに。」
「ロイドポタールZは、あなた自身で人生の最期を決める一つの方法です。」
お金儲けに飽きない連中は、そこから新たなサービスを生んでいった。
「SNSで、あなたの最期を誰かに届けるサービス」
「あなたの記録をネットに遺す“ラストノート”」
「誰かがあなたの生きた足跡を辿る、後世にあなたを」
「あなたの顔がアバターとして蘇り、未来の恋人へ届けます」
人々は、死んだ後
それでも尚、自身の形を遺そうとした
人生には、もう、飽きてしまっていたはずなのに
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