第2話「降下する想い」
「ねえ、本当に
本当に、この下にあるの?」
「本当、本当だよ。
嘘じゃないよ。」
「もうすこし? あと、どのくらい?」
「んー、あ、ほら。見えてきた」
無数の明かりが乱反射し、眼に飛び込んできた
塊のように見えるところに目が向いたが、
その隅や、縁
暗く薄暗い部分について、何があるのか?と考えてしまう自分に気づいた
それは危ないことなのかもしれないと
心では分かりながらも、気が向いている自分がいた
「分かっていると思うけど、これが最後のチャンスかもしれないからね」
「分かってる。ありがとう。」
「心残りはあるかもしれないけど、もう決めてしまったことだから
止めはしないけど、私だって本当は、寂しいんだよ?」
「ずいぶんと、お世話になったね。
でもこれは、避けられない自分のエラーなんだよ。
いつか回収しなければならない伏線なんだ。
分かってとは言わないけど、寂しいって言ってくれて
本当にありがとう。」
無数の明かりが次第に大きくなってゆく
その大きさに、暗く薄暗い部分など掻き消され
私は、その明かりの処理に気を取られた
もう一度、振り返って、気持ちに応えてみることなど
そして、そのまま降下する時
自分が何者かになる
自分が何者かになって、そして果たすべき約束を
頭の中で、ブツブツとつぶやいて
一瞬も無駄にしないよう言い聞かせた
すこし壊れた自分の身体が気になったが
どうせ地上に行けば取り繕いされたものに変わるのだと
地上の上と、下とでは、まるっきり異なる映り方をするのだと
本当の自分は、その場にいる、その想いと
共にいるのだと分かっていたから
降りた場所は、薄暗い場所だった
目的の場所とは異なっているように感じた
ただ、すぐに近づいてきた中年の男性に抱えられ
黒塗りの車へと運ばれる時、我が身の小ささに
まず、その自分の感覚に馴れることを考えなければと
集中していた
病院へと着いた黒塗りの車は、そのまま私を置いて走り去った
ここからが、私の人生なのだと
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